修復スキルで無限魔法!?

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アサヒとゼニの張り合い

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 「あぁん?オレをぶっ飛ばすぅ?」

「あらぁ?頭も悪そうだけど耳も悪いのかしらぁ?」

「あああぁ~ん???」

 ゼニ、顔が怖いって。怖いけど面白い感じになってるぞ。

「ちょっ!お前らなんなんだ!急に割って入って来たかと思ったらお前!なんなんだよ!」

「「あぁん?」」

 そこでハモるか、アサヒちゃんまで怖い。

「え、いや……えぇ……?」

「お、おい!こいつらのペースに乗せられるな!元々はオレたちがこの女に難癖つけてたんだろ!揉めるならオレらだ!」

「お、おう!そうだとも!お前は引っ込んでろ!アホ面!」

「ぷぷーっ!アホ面だって!ぴったりじゃなぁ~い?」

 アサヒが腹を抱えて笑っている。

「んだとぉ!何笑ってんだ!この貧乳!」

「あぁ!?ついに直接言ったわね!顔のパーツまでアホなくせに!」

「待てって!待て待て!だから相手はオレらだって……」

「「うっせぇ!」」

 いやアサヒちゃん口悪いですよ。

「だいたいなんなんだぁお前ら?さっきからごちゃごちゃごちゃごちゃうるせぇぞ。先にお前らから黙らせるぞ?」

「ははーん?あんたにそんな事出来るのー?獣人相手に?しかもあっちの方が数が多いのに?無理しないでよ!」

 アサヒがまた腹を抱えて笑う。

「よゆーだね!よゆー!まぁお前にゃ無理だろうがな!」

「なぁーにぃー?無理な訳無いでしょ。そもそも1人でどうとでも出来たのに、しゃしゃり出てきたのはあんたじゃない」

「1人で?こいつらを?1人で?笑わせんなよ!ンガハハハハ!!!」

 ゼニ、煽りすぎだぞ……。

「だからお前ら!オレらを無視するな!」

「うるせぇぞ!よぉーし!じゃあ半分こだ!オレが4人、お前も4人相手しようじゃねぇか!やって見せろよぉ~!」

「いいわよぉ~!やろうじゃない!後でタスケテーって言っても助けてあげないからね!」

「あぁー!口が減らねぇなぁ!おい!そこの猿ども!吹っ飛ばしてやるからとっととかかって来い!」

「なんだ……!この!もう許さねぇ!」

 ゴリラが一斉にゼニとアサヒに飛びかかる。よほど頭に血が上っているのか、それともこの獣人の本能なのか、全員拳を振りかぶって襲いかかる。

「まさか素手相手に剣は抜かないわよねぇ?アホ面!」

「ったりめぇだろぉよぉ!お前こそな!貧乳!」

 醜い罵り合いの後、それぞれがゴリラ達とやり合う。アサヒは最初のゴリラの左ストレートを軽く躱しそのまま体を左回りに回転。次に待ち構えていたゴリラが放つ右ストレートを回転の勢いを殺さずに軽く手を添え、拳の軌道を円を描くようにいなす。すると嘘のように軽々とゴリラの巨体が宙を舞う。何が何だか分からず宙を舞ったゴリラは背中を強かに地面に打ち付け苦しそうに悶える。

「なんだ?あれはまるで合気道じゃないか」

 そう、オレもテレビで見たことがある。合気道や柔術と呼ばれる武道の投げ技に似ている。というよりそのものだ。
 その後もアサヒはくるくると体を翻し、相手の力を利用して投げ、打撃は拳では無く掌底、当て身と言うのかな?その一撃は見事に急所を捉え、一見華奢なアサヒが放ったとは思えない程のダメージを与えている。一言で言うと華麗だ。
 それに対してゼニは、なんともまあ……豪快だ。ゴリラのたくましい腕が唸りを上げる一撃が届く前に、ゼニの方から1歩踏み込み前蹴りを鳩尾に叩き込む。見てるだけでお腹の辺りがキュってなるわ。痛そう。腹を抑えて前かがみになるゴリラの後頭部目掛けて両手を組みそれを叩き落とす。これまためちゃくちゃ痛そう。上から叩き落とされたゴリラは顔面から地面に倒れ込み動かなくなった。まさか死んでないよな……?
 さらにゼニは後ろのゴリラに標的を変え、にやりと不敵な笑みを見せる。そしてさらに手のひらを上に向け、ちょいちょいっと呼ぶような動作でゴリラを煽る。

