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40 パテック最後の決断、そして

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「あー…スッキリした!」

私は涙を拭った。

「フィリップ、ゲームはこれで終わりよ!」

「ゲームは…終わり…ヤダ!もっと遊びたいよ」

フィリップは駄々っ子のようにすねて見せる。でも私には分かっていた…

「終わりだって言ってるでしょ!いつまで記憶が戻ってない芝居を続ける気、フィリップ?」

「なんで分かったの?」

「そんなの簡単よ。あんたがアドリブで芝居できるほど頭良くないって事、私が知らない訳ないでしょ!」

「そっかあ、僕、バカだもんね…」

「そうよ、バカのくせに丸く収めようなんて生意気なのよ。本当は、まだレイモンドが好きなんでしょ?」

「僕はレイモンドが好きだよ…でもレイモンドが僕を嫌いなら、僕も嫌いにならなきゃと思ったんだ」

「レイモンドの態度には理由があるのよ、あんたを嫌いって訳じゃないわ」

時間を逆行したまま放置されたレイモンドの話は、めんどくさいしフィリップに理解できるとも思えなかったので、あえてパスした。

「本当?…でも僕はどうすれば…」

「そうね、とりあえず私に謝って」

「何をさ?」

「過去の全て一切合切よ」

「良く分かんないけど分かった…パティ、ごめんなさい、許してくれる?」

「なーんか軽いけど、まあいいわ、許す!」

そう、小さい頃から、フィリップのする大概の事は謝ったら許してきたのだ、そして…

「後は私がなんとかするから!」

「ヘッヘッヘ、パティ、なぜ余計な事をする?フィリップが死んでも、それで魔王を倒す勇者が生まれなくてもお前には関係ないんだろ?」

「分かってないわねゾディアック?私は関係ないなんて言ってない、他人から責任を押し付けられて、それが当然の義務みたいに言われるのは、まっぴらごめんだって言ってるのよ。
私にも人並に慈愛の心ってやつはあるし、助けられるならものならフィリップを助けたいと思ってる、悪魔のあんたには分かんないでしょうけど。
そりゃ私と言う婚約者がいながらレイモンドに浮気心を抱いたのも、私に黙ってエベルと行方をくらましたのも正直ムカついてはいるけど、呪いを自分に戻そうと行動を起こした点は評価すべきだし、実際、私の呪いは解けた訳だから、謝罪は素直に受け入れるべきよね」

「パティ、本当に許してくれてる?」

「いいからフィリップは黙ってて!」

「ヘッヘッヘ、パティ、俺の敵になるつもりか?」

「そうなるわね、ゾディアック」

「俺にはもうお前を二十歳まで生かしておく必要がない。お前を葬るなんて簡単だぜ、ヘッヘッヘ」

「念のため持ってきといて良かったわ」

私は魔法石板を取り出した。

「モーザーが魔改造を施したスペシャル版よ、これであんたの魔力を相殺できる。……レイモンド!」

「俺を呼んだか?」

「あんたの出番よ。私を悪魔から守ってくれるんでしょ?」

「ああ、当然だ」

レイモンドは剣を抜いた。聖玉が埋め込まれた対悪魔仕様だ。

「ヘッ、これで互角になったとでも?一級悪魔の力をなめるなよ」

「そっちこそ、なめてかかると痛い目を見るわよ、覚悟しなさい!」

いざ決戦の時、と私が身構えた瞬間…

「ちょっと待った!!」

庭園に響く声、

「…なんであんたが、ここにいるのよ?」

そこに立っていたのは、聖女見習い改め、聖女のエベルだった。
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