修復スキルで無限魔法!?

lion

文字の大きさ
上 下
49 / 49

善と悪

しおりを挟む
   「どなただろうか?邪魔はしないでいただきたいが、どうやら王国側の人間の様だね?」

 エンシェントエルフが攻撃の手を収めずに老人、王国魔法調査団団長バンチ・ヤードに問い掛ける。

「いかにも、と言えばいかにもかのぅ。王国魔法調査団を名乗っている以上、王国側の人間という事になるのぅ。まぁ正直王国なんぞどうでも良いがの」

「何を言っているのだ?お前がどこの誰であろうと構わない。重要なのは我々の邪魔をするのかどうか、と言う事だけだ」

「その問いであれば邪魔はしない、と答えるのが妥当だろう。儂はこんなガラクタにも役にも立たん冒険者にも用は無い。むしろお前達が儂の邪魔をするかどうか、それが重要なんじゃ。分かるな?」

「おいじいさん、そりゃどう言う意味だ?」

 斧の戦士がバンチ・ヤードに詰め寄る。

「なんじゃ?分からんのか?聞いての通りじゃ、頭の悪い男だのぅ」

「あぁ?なんだと?」

「聞いての通りと言ったんじゃ。儂はお前さんにもこの小競り合いにも興味は無い。なので先を急がせてもらう、そういう事じゃ」

「つまりここを素通りさせろ、と?」

「おぉ、さすがは長生きのエルフじゃ、理解力が違うのぅ」

 バンチ・ヤードは大袈裟に手をぽん、と叩いてみせる。

「ささ、では失礼するかの、気になさらず続きをやっとってくれ」

 バンチ・ヤードは何事も無かったかの様にエルフの横を素通りする。

「通れるとでも?」

 エンシェントエルフは細身の剣の切っ先をバンチ・ヤードの首元へと滑らせる。

「通れるさのぅ」

 そう言った瞬間、するりとエルフの剣をバンチ・ヤードの首がすり抜けた。そして何事も無かったかの様に先へと歩く。

「な……?魔法か……?」

「さぁなぁ?長生きはしても世間知らずと見える。見聞を広めるといいさのぅ。くくくくく……」

 バンチ・ヤードは肩を震わせ笑いを堪えながら歩みを進める。

「おい!じじぃはどうでもいい!クソエルフども!オレ達ぁいいもん見つけたぜぇ!?」

 戦士の大声にエルフが驚き振り返る。

「おやまぁ……これはこれは、いいものを見つけたものだのぅ」

「貴様……!何をするつもりだ……!」

 斧の戦士を見るとその腕には幼いエルフの首が。そして短刀を首に押し付けている。

「坊やよぉ、こんな所ウロウロしてちゃあダメだぜぇ?痛い目見ちまうよぉ?なぁ?」

 斧の戦士はヘラヘラと笑う。

「ユーノ……お前なぜこんな所に……」

「ご、ごめんなさい……ボク薬草を摘みに来てたんだ……そしたら大きな音がしたから……」



「おいおい、なんだかやべぇ事してんなぁ、あいつら」

「そうね、子供を盾にするなんて……何をしてもいいって事は無いわね」

「同感だね。子供は関係無い。ってあれ?あのじいさんどこ行った?」

 バンチ・ヤードがいない。いつの間に……。

「あ、あれミズィさんじゃねぇか?」

 ゼニに言われて見ると、エルフの子供を盾にしている戦士に向かって天パが歩み寄っている。

「あぁたねぇ~、そりゃやっちゃいけないでしょ?ダメダメ、それはダメだわぁ~。そんなんさぁ、その子供に関係無いでしょ?ねぇ?それぐらい分かるでしょおよぉ~?ほら、離しなさい、離しなさいって」

