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16 駆け落ち王子の行先は

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モーザーはル・ロックル城の近衛兵に両脇を固められていた。

「パテックさーん、助けてください。僕がシャフハウゼン王家の関係者だって言っても信じてくれないんですよー」

「私が身元を証明します。離してあげなさい」

ダニエル王子が近衛兵に告げた。

「お嬢ちゃん、コイツは誰なんだ」

レイモンドが尋ねた。

「白魔導士のモーザー、私の旅のお供よ」

私が紹介すると、レイモンドは怪訝そうな目でモーザーを見た。

「あ、怪しい者じゃありませんよ。ほら、王立魔法保安協会の登録証もあります」

モーザーは胸のバッジを指差した。



「さてと、捜索は手詰まりになってしまったな…」

レイモンドは思索するように腕を組むと、空中に写ったフィリップの映像を見詰めた。

「あ…その人!」

突然、モーザーが声を上げました。

「どうかした?」

「その映像の人、知ってる。さっき駅で会った人だ」

「それ本当?」

「うん、お城までの地図を描いてくれたんだ、優しい人だよ」

「なに呑気なこと言ってんの!それがフィリップじゃない、なんで捕まえなかったのよ?」

「そんなの無理だよー。だって僕、フィリップ王子に会った事ないんだからー」

(うー、そうだった…)「それで、フィリップは一人だった?」

「ううん、綺麗な女の子と一緒だったよ」

という事は、やはりエベルと一緒か。

「駅のどこで会ったの?」

「列車を降りたホームのベンチだよ」

「そのホームから列車に乗ったとしたら、フィリップたちは西に向かったって事よね」

「西…」

レイモンドが何かを思い出したようにつぶやいた。

「何か思い当たる事でもあるの?」

「ここから西に二つ国を越したル・サンティエ王国がエベル嬢の生まれた国だが…」

「じゃあ行ってみましょうよ。迷ってたって仕方ないわ」

今すぐにでも出発しそうな私を見て、ダニエル王子が言った。

「列車で行くのでしたら、もう今日の最終列車は出てしまいましたよ」

「えぇ!もうそんな時間なの」

「俺は馬だから先に出発するぞ」

レイモンドは挑発的に私を見た。

「じゃあ私たちも馬で…」

「俺の馬は追跡用に調教された特殊な馬だ。お嬢ちゃんたちは明日の一番列車に乗った方が早道だろう」

「城に泊られてはどうですか?歓迎しますよ」

悔しいが、このダニエル王子の申し出を受け入れるしかない。
という訳で、私とモーザーはル・ロックル城に一泊する事になった。
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