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10 魔法石板を手に入れる
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私は城の庭園にある東屋にやって来た。
東屋では王妃オフチーネが午後の紅茶を楽しんでいた。
「パテック、忙しい時に呼びだてしてしまってごめんなさいね」
王妃はいつものフワフワしたしゃべり方で私を迎えた。
「いえ、大丈夫です。ご用はなんでしょうか?」
実際には出発の準備で忙しかったので、私は席に着かずに答えた。
「これを渡そうと思って…」
王妃がそう言うと、使用人のグラハムが手に持つ箱を私に差し出し、フタを開いた。
「これって!」
私は目を輝かせた。
「魔法石板です。これを持っていればいつでも連絡がとれるし、いざという時は魔法で身を守る事もでしょう」
魔法石板とは、手のひらサイズの石板に魔力を封印したものだ。これがあれば魔力を持たない者でも、離れた人とメッセージのやり取りができるし、内蔵された呪文読み取り能力で様々な魔法を使うこともできるという夢のような道具である。
魔法石板そのものが非常に高価なうえ、ランニングコストも高いので、所有者は一部の貴族や金持ちなど、ごく限られた人々のみであった。
「い、いいんですか、私が使って…」
私は震える手で魔法石板を取り上げた。
「もちろんよ。二つ折りの最新型なの、中を開いて見て」
王妃に言われるまま魔法石板を開いた私は更に驚いた。
「王家の紋章があしらってあるの。これなら紋章ケースを持ち歩くよりスマートで便利でしょう?私のアイディアなのよ」
王妃は扇子で口元を隠しながら優雅に笑った。
(王家の紋章入り魔法石板!これなら魔法プラス王家の特権も使える。もはや私って無敵なんじゃないの?)「王妃様、なんて感謝したらいいのか…」
「パテック喜んで貰えてうれしいわ。私はずっと、あなたに逃れられない運命を与えてしまった事を、償わなければならないと思っていたのよ。
ただし、使いすぎると制限がかかって使えなくなる契約だから、利用は計画的にね」
王妃は笑顔のままだったが、その目の奥は笑っていない。王妃は、遠慮も限度も知らない私の性格をよく分かっていた。
東屋では王妃オフチーネが午後の紅茶を楽しんでいた。
「パテック、忙しい時に呼びだてしてしまってごめんなさいね」
王妃はいつものフワフワしたしゃべり方で私を迎えた。
「いえ、大丈夫です。ご用はなんでしょうか?」
実際には出発の準備で忙しかったので、私は席に着かずに答えた。
「これを渡そうと思って…」
王妃がそう言うと、使用人のグラハムが手に持つ箱を私に差し出し、フタを開いた。
「これって!」
私は目を輝かせた。
「魔法石板です。これを持っていればいつでも連絡がとれるし、いざという時は魔法で身を守る事もでしょう」
魔法石板とは、手のひらサイズの石板に魔力を封印したものだ。これがあれば魔力を持たない者でも、離れた人とメッセージのやり取りができるし、内蔵された呪文読み取り能力で様々な魔法を使うこともできるという夢のような道具である。
魔法石板そのものが非常に高価なうえ、ランニングコストも高いので、所有者は一部の貴族や金持ちなど、ごく限られた人々のみであった。
「い、いいんですか、私が使って…」
私は震える手で魔法石板を取り上げた。
「もちろんよ。二つ折りの最新型なの、中を開いて見て」
王妃に言われるまま魔法石板を開いた私は更に驚いた。
「王家の紋章があしらってあるの。これなら紋章ケースを持ち歩くよりスマートで便利でしょう?私のアイディアなのよ」
王妃は扇子で口元を隠しながら優雅に笑った。
(王家の紋章入り魔法石板!これなら魔法プラス王家の特権も使える。もはや私って無敵なんじゃないの?)「王妃様、なんて感謝したらいいのか…」
「パテック喜んで貰えてうれしいわ。私はずっと、あなたに逃れられない運命を与えてしまった事を、償わなければならないと思っていたのよ。
ただし、使いすぎると制限がかかって使えなくなる契約だから、利用は計画的にね」
王妃は笑顔のままだったが、その目の奥は笑っていない。王妃は、遠慮も限度も知らない私の性格をよく分かっていた。
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