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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。
天才になりたいとは思わないけど、道化になりたいとも思わない
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「つい、殺っちゃった」
レベッカはその一言が今までのどの言葉より恐怖した。
つまり、ステラは無意味にこの人たちを殺したのだ。
「だからね、レベッカ。私はもう、戻れないかな。レベッカが優しくしてくれたことは嬉しかったよ。でも、私はもう、殺人の快楽を覚えちゃった」
だからもう、戻れないと。
これはステラなりの警告でもあるのだろう。
もう、ここまで来たらステラに後戻りするという選択肢はない。
だから、
「なんのつもり?レベッカ」
レベッカは魔法を展開する。
「まだ、終わらせたりしない!ステラを、見捨てたりなんてしないから!」
アイトがレベッカを救ってくれたみたいに。見捨てなかったみたいに。
「私が、ステラを救ってみせる!」
レベッカは勢いよく宣言した。
「じゃあ、やってみてよ」
ステラのその言葉と同時に、レベッカは動き出した。
「"魔力拘束"!」
人間の身体の中には魔力が巡っており、その魔力の循環を阻害することによって身体の動きを鈍らせることが出来る。
そしてレベッカが発動した魔法は魔力の循環を完全に止めることが出来る超高等魔法。故にステラに当たればステラを殆ど完全に拘束することができた。
当たれば、の話しだが。
「発動、しない………」
レベッカの魔力が消費される感覚はあった。
だが、待てど暮らせど魔法は発動されない。
「残念。手はうたせてもらったから」
そうレベッカに言ったのはステラだった。
「なに、したの?」
驚愕しながらも、極めて冷静にステラに問いかける。
すると、ステラは呆気なく正体を明かした。
「黙って拘束されるのは嫌だから、範囲内の魔法による干渉を無効化させてもらったよ」
「無効化?」
「そう。レベッカも恩恵、貰ってるでしょ?これは私の恩恵の効果」
恩恵。それはこの世界の住人であれば、誰もが持つ力。
5歳になると同時に、教会や領主邸に保管されている特殊な水晶を用いることにより明らかになる力だ。
「私の恩恵は【選別領域】。私を中心とする一定範囲内では私が許可したものしか形を保つことが出来なくなるの」
「そんな………」
つまり、魔法が発動しないということは、魔法の存在をステラは否定しているということ。
「レベッカは接近戦ができないわけじゃない。けど、苦手。基本的に魔法を使って戦う。だから、私はレベッカの得意な魔法を封じる。封じて、戦う」
ステラはナイフをレベッカに向けながら歩いてくる。
「今ならまだ間に合う。引いて?私はレベッカを殺したいって思ってないから」
これが最後の警告だろう。脅しとも言える。
もう、逃げられないぞと。
だが、これは
「ああ、やっぱり」
慈悲とも言える。
「優しい」
レベッカは一歩、ステラに近づく。
「………逃げないの?」
「逃げないよ。今逃げたら、ステラがもう、戻れなくなると思うから」
その言葉の意味がステラにはわからなかった。
「もう戻れない?私はもう、戻れないよ?」
「ううん。ステラはまだ戻れる。だって、まだこんなに優しいもん」
ステラは最後までレベッカを関わらないようにしていた。
レベッカに相談したらレベッカは全力で力になってくれるとわかっていた。けど、この件に関わらせたくなかったから。
最後まで逃げるように言った。これは殺したくない。それは本心だろう。だが、ステラが完全に快楽殺人鬼になっていたら、こんなこと言わない。
「ステラには、まだ優しい心が残ってるから。だから、私がそれを失わせたりしない!」
もう恐れたりしないように。
「私が、ステラを助けるから!」
レベッカは確固たる意思でステラに言った。
「絶対に、ステラを見捨てたりしないから!」
レベッカはその一言が今までのどの言葉より恐怖した。
つまり、ステラは無意味にこの人たちを殺したのだ。
「だからね、レベッカ。私はもう、戻れないかな。レベッカが優しくしてくれたことは嬉しかったよ。でも、私はもう、殺人の快楽を覚えちゃった」
だからもう、戻れないと。
これはステラなりの警告でもあるのだろう。
もう、ここまで来たらステラに後戻りするという選択肢はない。
だから、
「なんのつもり?レベッカ」
レベッカは魔法を展開する。
「まだ、終わらせたりしない!ステラを、見捨てたりなんてしないから!」
アイトがレベッカを救ってくれたみたいに。見捨てなかったみたいに。
「私が、ステラを救ってみせる!」
レベッカは勢いよく宣言した。
「じゃあ、やってみてよ」
ステラのその言葉と同時に、レベッカは動き出した。
「"魔力拘束"!」
人間の身体の中には魔力が巡っており、その魔力の循環を阻害することによって身体の動きを鈍らせることが出来る。
そしてレベッカが発動した魔法は魔力の循環を完全に止めることが出来る超高等魔法。故にステラに当たればステラを殆ど完全に拘束することができた。
当たれば、の話しだが。
「発動、しない………」
レベッカの魔力が消費される感覚はあった。
だが、待てど暮らせど魔法は発動されない。
「残念。手はうたせてもらったから」
そうレベッカに言ったのはステラだった。
「なに、したの?」
驚愕しながらも、極めて冷静にステラに問いかける。
すると、ステラは呆気なく正体を明かした。
「黙って拘束されるのは嫌だから、範囲内の魔法による干渉を無効化させてもらったよ」
「無効化?」
「そう。レベッカも恩恵、貰ってるでしょ?これは私の恩恵の効果」
恩恵。それはこの世界の住人であれば、誰もが持つ力。
5歳になると同時に、教会や領主邸に保管されている特殊な水晶を用いることにより明らかになる力だ。
「私の恩恵は【選別領域】。私を中心とする一定範囲内では私が許可したものしか形を保つことが出来なくなるの」
「そんな………」
つまり、魔法が発動しないということは、魔法の存在をステラは否定しているということ。
「レベッカは接近戦ができないわけじゃない。けど、苦手。基本的に魔法を使って戦う。だから、私はレベッカの得意な魔法を封じる。封じて、戦う」
ステラはナイフをレベッカに向けながら歩いてくる。
「今ならまだ間に合う。引いて?私はレベッカを殺したいって思ってないから」
これが最後の警告だろう。脅しとも言える。
もう、逃げられないぞと。
だが、これは
「ああ、やっぱり」
慈悲とも言える。
「優しい」
レベッカは一歩、ステラに近づく。
「………逃げないの?」
「逃げないよ。今逃げたら、ステラがもう、戻れなくなると思うから」
その言葉の意味がステラにはわからなかった。
「もう戻れない?私はもう、戻れないよ?」
「ううん。ステラはまだ戻れる。だって、まだこんなに優しいもん」
ステラは最後までレベッカを関わらないようにしていた。
レベッカに相談したらレベッカは全力で力になってくれるとわかっていた。けど、この件に関わらせたくなかったから。
最後まで逃げるように言った。これは殺したくない。それは本心だろう。だが、ステラが完全に快楽殺人鬼になっていたら、こんなこと言わない。
「ステラには、まだ優しい心が残ってるから。だから、私がそれを失わせたりしない!」
もう恐れたりしないように。
「私が、ステラを助けるから!」
レベッカは確固たる意思でステラに言った。
「絶対に、ステラを見捨てたりしないから!」
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