「あんだぁ?お前。魔法調査団の奴らだろ?気がついたらじじいいなくなってんじゃねえか。お前もさっさとどっか行けよ」

「ま!口の悪い!これは育ちも悪いんだなぁ~!嫌だなぁ~!やだやだ!こういうの!失敬だな!」

「だから何なんだよお前。どけ、オレァそこのクソエルフに用があるんだよ」

「じゃああぁたとそこのエルフとでやんなさいよ。ほら、その子離してやんなさい」

「離すワケねぇだろ!見ての通り人質なんだよ!」

「人質、と言ったか人間?その子を傷つけようと考えているなら活かしてはおかんぞ?」

 明らかにエルフの声色が変わる。
 それは意図的に変えたのだろうが、凄みよりも焦りが出てしまっている。これでは逆効果だろう。

「そうそう!何かしたらタダじゃおかないからね!」

「いやお前……エルフの味方かよ」

「エルフの味方とかなんとか無いのよ!どんな理由であれ子供を人質に取る様な輩にはろくな奴いないでしょ!この人でなし!ペッ!」

 ミズィさんお行儀悪い……。でも言ってる事には賛成だな。あのエルフの子供は何も関係ない。

「オレァよぉ、ミズィさんの言ってることがもっとのだと思うぜぇ?なぁ?」

「同感ね、私もあの天パさんの言っている事が正しいと思うわ」

 どうやらオレ達パーティーは全員同意見の様だ。

「うるっせぇんだよ天パ!オレ達人間の邪魔しねぇってんならそこをどけ!エルフ側に着くなら容赦しねぇからな!」

「だぁーかぁーらぁーその子を離せば後はお好きにどうぞって言ってるじゃなぁいのよぉ!バカ!ほんとバカ!あぁた!」

「バカはオメェだぁ!そこのエルフに痛い目見せてやるための人質だろうがぁ!」

「それは関心しないね」

 ミズィさんとギャーギャーやりあっている間に子供を人質に取っている冒険者の背後に忍び寄ったオレは冒険者の右腕を掴む。

「子供を人質に取るなんてなっさけない男ねぇ、あなた」

 驚く冒険者の左腕をアサヒが掴む。

「あぁ、ホントになさけねぇ。お前キンタマ付いてんのかよぉ?」

 そう言って真正面に立ったゼニが子供の顔を躱す様にして強烈なボディブローを冒険者の革鎧の隙間へと叩き込む。

「ごっ……」

 短く嗚咽を漏らし膝を着きそうになった冒険者をオレとアサヒが横から支える。
 ゼニは素早く子供を冒険者から引き離し、革鎧の下から隙間へ手を突っ込み、剥がすように革鎧を上へと捲る。そして顕になった鳩尾へ容赦なくパンチをお見舞いする。その度冒険者は崩れ落ちそうにのるが、オレとアサヒがちゃんと支えてあげた。
 5発殴った所で冒険者は白目を剥いたので解放してあげた。

「あなた下品ね、キン……ゴホン。その、なによ、とにかく表現が下品よ、下品」

「うっせぇなぁ、キンタマぐらいいいだろうよぉ」

「下品!」

 うるさいなぁ。そんな2人はさておき、側で怯えているエルフの子供に声を掛ける。

「大丈夫だった?どこも痛くないかい?」

「……う、うん……ありがとう……」

「うん、どういたしまして」

「あらまあ!トウゴくんとゼニくんじゃなあい!いい仕事するねぇ~!関心だわぁ~!」

 オレ達に気が付いたミズィさんがぶんぶん手を振っている。

「ミズィさんこそ良かったんですか?バンチさん行っちゃいましたよ?」

「いいのいいの!あたし1人いなくたって大して変わらないんだから!」

 ミズィさんは高らかに笑う。

「そこの人間、その子を返してもらおうか」

 エンシェントエルフがオレ達に言う。しかしその手の武器は下げられている。

「ほら、君も仲間の所に行った方がいいよ」

 オレは子供の背中を軽く押す。すると子供は一目散にエンシェントエルフの元へと駆けて行った。

「さて粗暴な冒険者よ、お前達はどうする?人質も無く実力差も歴然だ。しかし今ならこの心優しい人間に免じてお前達も見逃してやろう。どうだ?」

「く、くっそ……!見逃すだって……?何様のつもりだぁ!」

「ちょ!ちょっとお前!それはさすがにやばいって!」

「うるせぇ!やるんだよ!」

 そう叫ぶとその男は背負っていたカバンからボウリングの玉ぐらいの大きさのジンツーグを取り出した。

「やめろって!みんな吹き飛んじまうぞ!」

「うっせえええええ!行くぞぁー!!!」

 男は叫ぶとそのジンツーグをこちらへ転がし、自分達は振り返り一目散に逃げて行った。

「あれ、やばそうじゃない?」

 アサヒの言う通り、オレからしたらあれは爆弾にしか見えない。

「爆発、しそうだよな?あれ?」

「いやああああ!やばぁーいじゃないの!ちょっとどいて!!!」

 ミズィさんが悲鳴を上げながら玉に向かって全速力で走って行く。走りながら持っていた杖を振りかぶる。その杖が魔力を放ち、振りかぶる先に集まり四角い塊を形成する。その塊はどんどんと大きくなり、ハンマーヘッドを形成した。

「どっか行きなさいよ!!!」

 ミズィさんはあの大きなハンマーになった杖を信じられないぐらいのヘッドスピードでゴルフクラブの様に振り抜く。いや見た目はゲートボールか?そして撃ち抜かれた玉は破片を撒き散らしながら逃げて行く冒険者の方へと飛んで行く。
 そして玉は10メートル程飛んだ辺りで激しく光を放った。

「みんな伏せちゃって!」

 ミズィさんの声でオレ達は地面に伏せる。
 その瞬間、玉が爆発、爆音と爆風で辺りを吹き飛ばした。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

FrozenNexus
2024.02.06 FrozenNexus

私は、彼が魔法で彫像を修復し、英雄の名前を知ることを期待していた。

解除

あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

他人のスキルを奪って強くなる。城を抜け出した王子は自由気ままに世界を放浪する

クマクマG
ファンタジー
 王城での生活に窮屈さを感じていた第三王子のラベオン・エンシュリアは王城を抜け出すことを企てる。  王族という縛られた身分では体験できなかったであろう経験を経て、人間としても王族としても成長していくラベオン。個性的な仲間と共にダンジョンを探索したり、クエストを達成したり、はたまた他国に行ったりと自由気ままに旅をする。  人や物のステータスを見ることができる『鑑定眼』、あらゆるモノを盗むことができる『栄光の手』、騙すことに特化した『神の噓』を駆使して、強敵にも挑んでいく。ただ、ラベオンは基本的に善人なので、悪用はしません。……多分。  ラベオンが行きつくのは冒険者としての生活なのか、王族としての生活なのか、それとも……。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。