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29 近衛隊長の乱心と王子の死
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「駄目だ!フィリップ様に呪いを移すなど、俺が許さん…」
レイモンドが剣を抜いて私に向けた。
「レイモンド、何のつもり?」
「お嬢ちゃんが死ねば、前提条件が崩れて、願いは不成立になる筈だ!」
(やばい、レイモンドが壊れた…)私はピンチに陥った。
「死んでくれ、パテック・カラトヴァ!」
剣を振り上げたレイモンドは、そのまま私を切りつけた。
「!」
その場にいた全員が凍り付いた。レイモンドの剣に倒れたのは、フィリップだった。
フィリップはとっさに私の前に飛び出し、私をかばったのだった。
「フィリップ様!なぜ?」
レイモンドは絶叫した。
私は、フィリップが私をかばうというあり得ない事態に呆然としていた。
レイモンドがフィリップを胸に抱き寄せる。
「ああ、俺は何という事を…誰か治癒魔法を!」
「私がやってみましょう」
案内係の聖女が祈りのポーズをとると、フィリップに回復の光が注いだ。
「レイモンド…」
「しゃべらないで、安静にしてください」
「パティを殺しては駄目だよ…呪いは僕が背負うべき運命なんだ」
「しかし、それではフィリップ様の命が…」
「僕の呪いは、君との婚姻の儀式で解こうと思っていたんだ」
「婚姻の儀式…フィリップ様と、このレイモンドが結婚を?あり得ません!身分が違いすぎます…」
「身分なんか関係ない、僕は君と一緒に生きていきたいんだ」
(なんか変だ…)私は、さっきから二人の会話に違和感を感じていた。二人の愛は禁じられた関係だと思い込んでいたが、フィリップはレイモンドを正妻に迎えようと考えていた。それはつまり…
「レイモンド、あんたって…女なの?」
「何を今更、俺は女だ。知らなかったのか?」
「当然みたいに言わないでよ!格好は男だし、名前も男っぽいじゃない」
「格好は近衛隊の制服だから男女兼用だし、名前が男っぽいのはお嬢ちゃんも一緒だろう」
「…確かに」思い込みと恐ろしいものだ…
「それより、フィリップ様の状態は?」
「残念ですが、傷が深すぎます。少しの間だけ延命するのが精一杯です」
聖女が答える。
「モーザー、あんた白魔導士でしょ、これでなんとかしてよ」
私は魔法石板をモーザーに差し出した。
「僕の能力じゃ、魔法石板を使っても聖女を超える治癒魔法は無理ですよー」
「ヘッヘッヘ、困った事になったな、パティ」
それまで姿を消していたゾディアックが現れた。
「ゾディアック、どこ行ってたのよ!」
「俺はずっといたぜ。パティがもう一方のゾディアックを認識してたから、俺が見えなくなったてんだよ。今、その存在が消えかけてるから、また見えるようになったんだろ」
「ねえゾディアック、ここにいるフィリップが死んでも、もう一人のフィリップは生き残るのよね?」
私は恐る恐る訊いた。
「どうかな?これは、どちらかが生き残るって話じゃなくて、どちらかに収斂するって事だから、生きるか死ぬかは結果が出てみなきゃ分らん、ヘッヘッヘ」
「それじゃ困るのよ!今、フィリップに死なれたら、私の呪いが解けなくなるじゃない」
「ヘッ、だから困った事になったって言っただろ」
「フィリップ様!」
レイモンドの悲痛な叫びが響いた。
「この方の魂は天に召されました…」
聖女が胸の前で十字を切った。
私はレイモンドを押し退けてフィリップの肩を揺すった。
「フィリップ、死んでる場合じゃないでしょ?起きなさいよ、フィリップ…フィリップ!」
レイモンドが剣を抜いて私に向けた。
「レイモンド、何のつもり?」
「お嬢ちゃんが死ねば、前提条件が崩れて、願いは不成立になる筈だ!」
(やばい、レイモンドが壊れた…)私はピンチに陥った。
「死んでくれ、パテック・カラトヴァ!」
剣を振り上げたレイモンドは、そのまま私を切りつけた。
「!」
その場にいた全員が凍り付いた。レイモンドの剣に倒れたのは、フィリップだった。
フィリップはとっさに私の前に飛び出し、私をかばったのだった。
「フィリップ様!なぜ?」
レイモンドは絶叫した。
私は、フィリップが私をかばうというあり得ない事態に呆然としていた。
レイモンドがフィリップを胸に抱き寄せる。
「ああ、俺は何という事を…誰か治癒魔法を!」
「私がやってみましょう」
案内係の聖女が祈りのポーズをとると、フィリップに回復の光が注いだ。
「レイモンド…」
「しゃべらないで、安静にしてください」
「パティを殺しては駄目だよ…呪いは僕が背負うべき運命なんだ」
「しかし、それではフィリップ様の命が…」
「僕の呪いは、君との婚姻の儀式で解こうと思っていたんだ」
「婚姻の儀式…フィリップ様と、このレイモンドが結婚を?あり得ません!身分が違いすぎます…」
「身分なんか関係ない、僕は君と一緒に生きていきたいんだ」
(なんか変だ…)私は、さっきから二人の会話に違和感を感じていた。二人の愛は禁じられた関係だと思い込んでいたが、フィリップはレイモンドを正妻に迎えようと考えていた。それはつまり…
「レイモンド、あんたって…女なの?」
「何を今更、俺は女だ。知らなかったのか?」
「当然みたいに言わないでよ!格好は男だし、名前も男っぽいじゃない」
「格好は近衛隊の制服だから男女兼用だし、名前が男っぽいのはお嬢ちゃんも一緒だろう」
「…確かに」思い込みと恐ろしいものだ…
「それより、フィリップ様の状態は?」
「残念ですが、傷が深すぎます。少しの間だけ延命するのが精一杯です」
聖女が答える。
「モーザー、あんた白魔導士でしょ、これでなんとかしてよ」
私は魔法石板をモーザーに差し出した。
「僕の能力じゃ、魔法石板を使っても聖女を超える治癒魔法は無理ですよー」
「ヘッヘッヘ、困った事になったな、パティ」
それまで姿を消していたゾディアックが現れた。
「ゾディアック、どこ行ってたのよ!」
「俺はずっといたぜ。パティがもう一方のゾディアックを認識してたから、俺が見えなくなったてんだよ。今、その存在が消えかけてるから、また見えるようになったんだろ」
「ねえゾディアック、ここにいるフィリップが死んでも、もう一人のフィリップは生き残るのよね?」
私は恐る恐る訊いた。
「どうかな?これは、どちらかが生き残るって話じゃなくて、どちらかに収斂するって事だから、生きるか死ぬかは結果が出てみなきゃ分らん、ヘッヘッヘ」
「それじゃ困るのよ!今、フィリップに死なれたら、私の呪いが解けなくなるじゃない」
「ヘッ、だから困った事になったって言っただろ」
「フィリップ様!」
レイモンドの悲痛な叫びが響いた。
「この方の魂は天に召されました…」
聖女が胸の前で十字を切った。
私はレイモンドを押し退けてフィリップの肩を揺すった。
「フィリップ、死んでる場合じゃないでしょ?起きなさいよ、フィリップ…フィリップ!」
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