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11 出発の準備は整った

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部屋に戻った私は旅の準備を続けた。

この国の外に出るのは、今回が生まれて初めての経験だ。何を持っていくべきか悩みは尽きなかった。

「剣は何を持っていこうかな…実用的な焼結メタル製か、いや、せっかくの初旅行だもの、ここは見た目重視でブルークリスタル製にしよう」

私はブルークリスタルの剣をバッグに挿した。

「盾はどれにしよう…防御力の高い重量級か、機動力重視で軽量級にするか…」

私は二つを手に取り感触を確かめた。

「ヘッヘッへ、重武装して冒険にでも行く気か、パティ?」

ゾディアックが口を挟んできた。

「ジャマするなら、どっか行ってよ」

「ヘッ、行きたくても行けねえって分かってんだろ。ところで移動には何を使う気だ?」

「列車にするわ、馬車を使うよりダンゼン速いしね」

「だったら悪い事は言わねえ、荷物は最小限にして、必要なもんは現地で買いそろえな、ヘッヘッへ」

ゾディアックは悪魔らしくない堅実なことを言った。
冷静に考えればダンジョンに行くわけでもないし、武器を使う機会はほぼない。それに気付いた私は武器の携帯をあきらめた。念のため使い慣れた武器を持って行きたい所ではあったが…
結局、最低限の着替えと、お気に入りの本三冊と、竜の牙から削りだしたナイフのみをバッグに詰めた。

「ところで白魔導士を手配しなくていいのか?」

ゾディアックがまた私の知らない知識をぶっこんで来た。

「なんの話?」

「長旅に出る時には、傷病に備えて回復系の白魔導士を同行させるのが一般的なんだぜ、ヘッヘッヘ」

「なんでそんな事、知ってんのよ?」

「前世の記憶かな?なぜか分かるんだよ、ヘッヘッヘ」

「もしかしてゾディアックって前世は人間だったの?」

「かも知れんが、分からんな。パティだって前世が何かなんて分からんだろ?ヘッヘッヘ」

言われてみれば確かにそうだった。

「あ、王妃様から貰った魔法石板があるじゃない。あれって回復魔法も使えるんじゃない?」

「使えたとしても、回復魔法を直接自分に使う事はできないんだぜ、知ってたか?ヘッヘッヘ」

「あーいちいちムカつく!なんで否定的なことばっか言うの?」

「オイ、悪魔に八つ当たりするなよ、ヘッヘッヘ」

と、ここで私は思い付いた。

「そうだ、この際だから預言者ミドーに用意してもらおう!」

私は魔法石板を取り出すと、その手のひらサイズの本体に指先で文章を書いた。その文字は緑に光って浮かび上がる。

「…大予言者ミドー様…フィリップ捜索のため旅に出ることになりました…つきましては優秀な白魔導士を一名、派遣いただけますようお願い申し上げます。…P.S.この願いが聞き入れられなかった場合、王家の力を使って協会をぶっ潰すのでよろしく…と、これでいいか」

この様子を隣で見ていたゾディアックは思い切り引いている、悪魔のくせに弱気なヤツだ。

「コール!魔鳥を呼んで」

魔法石板に話しかけると、どこからともなく魔鳥と呼ばれる黒い鳥が飛んできた。

魔鳥は魔法石板に止まり、緑に光って浮かんでいた手紙の文字が魔鳥に吸い込まれていく。

「センド!」と私が言うと魔鳥は飛び立った。

これで魔鳥がメッセージを運び、相手が魔法使いか魔法石板を持っていれば、魔鳥からメッセージを受け取る事ができるというシステムだ。
これが離れた相手と連絡を取ることのできる唯一の方法、『伝書魔鳥』である。

「あとは返事を待つだけね」


預言者ミドーからの返事は、当然、白魔導士を派遣するというものだった。

私は出発日を二日後と決め、国王に伝えた。
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