修復スキルで無限魔法!?

lion

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ボヤく人

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  「お姉さん!何があるんですか!?あ!お酒は入って無いやつでお願いします!」

「あらぁ、元気ねぇ坊や。お姉さんそういうの嫌いじゃないわぁ~。じゃ、このギルド自慢のリンゴジュースなんていかがかしら?」

「リンゴ!リンゴあるんだぁ!しかもジュースもあんだ!それがいいです!」

「じゃあそれ2つ……」

 何やらゼニが頭抱えてるぞ?ははぁーん?思春期だなぁ?このお姉さん美人で色っぽいもんなぁ。分かりやすい奴だ。

「はぁい、お待たせ。ここのリンゴジュースは美味しいわよぉ~」

 どれどれ、ファンタジー感全開の木のジョッキに入れられた、この世界のリンゴジュースをひと口飲んでみる。

「う、うまい」

「でしょでしょお~?ここのリンゴはねぇ、誤ちの森付近で取れるリンゴなのぉ。あそこは獣も魔獣もあまり寄り付かないから、上質の完熟リンゴがたくさん取れるのよぉ。その代わり取りに行くのがちょおっと危険なのよねぇ。だから常駐の依頼としてリンゴの採取があるのよぉ」

 なるほどそういう事か。しかし本当にうまいリンゴジュースだ。いやこれ完全にリンゴジュースなんだよな。てことはこの世界でもリンゴはリンゴで、ジュースはジュースなんだな。

「そんなにうめぇか?オレぁリンゴのままかじった方がうめぇと思うけどなぁ?」

「それもうまいと思うんだけど、なんて言うの?異世界でも元々知ってる物に出会えた感動ってのもあるんだよ」

「そんなもんかねぇ」

 ゼニがチビチビジュースを飲みながら呟く。

「だぁからぁ!後でちゃんとお金持ってくるって言ってるでしょーよ!あぁたずいぶん頭硬いんだねぇ~!あーもう!これだからこの国はよそ者に冷たいって言われちゃうんだよお!」

 何やら解体カウンターのおじさんが男の人と揉めてるのが聞こえて来た。

「いやだからよぉ、あんた……オーヨウさんだっけ?うちは取り置きや予約なんてなぁやってないんだよ、ギルドだからな。ギルドは全ての冒険者に平等じゃなきゃならねぇ。あんただけ贔屓にって訳にも行かねぇのさ。なんだったらあんた、別に常連でもなんでもねぇだろ?」

「まあぁ~これだ!それは遠回しに常連だったら贔屓してやるよって事でしょー!?あーこれだ、あーギルドってこうだ。どこもギルドはこうなんだ!やだやだ!すぐ足元見てくるわぁ~!」

「なんだあんた、めんどくせぇな」

「めんどくさい!あぁ!めんどくさいの一言で片付けられる!?あーこれだ、冷たいわぁあ~」

「ずいぶんボヤくな、あいつ」

「あぁ、ボヤくなぁ。ありゃおじさんもめんどくさいだろうに」

 オレとゼニは同意見だ。ボヤく人はちょっと猫背で細身の長身。歳は20代半ば辺りか?ありゃーイケメンじゃあ無いがブサイクって事も無い。可もなく不可もなくの縦長の顔に、割とガッツリ目の天然パーマの黒髪が乗っかっていた。

「天然パーマだな、ありゃ。ずいぶんとガッツリ目な天パだなぁあいつ」

「え?この世界でもあのチリチリは天然パーマって言うの?て事は天然じゃないパーマもあるのか?」

「あるぜ、パーマ。割とおっきな街の美容室じゃねぇとやってくれねぇけどな。なんか特殊な薬草の汁とジンツーグ使ってチリチリにしてくれるんだと。後逆にあいつみたいな天然のチリチリを真っ直ぐに直すストレートパーマなんてものあるらしい。でもジンツーグを使うとはいえ、なんか特別な魔法が使えないと出来ないらしいから、どこでもやってもらえるって訳じゃねぇらしいぜ?」

