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Ⅳ.
26.余計な一歩を踏み出して。
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とまあ、そんなわけで、
「ま、俺としては無理に部活動に入るつもりも無いし、真面目に学校に通う必要性も感じてないから、今くらいでいいってわけ。良いだろ別に」
「それはまあ、文句は無いけど……」
「それに、ほら。司だって、俺が運動部に入って、キラキラした目で「目指せ甲子園」とか言い出したら、嫌だろ」
二見は露骨に顔をゆがめ、
「うわっ……見たくない」
「だろ?だから今のままがいいんだよ」
「ふーん……」
二見は暫く考えたのち、
「零くんってさ。面白い話が好きな割には、割と現状維持を望むよね」
「…………君はたまに幼馴染を鋭利な言葉の刃で切り裂いていくね?」
「や、ごめんごめん……そりゃ、言いたいことは分かるよ。運動部っていうか、体育会系のあの感じは私も嫌いだし、文芸部……だっけ?は私もちょっと無いかなって思ったよ。でも、さ。無かったら作ったらいいんじゃないの?なんかよく分からない名前の部活動とか。うち、校則緩いし、いけるんじゃないの?」
「まあなぁ……」
二見の言うことには一理ある。
形だけでも人数を集めるのは面倒だし、そもそも何をするかも決まっていない。そんな状況で積極的に動くほどの熱意が無いだけで、無いなら自分で作ればいいという発想は嫌いじゃない。だけど、
「じゃあ、聞くけど。その部活動の参加者は誰だ?」
「えっと……零くんと、私」
「それ、喫茶二見でよくない?」
「ああー……」
分かっちゃうんだ。
正直屁理屈に近いんだけどな。メンバーが少ないなら、集めれば良いじゃないとか、いくらでも言いようはある。ただ、その辺りは、二見も分かってるんだろうな。俺が興味を持つような面白い人材がそうそう転がってないだろうってことに。
二見がしみじみと、
「零くんが仲良くなるのって、大体年上だよね」
「なにそのいかがわしい感じ」
「零くんって、年上をよく誑かすよね」
「もっと酷くなってるし、明らかに捏造だよね?」
「でも、伊万里さんだって年上だし、大ちゃんだってそうでしょ?うちのパパ、ママとも仲良いし……零くんって仲の良い同年代っていないんじゃないの?」
俺は二見を指さしつつ、
「いや、君君」
ところが二見はそれをさっと避けて、
「ま、もし何かやるんだったら、私もまぜてよ。零くんほどじゃないけど、私も楽しいことは好きだから」
「いや、その前に今のムーブについて詳しく説明が欲しいんだけど」
「さ、今日も勉強頑張ろー」
「明後日の方向を見ながらじゃなくて、俺の目を見て言ってくれる?」
その後も二見はなんだかんだと言い訳をしつつ、自分が俺にとっての「仲の良い同年代」であることを認めようとはしなかった。ま、良いけどね。二見の言いたいことは分かるし。それこそ物心ついたころからの幼馴染をカウントに入れるなってところだろう。確かに反則だしね。殆ど。
と、まあ、そんな下らない会話をしながら、学校にたどり着き、下駄箱から、我らが一年A組の教室前へと差し掛かったところで、
「おや。あれ、星咲さんじゃない?」
「あん?」
二見の指さす方を見ると、確かに星咲がそこに居た。そして、
「うわ、三匹もいるじゃん」
「三人っていいなよ」
「やだよ。あれを人間として認識したくないんだよ、俺は」
「当人たちが聞いたら怒るよー」
「別に構わん。ああいう言動が大きい生命体は、総じて頭が回らんから、大したことはしてこない。してくるとすれば、三対一でリンチくらいか」
「それ、やばいんじゃないの?」
「ま、だからこそ、直接は関わらんのさ。数の暴力で勝っておいて、自分たちが上に居ると勘違い出来る頭の生命体とは関わらないのが得策。覚えておくといいぞ」
「それはどうでもいいんだけど」
「俺のライフハック、どうでもいい扱いされた?」
二見は俺のツッコミを完全無視し、
「なんか揉めてない、あれ」
そう言われて、改めて、やや離れた位置から三匹と一人、計四つの生命体を観察する。なるほど確かにもめている。具体的には星咲対三人といった感じ。ま、そうだろうな。そもそもアイツ、あんな連中とつるむような人間じゃないだろ。どっちかと言えば日陰が似合う、
「ね、ちょっと行ってみようよ」
「え、嫌」
「まさかの拒絶!?」
「いや、だって……死ぬほどめんどそうじゃん。それに、俺、星咲とあの三匹が仲良くしてほしいなんて微塵も思ってないし。というか、思ってたら、昨日の時点で手、貸してるだろ」
「それはそうかもだけど……」
その時だった。
