上 下
25 / 111
二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

ぶっちゃけ目覚ましセットしても眠過ぎて二度寝するよね

しおりを挟む
 2人だけのデートが始まった。
 生まれ育った街故に行く場所が無くなると心配する可能性もあるが、この街は存外広く、そしてレベッカが産まれてから街に出ることが非常に少なかったこともあり、行く場所には困らなかった。

 つい先日街全体が燃えたとはいえ、あれはたった一人の人間が起こした事件。そのため、見た目の割にそこまで燃えていなかったのだ。
 そのため、街はもう完全に復活していて、安全にデートすることが出来るのだ。

 遊園地や水族館といった、メジャーなデートスポットこそないものの、それなりに行く場所はある。

 そして現在2人はカフェにいた。

「落ち着く雰囲気のカフェだね………」

「はい。僕も久しぶりに来たのですが、変わっていなくてホッとしています」

 レベッカとアイトはゆったりと珈琲を飲んでいる。
 このカフェ、お客の人数こそ少ないが、珈琲も美味しく、ゆっくりと落ち着ける雰囲気になっている。仕事に忙しい人にはピッタリだ。

「このお店は軽食も美味しいのですよ。朝食、食べていないでしょうしレベッカもどうですか?」

 レベッカはそう言われて、手渡されたメニューを見る。
 パスタやサンドイッチなど、カフェにはよく見かける軽食が数点並んでいる。最も、レベッカはカフェには行ったことはないのだが。

「じゃあ、私はこれで」

 初めて来た店なので、おすすめのサンドイッチをレベッカは選んだ。
 アイトがレベッカの選んだメニューを確認すると、静かに手を上げ、店員がやってきた。

 注文を終えると、店員は奥へと行った。その一連の流れにレベッカは見惚れてしまった。

「どうしたんですか?レベッカ」

 固まって動けなくなっていたレベッカに、アイトが話しかけたことによってレベッカの時が動き出した。

「やっぱり、アイトってカッコイイね!」

「………いきなりどうしたんですか?」

「ううん。ちょっと、そう思っただけ」

 注文している時のアイトは、まさにデキる男というイメージだった。

「ねえアイト。お昼まではどこに行くの?」

「そうですね………折角なのでブティックなどどうでしょうか」

 ブティック。それは基本的にオシャレな服や小物なんかを置いてある店だ。

「え?でも、ブティックって高いんじゃ………」

「お金のことなら心配しないでください」

 アイトがそう言っても、レベッカの中では心配は残る。
 ただでさえレベッカに持ち合わせはなく、アイトに色々買ってもらってるというのに。

「僕は、レベッカが今日を笑顔で過ごせてくれたらそれで一番なんですから」

「………ずるいよ」

 アイトの言葉に続いたレベッカのその小さな呟きは、アイトには聞こえなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】出戻り令嬢の奮闘と一途な再婚

藍生蕗
恋愛
前夫との死別で実家に帰ったブライアンゼ伯爵家のレキシーは、妹ビビアの婚約破棄の現場に居合わせる。 苦労知らずの妹は、相手の容姿に不満があると言うだけで、その婚約を望まないようだけど。 ねえ、よく見て? 気付いて! うちの家、もうお金がないのよ?? あなたのその、きんきらきんに飾り立てられたドレスもアクセサリーも、全部その婚約相手、フェンリー様の家、ラッセラード男爵家から頂いた支度金で賄っているの……! 勘違いな妹に、貴族の本分を履き違えた両親。 うん、何だか腹が立ってきたぞ。 思い切ったレキシーは、フェンリーに別の相手を紹介する作戦を立てる。 ついでに今までの支度金を踏み倒したいなんて下心を持ちつつ。 けれどフェンリーは元々ビビアと結婚する気は無かったようで…… そうとは知らずフェンリーの婚活に気合いを入れるレキシーは、旧知の間柄であるイーライ神官と再会する。 そこでイーライとフェンリーの意外な共通点を知り、婚約者探しに一役買って貰う事にしたのだが…… ※ 妊娠・出産に対するセンシティブな内容が含まれます ※ 他のサイトでも投稿しています

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします

リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。 違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。 真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。 ──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。 大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。 いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ! 淑女の時間は終わりました。 これからは──ブチギレタイムと致します!! ====== 筆者定番の勢いだけで書いた小説。 主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。 処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。 矛盾点とか指摘したら負けです(?) 何でもオッケーな心の広い方向けです。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

処理中です...