5 / 18
第5話 私は屋敷の中を調べました
しおりを挟む
廊下に出た私は、その生活感の無さに違和感を覚えました。廊下の造りは部屋と同じで何の装飾もなく、床はやはりフローリングです。
私は壁際にしゃがみ込み、すり足で少しずつ進んでいきました。それにしても人気のない屋敷です。私は思い切って適当な部屋に入ってみました。
中は…ベッドもテーブルも、椅子の一脚すらありません。まさにもぬけの殻です。
私は次々と部屋のドアを開けてみますが、どの部屋も同じように空っぽでした。
廊下の曲がり角に到達した時、角の向こうからメイドが現れました。私を見下ろすメイドは無表情で、その感情をはかり知る事はできません。私は何か言い訳を考えなければと思いました。
「あの…トイレを使いたいのだけど…」
とっさに思い付いた理由としては真っ当な方でしょう。メイドは無言で私の手を引くと、ひとつのドアの前まで案内しました。そしてドアを開けると中を指差しました。
そこは他の部屋より二回り狭く、中央に人がまたげるくらいの穴が開いています。私が納得してうなずくと、メイドはどこかに行ってしまいました。
本当はトイレに用はなかったのですが、せっかくなので中に入り穴を覗いてみなした。
二階の床に開けられたその穴は、そのまま一階に通じており、その床には干し草が敷き詰められています。
なるほど、これは干し草で受け止めた排泄物を回収して肥やしに使う仕組みのようです。穴に落ちたら危険ですが、東洋のある国では一般的な方法だと聞いた事があります。
しかし、この国では持ち運び便器にためて川に流す方法が一般的なので、この屋敷を造った人物はかなり先進的な考えを持っていると思われました。
部屋に戻るとテーブルの上にサンドイッチが用意されていました。ここに来てからサンドイッチ以外の食事が出た事はありません、きっとナイフやフォークは凶器になるので使わせない気なのでしょう。
私はサンドイッチをほおばりながら考えを整理してみました。
どうやらこの屋敷にいるのは私とメイド達だけで、あの少年は別の場所に住んでいるようです。
そして、メイドの反応を見る限り、私は屋敷内を自由に動き回って構わないようでした。
だとすると、この徹底して布を排した環境は、私を丸腰に保つ事でメイドの安全を確保するためと考えられます。もちろんあの少年がただの変態という可能性の方が高いのですが…
* * *
その日の夜も私が入浴を終え、ナイトドレスを着た後になって少年が現れました。そういったところは妙に律儀です。
「エレーヌ、どうです、エドワードの呪縛は解けましたか?」
少年は相変わらず見当違いな事を言っています。
「いったい何が目的なんですか!私に何をして欲しいの?」
私は少年を睨みつけました。
「気付いて欲しいんだよ、君はエドワードなんか愛していない事、僕こそ君にふさわしいという事」
少年は私に笑い掛けます。
(もう!話になんないわ、コイツ…コイツ、何て名前だっけ?)
私は壁際にしゃがみ込み、すり足で少しずつ進んでいきました。それにしても人気のない屋敷です。私は思い切って適当な部屋に入ってみました。
中は…ベッドもテーブルも、椅子の一脚すらありません。まさにもぬけの殻です。
私は次々と部屋のドアを開けてみますが、どの部屋も同じように空っぽでした。
廊下の曲がり角に到達した時、角の向こうからメイドが現れました。私を見下ろすメイドは無表情で、その感情をはかり知る事はできません。私は何か言い訳を考えなければと思いました。
「あの…トイレを使いたいのだけど…」
とっさに思い付いた理由としては真っ当な方でしょう。メイドは無言で私の手を引くと、ひとつのドアの前まで案内しました。そしてドアを開けると中を指差しました。
そこは他の部屋より二回り狭く、中央に人がまたげるくらいの穴が開いています。私が納得してうなずくと、メイドはどこかに行ってしまいました。
本当はトイレに用はなかったのですが、せっかくなので中に入り穴を覗いてみなした。
二階の床に開けられたその穴は、そのまま一階に通じており、その床には干し草が敷き詰められています。
なるほど、これは干し草で受け止めた排泄物を回収して肥やしに使う仕組みのようです。穴に落ちたら危険ですが、東洋のある国では一般的な方法だと聞いた事があります。
しかし、この国では持ち運び便器にためて川に流す方法が一般的なので、この屋敷を造った人物はかなり先進的な考えを持っていると思われました。
部屋に戻るとテーブルの上にサンドイッチが用意されていました。ここに来てからサンドイッチ以外の食事が出た事はありません、きっとナイフやフォークは凶器になるので使わせない気なのでしょう。
私はサンドイッチをほおばりながら考えを整理してみました。
どうやらこの屋敷にいるのは私とメイド達だけで、あの少年は別の場所に住んでいるようです。
そして、メイドの反応を見る限り、私は屋敷内を自由に動き回って構わないようでした。
だとすると、この徹底して布を排した環境は、私を丸腰に保つ事でメイドの安全を確保するためと考えられます。もちろんあの少年がただの変態という可能性の方が高いのですが…
* * *
その日の夜も私が入浴を終え、ナイトドレスを着た後になって少年が現れました。そういったところは妙に律儀です。
「エレーヌ、どうです、エドワードの呪縛は解けましたか?」
少年は相変わらず見当違いな事を言っています。
「いったい何が目的なんですか!私に何をして欲しいの?」
私は少年を睨みつけました。
「気付いて欲しいんだよ、君はエドワードなんか愛していない事、僕こそ君にふさわしいという事」
少年は私に笑い掛けます。
(もう!話になんないわ、コイツ…コイツ、何て名前だっけ?)
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……
四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。
しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
悪役令嬢に転生して主人公のメイン攻略キャラである王太子殿下に婚約破棄されましたので、張り切って推しキャラ攻略いたしますわ
奏音 美都
恋愛
私、アンソワーヌは婚約者であったドリュー子爵の爵士であるフィオナンテ様がソフィア嬢に心奪われて婚約破棄され、傷心……
いいえ、これでようやく推しキャラのアルモンド様を攻略することができますわ!
【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!
ジャン・幸田
恋愛
私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!
でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる