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25 列車の切符と意外な出会い

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「ねえ、グラスヒュッテ行きの列車っていつ出るの?」

私は切符売り場の職員に話しかけた。

「列車は四十分後に発車しますが、儀式の招待状をお持ち方以外には切符をお売りできません」

この答えは想定済みだ。私は魔法石板に刻まれた王家の紋章を見せた。

「招待状を忘れてしまったのよ。これで切符を売ってくれないかな?」

「お、王家の方でしたか!しかし、決まりは決まりですので…」

「責任はグラスヒュッテ王室が持ちます。切符を売って頂けますね?‥頂けますね!」

「わ、分かりました、お売りします…」



「…つくづくパテックさんが仲間で良かったと思いましたよ…」

モーザーが溜息まじりに言った。

「ちょろいもんね、少し時間もあるし、魔法石を買いに行きましょ」

私は気分上々だった。

「ヘッヘ、水を差すようで悪いが、グラスヒュッテ行きは止めた方がいいと思うぜ」

ゾディアックがとんでもない事を言い出した。

「今更、何言ってんのよ?」

「ここに来た時から感じてたが、天使の存在がどんどん大きくなってやがる」

「そりゃあ、降臨の儀式って天使を迎える儀式なんだから当たり前でしょ」

「ヘッ、その天使が問題なんだ」

「まさか、また特級天使だとでも言うの?」

「ああ、その通りだ。このまま結界に入ったら、今度こそやられるかもな、ヘッヘッヘ」

「ちなみに、そのやられるって中には私も入ってるのよね?」

ゾディアックは頷いた。

「ったくもう…特級天使を安売りしすぎなんじゃないの!」

この怒りの一言には、私の独り言に慣れているはずのモーザーも、さすがに黙っていられなかったようだ。

「あの…パテックさん、何を怒ってるんですか?」

「何でもない!…いいわ、受けて立とうじゃないの。たとえ罠だとしても、ここまで来て手ぶらで帰るわけにはいかないのよ…」



ル・ブランシュの市場はこじんまりとしていた。魔法石はその中にある魔法道具屋の店先にあった。

「白魔導士の国なのに、あんまり魔法石が売ってないのね」

「魔法石って魔法が使えない人のためにあるんで、この国では逆に需要がないんです」

「そっか、白魔導士って普通は自分の魔力を使うんだもんね。あんたを見てたから忘れちゃってたわ」

「いやー、返す言葉もありません…」


私は道具屋の店主に話しかけた。

「ここにある魔法石、全部売ってちょうだい」

「ぜ、全部ですか!…(以下略)」



さて、魔法石板へ魔力をチャージし、意気揚々と駅に向かっていた私、

ドンッ!

角を曲がって生きた屈強な男と出会い頭にぶつかった。

(え、こんなところで恋のはじまり?)などと淡い期待を抱いて相手を見ると…その男は近衛隊長のレイモンドだった。

「お嬢ちゃん、なぜここに居るんだ?」

レイモンドは明らかに動揺していた。

「それは百パーセントこっちのセリフよ!グレンヘンに行ったんじゃなかったの?」

「ああ、グレンヘンには行ったさ。そこでフィリップ様がグラスヒュッテに向かったという情報を掴んだんで、早馬を飛ばしてやって来たんだ」

レイモンドがどれだけ特殊な馬に乗っているのか知らないが、空を飛んできた私たちと同じタイミングでここに来られるわけがない。
よっぽど指摘してやろうかと思ったが踏みとどまった。それは、レイモンドが私たちを誘導して、フィリップから遠ざかるようにしている事が分かったからだ。
私は逆にレイモンドを騙して真相を突き止める事にした。

「レイモンド、あんたグラスヒュッテに行く手段はあるの?」

「いや、直通列車でしか行けないんだが、切符を売って貰えなくてな…」

(勝った!)「そーお…私なら切符を手に入れられるんだけど、土下座して頼むなら連れてってあげてもいいわよ?」

「くっ…」

レイモンドの顔が屈辱に歪む。私はそれを見て、一応満足した。

「冗談よ。一緒に行きましょ、グラスヒュッテに」
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