家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

母親に部屋を荒らされた時の感想をどうぞ！

　ヴァインヒルトは、レベッカが消えたあとを静かに見ている。

「転移魔法、か………？」

　だとしても疑問は残る。なぜ、先程の戦闘中に使わなかったのか。
　屋敷の罠に一つも引っかからずにここまで侵入できたのだから転移魔法を使えることは確実だ。ならば、手順が必要だということ。
　まだ完璧に転移魔法を操れていないのであれば、数秒集中しなければ使えないはず。だが、レベッカにそのような隙は与えていなかった。だとすれば、

「戦闘しながら、準備していた………？」

　だとすれば、それはレベッカがヴァインヒルトの全力で戦っていなかったという意味になる。
　そして、レベッカが本当に咆哮で怯んでいたのであれば、転移魔法は完成せず、斬られていたはず。つまり、

「あいつは、転移魔法の準備させしていなければ、私の咆哮の影響も受けなかった、か………」

　そうなると、ますます危うい。【完全再生】のゴリ押しで倒そうと思ったが、アイトが育てただけあり、かなり厄介だ。

「だが、倒せる」

　だから、殺しに行く。

「レベッカを殺すのは、私と決まっているからな」

　せめて民のいない場所をと願いながら、ヴァインヒルトは進む。


■■■


「ふぅ………」

　転移魔法でヴァインヒルトから逃れることに成功したレベッカは、適当な場所に転移していた。

　咄嗟に転移魔法を発動したため、場所はそこまで離れていない。一応街の外には出ているが、本当に少しすればヴァインヒルトが来てもおかしくない場所だ。

「取り敢えず、離れないと………」

　ヴァインヒルトを無理矢理突破する必要は無い。手紙は手に入れたのだ。これで真相に一歩近づく。そう思い移動したところで

「………誰？」

　近くの茂みから人の気配を感じとったレベッカは、咄嗟に警戒態勢をとった。

　茂みを見つめるが、そこにいるはずの人物は何故か出てこない。
　レベッカが試しに軽く殺気を当てると、観念したのか、ガサガサと音を出してから出てきた。

　その出てきた意外な人物に、レベッカは思わず警戒を一瞬解いてしまう。

「………え？お母、さん？」

　出てきた人物、レベッカの母エリザベスは、静かに微笑んだ。