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17 告白はディナーの後で

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ル・ロックル城では、私とモーザーにそれぞれ別の部屋が用意された。

「聖女見習いのエベルは、どうやって城からフィリップを連れ出したんだろう…」

私は今日の出来事を整理してみた。

「部屋の外にはレイモンドが立っていたから、扉から出入りは出来なかった。かと言って窓は地上から十メートルの高さだし、仮に登れたとして、去り際に鍵をかける方法がない…」

「ヘッヘッヘ、まるでミステリー小説だな」

ゾディアックがからかうように言った。

「全然。要するに魔法を使ったって事よ。問題は誰が魔法を使ったかって所ね」

「ヘッヘ、フィリップかエベルが魔法石板を持ってたんじゃないのか?」

「それはない。魔法石板の場所は魔法協会で探索できるから、持ち主は居場所が割れてしまうのよ」

「魔法石板の持ち主は夜逃げもできないってわけだ。ヘッヘッヘ」

「ゾディアックは魔法石板と魔法使い以外で魔法を使える方法って知ってる?」

「ああ知ってるよ。パティも知ってる筈だぜ、ヘッヘッヘ」

「私も知ってる?」

「ヘッヘッヘ、悪魔と契約する事さ」

「あっ…」

確かに私は知っていた。悪魔と契約して願いを叶えてもらうというのも魔法には違いない。その代わり、魂は魔界に落ち、死んだら悪魔に生まれ変わるのだ。

「つまり、エベルが悪魔と契約したって事?」

「ああ、しかし、それだとどこかの悪魔が俺の邪魔をしてる事になるが…」

「それって、なんかおかしいの?」

「魔界のルールで、悪魔同士は仕事の邪魔をしない事になってるのさ、ヘッヘ」

「悪魔のくせに、そういう所はキッチリしてんのね」

コンコンコン、扉をノックする音がした。

「お食事の用意ができました」

女性の使用人が迎えに来たのだった。



「さあ、お座りくださいパテックさん」

案内された広間にはダニエル王子しかいなかった。

「二人だけですか?」

「そうですが、何か?」

「あの…モーザーは」

「彼には別室で食事をしてもらっています」

「どうしてですか?」

「それは、あなたに大切なお話があるからです」

「なんでしょう?」

「まあ、それはディナーの後で…」

ディナーは、さすが王室という豪華さだった。
私はぺろりと食事を平らげると、ダニエル王子に言った。

「お話を聞かせていただきましょうか」

「では率直に言わせてもらいます。フィリップ王子の事は忘れて、私と結婚しませんか」

これはまた急な展開だ。しかし、ダニエル王子と結婚して呪いを解くという手もなくはない。

「私を一生、変わらず愛せますか?」

「もちろんですとも!」

ダニエル王子は即答した。

(この男はダメだ…)この質問に悩まず即答できる男は嘘つきに決まっている。

「ごめんなさい。この話はお受けできません」

「なぜです!駆け落ちしたフィリップを、まだ愛していると言うのですか?」

「まあ、そんなとこです‥」

「そうですか…あなたの気持ちも考えず、失礼しました。この件は忘れてください」

気味悪いほど満面の笑顔でダニエル王子は言った。
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