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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

さあ進むぞ!と勢いよく乗り込んだけど、実は無策だと乗り込んでから気がつく無能と嘲笑う君

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 街で一番大きな屋敷の中で、それは起こった。

「あぐっ」

 一人の少女が、そんな呻き声を上げながら床に倒れる。
 お腹を抑えていることから、お腹を痛めていることは一目瞭然だ。そして少女の近くには、お腹を抑えながら、身体を丸め床に転がっている少女を見下す、使用人の装いをした女が一人。

「たく………なんで私がこんなやつの………」

 その使用人らしき女………いや、実際にこの屋敷の使用人である女は、そんなことを言いながら持ってきた貧相な食事を机の上に配膳することなく少女の体にぶちまけた。

 少し冷めてしまっていたとはいえ、それなりの温度を保有する食事を体に直接浴びせられれば、誰でも少しは熱がるだろう。
 だが、少女は声を出すことも無くその場に倒れているだけだった。

 多少声を上げて熱がる姿を見たかった使用人はなんの反応もないことを確認すると、その様子に怒りを覚え少女の身体を蹴り飛ばした。

「か、あっ」

 突然の蹴りに対処できるはずもなく、少女の体はまるで重さを感じさせないように中をまい、床に倒れ落ちた。

「ふんっ。あんたはそうして地べたに這いつくばってるその姿が一番お似合いなのよ」

 使用人の女はそれだけ言うと冷めた目で少女をもう一度見てから部屋から退室した。

 使用人の女が退室するのを確認すると、少女は、その場でうつ伏せ状態から仰向け状態になるべく寝返りを打った。

 少女は仰向け状態で窓から差し込むオレンジ色の光に視線を向ける。

 立ち上がろうとするも、先程受けた傷が傷んで上手く動けない。
 だが、そんなものはいつものことだ。そう判断して痛みが治まるのを待つ。

「はぁ………はぁ………」

 相変わらずお腹は痛むが、いつものこと。そう、いつものことなんだ。
 あの使用人だけじゃない。他の誰が来ても、たとえ父や兄、姉が来てもこの結果には変わりがないのだから。

 そう、いつものこと、だから………

「だから、泣いちゃ、ダメ………」

 いつものことだからと。そう我慢しようとしても、どうしても涙が出てきてしまう。

「ダメ、なのにぃ………」

 わかっていても、どうしても涙は零れてしまう。

 この少女の名前はレベッカ。レベッカ・ルーズ。
 この街の領主であるルーズ家の領主の娘である。

 『疫病神』『悪魔の子』『醜穢令嬢』だの、様々な汚名を被せられてきた少女は、今日も一人で静かに涙を流した。
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