「なめ……やがってぇええ!!!」

 残りの3人がまとめてゼニに向かって突進して来る。不敵な笑みから満面の笑みに変わったゼニが迎え撃つ。1人目の拳を身を沈めて躱しそのまま鳩尾に右アッパーを叩き込む。たまらずうずくまるゴリラの顔面を左フックで殴り飛ばす。その隙を逃さず別のゴリラがゼニの左頬を殴る。しかしゼニの顔は殴り飛ばされる事無く、顔面で殴った拳を受け止めた。

「軽いよなぁ~」

 にやりと笑ったゼニはこちらのゴリラにも鳩尾へ右アッパーを叩き込む。さらに左手で相手の肩を掴み逃げられない様にし、続けて何度も鳩尾へ拳を叩き込む。
 6発殴られた時点でゴリラは嗚咽すら漏らす事も無く膝から崩れ落ちた。

 その後はゼニもアサヒも、見ている側としてはゴリラが可哀想にしか見えない戦いを繰り広げた。しかもお互いに、いかにしてボコボコにしているかを見せつけ合う様に。最悪だ……。

「ずいぶん時間かかったわねぇ~!しかも何発殴られたの?あなた?」

「あんなも殴られた内に入らねぇよお!痛くもなんともねぇから顔で受け止めたんだよ!」

「あらぁ?確かにこれ以上デコボコになっても大差ない顔してるものねぇ~!」

「ああん?お前こそ息が上がってんじゃねぇか?胸の重りはずいぶんと軽いはずなのによ!」

「ああー!また言った!このアホ面!アホ!ヅラ!」

 ずいぶんとまぁ低次元な言い合いだ。地面で伸びたまま放置されてるゴリラが可哀想だ。

「そもそもよぉ~こんなゴリラどもじゃあ相手にもならねぇよ。弱すぎて誰でも倒せちまう」

「あらぁ?苦戦した人が良く言うわねぇ~」

「しつけぇぞお前!よぉーし!じゃあ直接やってやろうじゃねぇか!かかって来いよ!」

「いいわよぉ~!今すぐここで実力の違いを教えてあげるから!」

「ちょ!待ちなよ2人とも!」

 さすがに仲裁に入るオレ。

「「ひっこんでろ!!!」」

 うわわわ、酷い。

「ひっこんでろは無いだろ。2人とも周り見てみなよ、みんな引いてるぞ?」

「ぐ……」

 周囲の目に気が付いたアサヒが苦い顔をする。

「なんだよ!皆さんちょっと待ってろ!今すぐこいつに痛い目見せてやるからよぉ!」

 違うゼニ、そうじゃない。

「まだ言うか!アホ面!私はこの後エンシェントエルフの討伐依頼に参加するから変に拳を痛めたりしたくないの!あんたみたいな無駄に硬い頭を殴って怪我でもしたらどうしてくれんのよ!」

「たかがそれしきの事で、その程度の依頼もこなせないお前がやわなんだよ!」

「ははーん?エンシェントエルフの討伐依頼が?その程度の依頼?その程度ってどの程度よ?あんたのぶら下げてるギルドカード、メガ級じゃない。あんた程度じゃ生きて帰れない程の依頼なの!」

「あぁ!?オレ様が生きて帰れない!?バカ言うな!よゆーだよゆー!そんなもんな!」

「言うじゃない!じゃああんたも依頼受けたらいいわ!あの依頼は受けるのに特別条件も無いはずよ!あんたみたいな弱小冒険者でも受けようと思えば受けることが出来るわよ!まぁビビって受けれないでしょうけど!」

「よゆーだし!よゆー!受けようと思ってたとこだし!むしろぜってー受けるし!むしろもう受けてるし!」

「はっはーん!もはや意味不明ね!意味不明!意味不明ヅラしてるわよあなた!」

 いや意味不明ヅラが意味不明なんだけど?

「おおっし!その討伐依頼とやらで目にもの見せてやらぁ!まだギルド開いてんだろ!今すぐ行ってくらぁ!なぁトウゴ!」

「いやお前……ちょっ!お前それついさっきミズィさんにやめとけって言われたやつ……!ちょちょ!ちょっと待ってぇ~……」

 オレは首根っこを捕まれ、引きずられながらその場を後にした。
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