「分かりやすく説明しろよ、頭いいんだろ?」
一瞬だった。
俺は自然を装って、星咲の傍に行って話しかける、
「どうしたよ。揉めてるみたいだけど」
「ま、俺としては無理に部活動に入るつもりも無いし、真面目に学校に通う必要性も感じてないから、今くらいでいいってわけ。良いだろ別に」
「それはまあ、文句は無いけど……」
「それに、ほら。司だって、俺が運動部に入って、キラキラした目で「目指せ甲子園」とか言い出したら、嫌だろ」
二見は露骨に顔をゆがめ、
「うわっ……見たくない」
「だろ?だから今のままがいいんだよ」
「ふーん……」
二見は暫く考えたのち、
「零くんってさ。面白い話が好きな割には、割と現状維持を望むよね」
「…………君はたまに幼馴染を鋭利な言葉の刃で切り裂いていくね?」
「や、ごめんごめん……そりゃ、言いたいことは分かるよ。運動部っていうか、体育会系のあの感じは私も嫌いだし、文芸部……だっけ?は私もちょっと無いかなって思ったよ。でも、さ。無かったら作ったらいいんじゃないの?なんかよく分からない名前の部活動とか。うち、校則緩いし、いけるんじゃないの?」
「まあなぁ……」
二見の言うことには一理ある。
形だけでも人数を集めるのは面倒だし、そもそも何をするかも決まっていない。そんな状況で積極的に動くほどの熱意が無いだけで、無いなら自分で作ればいいという発想は嫌いじゃない。だけど、
「じゃあ、聞くけど。その部活動の参加者は誰だ?」
「えっと……零くんと、私」
「それ、喫茶二見でよくない?」
「ああー……」
分かっちゃうんだ。
正直屁理屈に近いんだけどな。メンバーが少ないなら、集めれば良いじゃないとか、いくらでも言いようはある。ただ、その辺りは、二見も分かってるんだろうな。俺が興味を持つような面白い人材がそうそう転がってないだろうってことに。
二見がしみじみと、
「零くんが仲良くなるのって、大体年上だよね」
「なにそのいかがわしい感じ」
「零くんって、年上をよく誑かすよね」
「もっと酷くなってるし、明らかに捏造だよね?」
「でも、伊万里さんだって年上だし、大ちゃんだってそうでしょ?うちのパパ、ママとも仲良いし……零くんって仲の良い同年代っていないんじゃないの?」
俺は二見を指さしつつ、
「いや、君君」
ところが二見はそれをさっと避けて、
「ま、もし何かやるんだったら、私もまぜてよ。零くんほどじゃないけど、私も楽しいことは好きだから」
「いや、その前に今のムーブについて詳しく説明が欲しいんだけど」
「さ、今日も勉強頑張ろー」
「明後日の方向を見ながらじゃなくて、俺の目を見て言ってくれる?」
その後も二見はなんだかんだと言い訳をしつつ、自分が俺にとっての「仲の良い同年代」であることを認めようとはしなかった。ま、良いけどね。二見の言いたいことは分かるし。それこそ物心ついたころからの幼馴染をカウントに入れるなってところだろう。確かに反則だしね。殆ど。
と、まあ、そんな下らない会話をしながら、学校にたどり着き、下駄箱から、我らが一年A組の教室前へと差し掛かったところで、
「おや。あれ、星咲さんじゃない?」
「あん?」
二見の指さす方を見ると、確かに星咲がそこに居た。そして、
「うわ、三匹もいるじゃん」
「三人っていいなよ」
「やだよ。あれを人間として認識したくないんだよ、俺は」
「当人たちが聞いたら怒るよー」
「別に構わん。ああいう言動が大きい生命体は、総じて頭が回らんから、大したことはしてこない。してくるとすれば、三対一でリンチくらいか」
「それ、やばいんじゃないの?」
「ま、だからこそ、直接は関わらんのさ。数の暴力で勝っておいて、自分たちが上に居ると勘違い出来る頭の生命体とは関わらないのが得策。覚えておくといいぞ」
「それはどうでもいいんだけど」
「俺のライフハック、どうでもいい扱いされた?」
二見は俺のツッコミを完全無視し、
「なんか揉めてない、あれ」
そう言われて、改めて、やや離れた位置から三匹と一人、計四つの生命体を観察する。なるほど確かにもめている。具体的には星咲対三人といった感じ。ま、そうだろうな。そもそもアイツ、あんな連中とつるむような人間じゃないだろ。どっちかと言えば日陰が似合う、
「ね、ちょっと行ってみようよ」
「え、嫌」
「まさかの拒絶!?」
「いや、だって……死ぬほどめんどそうじゃん。それに、俺、星咲とあの三匹が仲良くしてほしいなんて微塵も思ってないし。というか、思ってたら、昨日の時点で手、貸してるだろ」
「それはそうかもだけど……」
その時だった。
「分かりやすく説明しろよ、頭いいんだろ?」
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