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26 列車の中にて、真相解明
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グラスヒュッテ直通列車がル・ブランシュ駅を出発する。
その車内、向かい合わせの座席には、私とモーザーそしてレイモンドが座っていた。本当はプラスして悪魔のゾディアックがいるが、いつものように私以外には見えない。
「レイモンド、そう言えば、フィリップがル・ロックル城から逃亡した方法って分かったの?」
私は軽くジャブを放ってみた。
「まだ調査中だ」
レイモンドは決まり文句のように言った。これは想定通り。
「私はね、最初、エベルに悪魔が憑いていて、そいつが魔法を使ったんじゃないかと考えたのよ」
「聖女見習いに悪魔か、斬新な発想だな」
「でもそれは大聖女ゾーネに否定された。聖女見習いは守護天使に見守られてるってね」
「それじゃあ守護天使がフィリップの逃亡を助けたのか」
「それも違った。降臨の儀式で契約が結ばれるまでは、守護天使は見守るだけで魔法を使う事はできないのよ」
「裏技はありますけど。守護天使が闇落ちして堕天使になれば、儀式抜きで人に憑くことができます」
モーザーが豆知識を披露する。が、今は蛇足だ。
「とにかく、エベルはこれから降臨の儀式を受けるんだから、あの時点で天使がついていた可能性はないって事よ」
「つまり、お嬢ちゃんにも分からないって事だな」
「チッチッチ、舐めて貰っちゃ困るわ。私、思い付いたのよ、黒魔導士が裏で手を貸してるんじゃないのかってね」
「それはどうかな、フィリップ様が黒魔導士と知り合いになる機会など無かったはずだ」
「そうね、フィリップには無かったでしょうね…ところでレイモンド、あんたってどこ生まれだっけ?」
「なぜそんな事を訊く…お嬢ちゃんには関係ないだろう」
「なによ、言えないようなとこなの?」
「そんな事はない、グレンヘン王国だ」
「グレンヘンて、黒魔導士の国よね?」
「何が言いたいんだ」
「黒魔導士の知り合いも多いんじゃない?」
「俺が黒魔導士を雇ってフィリップ様の逃走を助けたと言いたいのか?」
「あら、そう言ってるように聞こえた?」
「フィリップ様を捕まえて保護したのは俺だぞ。逃がすなら初めから捕まえたりしないだろう」
「それは、私がフィリップの捜索に加わるという、あんたにとって想定外の事が起きたからよ…ねえ、レイモンド、あんたって私の事が嫌いでしょ?」
「別に、好きでも嫌いでもないが」
「いいや、あんたは明確に私が嫌いなはずよ。だって、あんたはフィリップの事を愛しているんだから…」
「な…何を根拠に…」
レイモンドはこれまで見せた事がないほど狼狽した。それが答だった。
「根拠はない、女の感よ。でもそう考えれば、あんたが誤情報で私を攪乱した事にも納得がいくわ」
「…ただの小娘だと思って見くびっていたようだ。見事な推理だよ、お嬢ちゃん」
「認めるのね?」
「そうとも、俺とフィリップ様は愛し合っていた。なのに、エベルとかいう娘が急に割り込んできやがった!」
「勝手に盛り上がってるけど、私の立場は?」
「お嬢ちゃんには、最適なタイミングで死んでもらう予定だった」
「はっきり言うわね…」
「しかし、死んでもらうのはエベルが先だ。俺はエベルを暗殺するために黒魔導士を雇った」
(そういう事か)私は、なぜエベルが予定を早めて、降臨の儀式を受ける旅に出たのか疑問だったが、これで分かった。
「命の危険を感じたエベルは、フィリップを連れて逃げた。それが駆け落ちの真相だったのね!」
その車内、向かい合わせの座席には、私とモーザーそしてレイモンドが座っていた。本当はプラスして悪魔のゾディアックがいるが、いつものように私以外には見えない。
「レイモンド、そう言えば、フィリップがル・ロックル城から逃亡した方法って分かったの?」
私は軽くジャブを放ってみた。
「まだ調査中だ」
レイモンドは決まり文句のように言った。これは想定通り。
「私はね、最初、エベルに悪魔が憑いていて、そいつが魔法を使ったんじゃないかと考えたのよ」
「聖女見習いに悪魔か、斬新な発想だな」
「でもそれは大聖女ゾーネに否定された。聖女見習いは守護天使に見守られてるってね」
「それじゃあ守護天使がフィリップの逃亡を助けたのか」
「それも違った。降臨の儀式で契約が結ばれるまでは、守護天使は見守るだけで魔法を使う事はできないのよ」
「裏技はありますけど。守護天使が闇落ちして堕天使になれば、儀式抜きで人に憑くことができます」
モーザーが豆知識を披露する。が、今は蛇足だ。
「とにかく、エベルはこれから降臨の儀式を受けるんだから、あの時点で天使がついていた可能性はないって事よ」
「つまり、お嬢ちゃんにも分からないって事だな」
「チッチッチ、舐めて貰っちゃ困るわ。私、思い付いたのよ、黒魔導士が裏で手を貸してるんじゃないのかってね」
「それはどうかな、フィリップ様が黒魔導士と知り合いになる機会など無かったはずだ」
「そうね、フィリップには無かったでしょうね…ところでレイモンド、あんたってどこ生まれだっけ?」
「なぜそんな事を訊く…お嬢ちゃんには関係ないだろう」
「なによ、言えないようなとこなの?」
「そんな事はない、グレンヘン王国だ」
「グレンヘンて、黒魔導士の国よね?」
「何が言いたいんだ」
「黒魔導士の知り合いも多いんじゃない?」
「俺が黒魔導士を雇ってフィリップ様の逃走を助けたと言いたいのか?」
「あら、そう言ってるように聞こえた?」
「フィリップ様を捕まえて保護したのは俺だぞ。逃がすなら初めから捕まえたりしないだろう」
「それは、私がフィリップの捜索に加わるという、あんたにとって想定外の事が起きたからよ…ねえ、レイモンド、あんたって私の事が嫌いでしょ?」
「別に、好きでも嫌いでもないが」
「いいや、あんたは明確に私が嫌いなはずよ。だって、あんたはフィリップの事を愛しているんだから…」
「な…何を根拠に…」
レイモンドはこれまで見せた事がないほど狼狽した。それが答だった。
「根拠はない、女の感よ。でもそう考えれば、あんたが誤情報で私を攪乱した事にも納得がいくわ」
「…ただの小娘だと思って見くびっていたようだ。見事な推理だよ、お嬢ちゃん」
「認めるのね?」
「そうとも、俺とフィリップ様は愛し合っていた。なのに、エベルとかいう娘が急に割り込んできやがった!」
「勝手に盛り上がってるけど、私の立場は?」
「お嬢ちゃんには、最適なタイミングで死んでもらう予定だった」
「はっきり言うわね…」
「しかし、死んでもらうのはエベルが先だ。俺はエベルを暗殺するために黒魔導士を雇った」
(そういう事か)私は、なぜエベルが予定を早めて、降臨の儀式を受ける旅に出たのか疑問だったが、これで分かった。
「命の危険を感じたエベルは、フィリップを連れて逃げた。それが駆け落ちの真相だったのね!」
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