 すげぇ、この世界侮りがたし。

「わぁーったわ!とにかく!お金ね!お金!用意するから!急ぐし!そしたらその女王コドクグモの毒袋売ってちょうだいよ!絶対!」

 あ、オレらの持ち込んだ素材が欲しかったのか。

「そりゃもちろんだ。この上物がたったの50万エルだ。安い買い物だぜ」

「たっかい!たっかいわよ!そんなもん!どこが良心的な価格だよ!」

「誰が良心的なんて言ったよ……。だいたいこんなもん、何に使う気なんだ?」

「そんなもん決まってんでしょうよぉー……これがあれば……少量なのに一発で息の根止められる最っ高の毒が作れるでしょうよ……。そしたら……あのめんどくさい依頼主もろとも……くゅっくゅくくくく……」

 最後の変な声は笑ったのか?なんか面白い奴だなぁ。よく分からないけど、変なボヤく人は急いでギルドを出ていった。たぶん急いでお金を工面してくるんだろう。てかあんな毒、他に欲しい人いるのかな?

「はぁー……。おいお兄ちゃん達、待たせたな。書類が用意出来たから手続きと金の受け渡しだ」

 解体のおじさんに呼ばれたオレたちはリンゴジュースを一気に飲み干し、ジョッキをお姉さんにお返しして解体カウンターに向かう。なんと驚く事にこの世界でも食器はセルフで返却台に戻すのが常識だそうだ。

「ほれ、これとこれにサインくれ。で、お前さんのメガ級の冒険者カードをこれにかざしてくれ。とりあえず金は全部こっちのお兄ちゃんのカードに振り込んじまっていいんだな?」

「いいよなトウゴ?後でお前の冒険者カード作ったら半額移してやるからよ」

「え?ちょっと待って、冒険者カードってそんな事出来んの?」

「あったり前だろ?何言ってんだお前?まさか札束や硬貨を大量に持ち歩くなんて事ねぇだろ?そのために冒険者ギルドを利用するんだろうが。そしたら世界中のどこの冒険者ギルドでも金を降ろしたり預けたり出来るんだよ」

 えぇ?そんな銀行のカードみたいな事出来んの?すっげぇじゃん、しかもカードかざすだけとか。どんな仕組みになってんだ?これも魔法なんて言葉で片付けられちゃうの?

「ま、分かんねぇ事は後でカード作る時に受け付けの人に聞いてみろよ。まぁあんま聞く人なんていねぇけどな」

 ゼニに笑われた。なんか癪だなぁ。とにかくおじさんとゼニのやり取りを横で見てみる。書類2枚にサインして、その後ゼニのカードをカウンターの上にある鉄製っぽい機械にかざす。

「これもジンツーグ?」

「そそ、そう言うこった」

 なるほどな……。ジンツーグって思ったよりも幅広い。ファンタジーなアイテムからこんな機械っぽい物まで、何から何までジンツーグの一言で片付けられるっぽい。本当に同じ技術で作られているんだろうか?ゼニもそうだが、他の人は当たり前になり過ぎて気にならないんだろうが、初めて見るオレには違和感しかない。とてもじゃないがスクロールとこのカードの機械は同じ技術で作られてるとは思えないんだけど……。

「ありがとな、おっちゃん。ほれトウゴ、終わったぞ」

「え?もう終わったんか?明細とか出て来ないの?」

「メイサイ?なんだそりゃ?これ以上はなんも出てこねぇぞ?心配すんな、ちょろまかしたりしねぇよ」

「なんだ、良くわからんお兄ちゃん達だな。とにかくまた用があったら来な。オレぁだいたい居るからよ」

 オレとゼニはぺこりとおじさんに頭を下げカウンターを後にする。

「で、次はお前の冒険者登録すんだろ?あっちのカウンターだぜ」

 おぉ!ついに……

「だからニヤニヤすんなって……。あ、お姉さん、こいつの冒険者登録お願いしたいんですけど」

「はい!冒険者登録ですね?ギルドへの登録は初めてですか?」

「?どゆことですか?冒険者は登録してないんで初めてですけど?」

「いや……ほら、商人ギルドやなんかに登録した事あるのかな?って事ですよ」

「あぁ!無いです無いです!完全にすっかり初めての体験です!」

「すいません……こいつ全然知らなくて……」

 ゼニが頭抱えてるぞ?なんだよ。

「大丈夫ですよ、分からない事は何でも聞いてくださいね」

「なんでも!?聞きます!お願いします!」

 めっちゃ興味ある!
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