妖精が奏でる恋のアリア

花野拓海

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Eランク vs. Cランク

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 最初に動いたのはリンだった。

「疾っ!」

 昇華魔法による全ステータスの上昇。それによってDランク冒険者程度ならば視認することすら困難な速度でリンは駆け出した。
 そしてリンが振るう刃は寸分狂わずゴルドの首元目掛けて振るわれ、

「温いな」

 ゴルドの手に持った剣によって呆気なく止められてしまった。

「チッ!」

 止められた。だが、これは予想の範囲内。元々リンは上級冒険者相手に一撃で仕留められると考えるほど自惚れてはいない。

「【クリエイト・ウォーター】!!」

 だから、策を講じる。リンはそのためにゴルドの足元に水を放ち、泥水へと変異させた。

「その程度で、俺が止まると?」

 だが、ゴルドは関係なしにリンの元へと歩を進める。

「これで止まったら鼻で笑ってやるよ」

 リンは先にそう言って挑発してから、砂を蹴りあげてゴルドにかけた。

「………目眩しか?悪いが、気配感知は持ってるぞ?」

 無駄な抵抗にゴルドは目を瞑りながら砂による目眩しを回避しつつリンを鼻で笑う。だが、リンからしてみればその行動こそが滑稽であった。

「【クリエイト・ウォーター】」

 目を瞑っているゴルドに向かってリンはそこそこの量の水をかけることに成功した。

「ぶっ!?」

 突然水をかけられたことにより驚愕しつつ、タイミングが悪かったこともあり水が鼻に入り込み、ゴルドは少し苦しそうに息を吐く。

「がぁ、はぁ………」

 全身泥まみれのゴルドがそうして空気を鼻から吐き出そうと動きを止めたところで

「【クリエイト・ウォーター】」

 リンは容赦なくもう一発水を放った。

「がぁ!くはぁ………」

 空気を上手く吸えず、苦しみ藻掻くゴルドに向かってリンはもう一発。

「【フリーズ】!」

 今度は水を凍結させるための魔法をゴルドに向かって放った。
 それによって、ゴルドは濡れている体に霜がつき始め、体をガタガタと震わせてしまった。

「いくらお前が強靭な肉体を持っていても、寒さには敵わない」

 だが、リンは油断しない。昇華魔法を使っているとはいえ、相手はリンよりも格上の相手。油断せず、リンはゴルドの体を蹴り飛ばした。

「がハッ」

 上手く空気が吸えず、体は冷えきっている。そこに蹴りを入れられ、空気を吐いてしまったのだ。ゴルドは普通に辛い思いをしていた。
 だが、ゴルドは腐ってもCランク冒険者。この苦しみも一般人よりはマシで、蹴り飛ばされて空気を吐いたことにより一緒に水を吐くことに成功。

「この、やってくれたなクソガキが………」

 ゴルドはリンを睨みつけながら手に持っていた剣を地面に突き刺した。
 傍から見れば無防備。だからリンは攻撃を仕掛けようとして

「!?」

 自分の身体が両断される未来を見て攻撃を中断した。

「勘のいいガキが………まぁ、いい」

 だが、リンが近づいてきたら斬るつもりがあっただけでゴルドの本命はそれではなかった。

「【燃え上がれ、我が魂】」

 短く、されどそれは確かに魔法の詠唱。

「【スカーレット・レグルス】」

 瞬間、ゴルドの身体が発火した。

「さあ、第二ラウンドを始めようか」
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