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38 王子、そして悪魔との再会
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城の庭園はまとまりのない色とりどりの花で溢れていた。
フィリップが気に入った花を思い付くままに植えさせ、プライドを傷付けられた庭師がノイローゼになったといういわくつきの庭園だ。
その中央、噴水の縁、お気に入りの場所にフィリップはいた。相変わらずの美少女顔で本を読んでいる。
「フィリップと二人にしてくれる?」
私はレイモンドを見て言った。
「俺は、悪魔から君を守るように言われているのだ」
「大丈夫、私、悪魔耐性は高いのよ」
「フィリップ!」
「君はだれ?」
フィリップはしっかり私を忘れていた。
「パテックよ」
「君がパテック…パティって呼んでいい?」
「いいけど…」
「じゃあパティ、何して遊ぶ?」
いつものマイペースぶり、懐かしくもある。
「遊びに来たわけじゃないわ」
「じゃあ、お菓子食べる?」
「いらない」
「じゃあ!じゃあ…」
私は無邪気すぎるフィリップに、さすがに苛立った。
「ねえフィリップ!このままだと二年後にあんたは死ぬのよ、分かってる?」
「分かってるよ、誰かと結婚すれば呪いは解けるんだよね」
「それで、その相手をどうやって見つけるか考えてるの?」
「うーん……やっぱり分かんないや。パティは心配性だね」
「あんたがのんきすぎるのよ。レイモンドはどうするの!」
「レイモンド?あの怖いお姉さんだよね…」
フィリップは怯えるように言った。
「違う、違う、あんたはレイモンドと結ばれる為に過去を変えたんでしょ!なんで一番大事な事まで忘れちゃうのよ?」
「パティ、何、訳分かんないこと言ってるのさ?」
何かおかしい、反則すれすれの分身まで使って叶えた願いの筈なのに、フィリップはカケラも覚えていない。
「ゾディアック、いるんでしょ?出てきなさいよ!」
「ヘッヘッヘ、相変わらずお節介だなだな、パティ」
フィリップの背後にゾディックが現れた。
「あんたには改変前の記憶が残ってるの?」
「ああ、俺は変えられた過去も未来も全てを覚えているのさ。俺はおまえら人間とは違う次元に存在しているんで、それでも人間界にはパラドックスが起きないんだ、ヘッヘッヘ」
「なんか分かんないけどズルい気がする」
「ヘッヘ、じゃあ悪魔に生まれ変わるかい?仮契約はまだ有効だぜ」
「それはお断り!」
「パティ、ゾディアックの事、知ってるの?」
フィリップが不思議そうに私を見た。
「知ってるも何も…ああ、めんどくさい!ゾディアック、なんでレイモンドはフィリップを避けてるのよ?」
「ヘッヘ、モーザーがレイモンドだけ過去に置いてきたのを覚えてるか?」
「過去に戻って生きてるフィリップを連れてきた時だっけ?」
「ああ、だから今ここにいるレイモンドは、過去に行ったレイモンドの代わりに未来からスライドして来たレイモンドなのさ」
「その違いはなんなの?」
「パティがいるのはフィリップが死ななかった事に書き換えられた世界の延長だが、ここにいるレイモンドはフィリップが死んだままの書き換えられなかった世界、自分がフィリップを殺した世界の延長にいるんだ。その感情が記憶の矛盾が調整されてもトラウマとして残っちまったのさ、ヘッヘッヘ」
「なんかパズルみたいな話ね…だけど、フィリップまでレイモンドを避けてるのはなんで?」
「ヘッヘッヘ、レイモンドにフラれて記憶を封印しちまったのさ」
「情けな…それにしても、レイモンドと上手くいってないのに、脅かして女性を近づけないなんて酷いじゃない!」
「ヘッ、そりゃあないぜパティ、俺の役目は『預言された勇者』が生まれない様にする事だ。フィリップの結婚を邪魔するのは当たり前だろ?」
「私に憑りついてた時には、ずっと姿を隠してたじゃない」
「ヘッ、その時は大人しくしてた方がフィリップに近づきやすかったからな。みんなか注目する婚礼の儀でいきなり現れてフィリップに悪い評判が立つようにするつもりだった」
ゾディアックは牙をむき出して笑った。
「私に協力したのも全てはあんたの策略って事?」
「ヘッヘッヘ、俺と友達にでもなったつもりだったか?勘違いするなよ!俺は悪魔だ、お前ら人間の不幸をエネルギーにして生きてる。利用できると思ったから力を貸しただけさ」
