上 下
6 / 66

6 予言者ミドーに会う

しおりを挟む
王立魔法保安協会は、我が国の白魔法を管理している公共機関です。
その組織は、物理魔法部、精神魔法部、回復魔法部、預言魔法部によって構成されています。
白魔法とは神の力を使って行われる魔法で、その元になるエネルギーは、呪文によって神と契約をかわす事で供給されます。
白魔法は我が国の交通、通信、医療、占いを支える大切なエネルギー資源です、大切に使いましょう。
(王立魔法保安協会の公式パンフレットより抜粋)

王立魔法保安協会に来た私は総合窓口で受付手続きを済ませた。

「それでは東館五階の預言魔法部、預言者派遣課までお願いします」

受付嬢に言われ、その場所に行くと、預言者ミドーその人がいた。

「はい、私が課長のミドーですが」

「私、パテック・カラトヴァです」

「パテック様…あー、はいはい覚えてますよ。ご用件は何でしょう?」

私はミドーに、フィリップが駆け落ちした件と、私の呪いを解く方法を知りたい旨を伝えた。

「…なるほど、その件ですと担当は契約更新課になります。四階へどうぞ」

「なんでよ、窓口で言われた通り来たのに!」

「そう言われましても、決まりですので」

なんというお役所仕事!いや役所なんだけど…

「分かりました、四階に行けばいいんですね!」

私はムカムカしながら言われた場所に向かった。

「いらっしゃいませ」

契約更新課で私を迎えたのはミドーだった、走って来たのかゼイゼイと肩で息をしている。

「これはなんの冗談ですか?」

「私は冗談なんか言っておりませんが。それで、ご用件は何でしょう?」

「また同じ話をしろっての?」

「決まりですので」

私はイライラしながらさっきと同じ話をした。

「…なるほど、なるほど、その件でしたら担当は呪い対策課ですね。二階へどうぞ」

「なんだと~、だったらさっきの所で言ってよ!」

「と言われましても、決まりですので」

(コイツ、たらい回しにしたすえに諦めて帰らせるつもりだな)私の闘志に火が付いた。

「分かりました、行きます、行きゃあいいんでしょう!」

私はのしのしと足音を響かせながら言われた場所を目指す、と、その後をミドーがついてきた。

「なんで後を付いてくるんですか?」

「気のせいです。お気になさらずに」

呪い対策課に着くと、案の定、ミドーが受付席についた。

「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょう?」

私は呆れながら三度目の事情説明をした。

「…で、次はどこに行けばいいの?」

「一階の魔法推進課へどうぞ」

そんなやり取りをしばらく繰り返していると…

「五階の預言者派遣課へどうぞ」

と言われた、これにはさすがにキレるしかないだろう。

「オイおまえ、最初に戻ってるだろうが!」

「決まりですので」

私はミドーの胸ぐらを掴んだ。

「殴る!」

「ま、待ちなさい少女よ!」

ミドーは急に真面目な顔になって言った。

「今まで通って来た経路をよく思い出してみなさい」

「どういう事?」

「そう…私たちは、秘密の間に通じる扉を開くための魔法陣を描いていたのです!」

したり顔でミドーは言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

処理中です...