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二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

自分本位を極めましょう

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 手紙が届いてはや三日。レベッカの生活は何も変わらなかった。

「拍子抜けって感じだね………」

 初日こそ警戒していたレベッカも、2日目には緩み、3日目には完全に警戒しなくなってしまった。
 それでも、一応の警戒なのか、はたまた外への憧憬なのか、窓の外を見ることは辞めない。

「はぁ………」

 レベッカが最後に屋敷の外に出たのは社交界の日だ。
 社交界が終わってからは、お風呂以外では部屋の外に出ることも無くなってしまった。

「ため息を吐いてると、幸せが逃げますよ?」

 屋敷での仕事を一通り終わらせたアイトはレベッカの部屋で新しく買ってきた本を読んでいる。

「………それもそうだね」

 レベッカは立ち上がると、部屋の中でクルンと回った。

「なにがあるのかわからないし、福を貯めといてもいいよね」

 そう言ってベッドに倒れたレベッカを一瞥しながら、アイトは読んでいた本を閉じた。

「では、行きましょうかレベッカ」

「へ?行くってどこに?」

 急に出かけると言われたレベッカは疑問符を浮かべながら問いかける。

「もちろん、買い出しです」

 アイトにそう言われて、折角なので外に出てきたレベッカ。

「では、レベッカはこれをお願いしますね」

 街の中にある、噴水前でレベッカはアイトからお金とメモを渡された。

「え?なにこれ………」

「何って………買ってきて欲しいものリストですよ」

 メモには3種類くらい書かれていたが、問題はそこではない。

「なんで私も?」

「レベッカにとってもいい経験になると思いましたので。こんな機会、滅多にないでしょう?」

 まあ、機会が少ないのは事実だ。だけど、

「今じゃなくても………」

 レベッカは思わず不満を零してしまう。ただでさえ不気味な手紙が届いて狙われている可能性があるのだ。
 それに、街の人達がレベッカを虐めない理由にはならない。

「えっと、買うものは………醤油と、キャベツと、砂糖、かな?」

 醤油は、味噌の専門店に何故か置いていた筈。キャベツは八百屋に。砂糖は調味料専門店に置いていた。

「お醤油も調味料のお店で買えばいいのにね」

 でも、お味噌の店の醤油が美味しいことはわかっているので、気にしないことにした。
 歩いて数分。レベッカは無事に味噌の店に辿り着いた。

「すみません。お醤油ください」

「はーい」

 お店に入って直ぐにそう言うと、お店の人は嫌な顔一つせずにお醤油を持ってきてくれた。

(商売魂すごいなぁ)

 いつもこんな笑顔を浮かべているのだろうか。人の良さが伺える。

「はい。屋敷の人にもよろしくね」

 そう言われてレベッカは醤油を受け取ったのだが、疑問が出てきた。

「あれ?なんで私が屋敷の関係者と?」

「だって、あなたレベッカ様でしょ?屋敷に住んでる」

 お店の人のその言葉に、レベッカは驚愕する。まさか自分のことを知っているとは思わなかったのだ。

「えっと………」

 そこでレベッカは言葉に詰まる。
 自分のことを知っている。即ち、自分の恩恵ギフトのことも理解しているはずだ。

「もしかして、気にしてるのかい?」

 お店の人の言葉で、レベッカはビクッとする。

「じゃあ、問題ないね」

「………え?」

 もしかしたら、追い出されるかもしれない。そう思ったのだが、お店の人は以外にも問題ないと言い切ったのだ。

「そんなに他人を思いやれる子が、悪人なわけが無い。私は、これでも人を見る目はあるつもりだよ?だから、私はあんた個人になにかを言うつもりは無い」

 お店の人はニッコリと笑うと、レベッカに言った。

「辛いことも苦しいこともあるかもしれないけどね、最後には幸せがあるかもしれないんだ。だから、頑張んなさいよ」

 お店の人の慈愛のこもった声を聞くと、レベッカの心が暖かくなってきた。

「あ、ありがとうございます!」

 人の温もりに触れ、ルンルン気分のまま、レベッカは次の店へと向かった。
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