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3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

チノ・リリルナ

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 チノにとって、フィアラとは、才能の塊であった。

 チノは自身の恩恵ギフトを世間には公表していない。必ず明かさなければいけない理由もないが、チノの場合は特に隠蔽している。

 そんなチノの恩恵ギフトの主な能力は、変身と鑑定だった。

 だが、変身は滅多に使わない。あれは、本気でパフォーマンスをする時だけに使い、それはまだ家族の前でしか見せていない。

 ならば、鑑定はどうか。鑑定は、才能の鑑定だった。

 チノの恩恵ギフトの名称は【可憐な姫】である。この恩恵ギフトは正しく運命がチノにパフォーマンスになれと言っているようなものであった。

 変身の効果は衣装と雰囲気の変化。衣装は簡単に、自分に似合うコスチュームに変身できる効果。そして雰囲気は、その衣装に合わせて自身の魅力を引き立たせる効果である。

 勿論、戦うことを意識すれば戦闘衣装になる。だが、チノはこれをパフォーマンス衣装として最大限活用することにしている。

 だが、チノにはそんなものを使わなくてもいいほどの才能があった。
 だから、自分の才能と努力でパフォーマーの頂点であるマスタークラスまで辿り着けたのだ。

 だが、チノはソロである。コンビでパフォーマンスに出場したことは無い。
 誰かと一緒にパフォーマンスをすること。それはチノがまだスーパーランクの時から事務所にも言われ続けていたこと。

 だから、チノは探した。最高の相棒を。そこでチノは第二効果である鑑定を使用した。
 鑑定は、対象の才能を覗き見ることが出来るものだった。
 その鑑定を使って、チノはパフォーマンスに才能がある子を探し、声をかけ続けた。

 そして4人ほど声をかけても、誰もチノの元へは辿り着けなかった。

 そんな時だった。フィアラを見かけたのは。
 一目見て、鑑定して、直感で理解した。
 この人は、私をも超える、と。

 だから、一緒にパフォーマンスをしたくて、声をかけた。


■■■


「うーん………」

 フィアラが布団の上で伸びをしている姿をチノは静かに見つめる。

「遂に明日昇格戦だね~」

「そうだね」

 そう。はじめて二人でステージに立ってからもうそれだけの月日が経過した。
 あの後、二人の点数はマスタークラスの二人すらも凌駕しており、昇格戦への招待状を獲得したのだ。

「楽しみだね!チノ!」

 そんな楽しそうな目をするフィアラを見て、今のチノの内心は、安堵で溢れていた。

 フィアラは確かにパフォーマンスは綺麗だった。だが、その瞳に覇気が点っていなかった。

 そして、短い時間だが、接していてわかったのだ。
 フィアラには別の目的があり、パフォーマンスはそのための手段でしかない、と。

 元々チノの洞察力は高い。だからこそ導き出した答えだった。

「じゃあ、明日もはやいし寝よっか!」

 チノがそう言って魔石灯に手をかけると、フィアラは返事をしながら布団に入った。
 その様子を微笑ましく見ながら、チノは光を消す。

(いつ、話してくれるのかな)

 チノは、フィアラが悪人とは思えなかった。
 だけど、はじめて見て、名前を聞いた時から一つだけ聞きたいことがあった。

 チノはまたフィアラを鑑定する。
 鑑定結果は脳内に自動的に表示され、そこのとある部分にはこう書いていた。

 レベッカ・ルーズ、と。
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