「…そうね、あんたは悪魔なんだから、そうするのが当然よね。でもねゾディアック…私はあんたの事を、いつの間にか相棒みたいに思ってたのよ、悪かったわね!」
フィリップが気に入った花を思い付くままに植えさせ、プライドを傷付けられた庭師がノイローゼになったといういわくつきの庭園だ。
その中央、噴水の縁、お気に入りの場所にフィリップはいた。相変わらずの美少女顔で本を読んでいる。
「フィリップと二人にしてくれる?」
私はレイモンドを見て言った。
「俺は、悪魔から君を守るように言われているのだ」
「大丈夫、私、悪魔耐性は高いのよ」
「フィリップ!」
「君はだれ?」
フィリップはしっかり私を忘れていた。
「パテックよ」
「君がパテック…パティって呼んでいい?」
「いいけど…」
「じゃあパティ、何して遊ぶ?」
いつものマイペースぶり、懐かしくもある。
「遊びに来たわけじゃないわ」
「じゃあ、お菓子食べる?」
「いらない」
「じゃあ!じゃあ…」
私は無邪気すぎるフィリップに、さすがに苛立った。
「ねえフィリップ!このままだと二年後にあんたは死ぬのよ、分かってる?」
「分かってるよ、誰かと結婚すれば呪いは解けるんだよね」
「それで、その相手をどうやって見つけるか考えてるの?」
「うーん……やっぱり分かんないや。パティは心配性だね」
「あんたがのんきすぎるのよ。レイモンドはどうするの!」
「レイモンド?あの怖いお姉さんだよね…」
フィリップは怯えるように言った。
「違う、違う、あんたはレイモンドと結ばれる為に過去を変えたんでしょ!なんで一番大事な事まで忘れちゃうのよ?」
「パティ、何、訳分かんないこと言ってるのさ?」
何かおかしい、反則すれすれの分身まで使って叶えた願いの筈なのに、フィリップはカケラも覚えていない。
「ゾディアック、いるんでしょ?出てきなさいよ!」
「ヘッヘッヘ、相変わらずお節介だなだな、パティ」
フィリップの背後にゾディックが現れた。
「あんたには改変前の記憶が残ってるの?」
「ああ、俺は変えられた過去も未来も全てを覚えているのさ。俺はおまえら人間とは違う次元に存在しているんで、それでも人間界にはパラドックスが起きないんだ、ヘッヘッヘ」
「なんか分かんないけどズルい気がする」
「ヘッヘ、じゃあ悪魔に生まれ変わるかい?仮契約はまだ有効だぜ」
「それはお断り!」
「パティ、ゾディアックの事、知ってるの?」
フィリップが不思議そうに私を見た。
「知ってるも何も…ああ、めんどくさい!ゾディアック、なんでレイモンドはフィリップを避けてるのよ?」
「ヘッヘ、モーザーがレイモンドだけ過去に置いてきたのを覚えてるか?」
「過去に戻って生きてるフィリップを連れてきた時だっけ?」
「ああ、だから今ここにいるレイモンドは、過去に行ったレイモンドの代わりに未来からスライドして来たレイモンドなのさ」
「その違いはなんなの?」
「パティがいるのはフィリップが死ななかった事に書き換えられた世界の延長だが、ここにいるレイモンドはフィリップが死んだままの書き換えられなかった世界、自分がフィリップを殺した世界の延長にいるんだ。その感情が記憶の矛盾が調整されてもトラウマとして残っちまったのさ、ヘッヘッヘ」
「なんかパズルみたいな話ね…だけど、フィリップまでレイモンドを避けてるのはなんで?」
「ヘッヘッヘ、レイモンドにフラれて記憶を封印しちまったのさ」
「情けな…それにしても、レイモンドと上手くいってないのに、脅かして女性を近づけないなんて酷いじゃない!」
「ヘッ、そりゃあないぜパティ、俺の役目は『預言された勇者』が生まれない様にする事だ。フィリップの結婚を邪魔するのは当たり前だろ?」
「私に憑りついてた時には、ずっと姿を隠してたじゃない」
「ヘッ、その時は大人しくしてた方がフィリップに近づきやすかったからな。みんなか注目する婚礼の儀でいきなり現れてフィリップに悪い評判が立つようにするつもりだった」
ゾディアックは牙をむき出して笑った。
「私に協力したのも全てはあんたの策略って事?」
「ヘッヘッヘ、俺と友達にでもなったつもりだったか?勘違いするなよ!俺は悪魔だ、お前ら人間の不幸をエネルギーにして生きてる。利用できると思ったから力を貸しただけさ」
「…そうね、あんたは悪魔なんだから、そうするのが当然よね。でもねゾディアック…私はあんたの事を、いつの間にか相棒みたいに思ってたのよ、悪かったわね!」
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