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Ⅱ.
17.人間そう簡単には変われないって話。
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その後、大分時間がかかりながら星咲が話したシナリオはこうだ。
自分は元々、中学校でも余り目立つ方ではなかった。
だから、高校からはあか抜けて、友達も作って、学生生活を謳歌したいと思って頑張って変わって、結果彼女らの目に留まり、よく一緒にお昼なんかを食べるようになった。
そこまではよかった。
問題はそこからだ。
ある日。星咲がぽろっと漫画の話に食いつくと、あれよあれよという間に漫画を描いているということがバレ、それなら描いているのを見たいという話になり、三対一という人数に任せた多数決という名の暴力的決議が行われ、星咲はいつも描いている漫画を持ってくることになった。
ところが、星咲がいつも描いているのはとても三匹に見せられないようなもので、それなら新たに描いて、三匹に認められ、友達として付き合いを続けられるようなものを作りたいと思い、異世界転生ものが好きだという情報だけを元に、作成されたのが、
「あれだったってことか」
「…………そう、いうこと」
一連の話を聞いた俺は一息おいて、
「ひとつ、聞いてもいいか?」
「……なによ」
「指さして爆笑していい?」
「駄目に決まってるでしょ!」
そうかー駄目かー困ったなあ。俺は今すぐにでも星咲を指さして「ぷーくすくす」みたいな馬鹿にしきった表情で爆笑して、それに腹を立てた星咲の顔を思いっきり激写してみたい気分なんだけど駄目かぁ。それなら、
「(笑)」
「指ささなきゃ何やってもいいって話じゃないぞゴラお前」
おかしいな。俺は指もさしてないし、爆笑もしてないんだけど。したことと言えば、それはそれはもう「こんなことも分からないの?だっさーい」みたいな顔で、声も出さずに、ただただ鼻で笑い飛ばすことくらいなんだけど、これも駄目なのか。
「いちいち注文の多い奴だな、全く」
「いや、流石にそれは怒ると思うよ?」
仲間だと思っていたはずの二見の裏切りにあう。俺はあくまで平生のまま、
「いや、だって。笑いどころしかなかったんだぞ?お前、爆笑必須の漫才を見せられて、くすっとでも笑ったらキレられたらどう思うよ」
「それは……理不尽だと思うけど」
俺は二見を指さして、
「それ!俺はまさに今、そのキレ方をされてるんだよ」
「え、ええー……」
おかしいな。賛同が得られない。まあ、流石に説明不足だったかもしれない。
俺は改めて、
「星咲」
「な、なによ」
「お前は中学生までは、そんなキャラじゃなかったんだな?」
「なによキャラって」
「セ○レいそうな感じのキャラ」
「そんなキャラじゃないわよ!」
立ち上がって抗議する星咲。その声に対して俺と二見が二人同時に、
「「しー」」」
「ご、ごめん、なさい」
急失速して、再び着席する星咲。その背中の先には明らかに気になってこちらを見たであろう数人の客が、「見てませんよ」オーラと共に明後日の方向に振り返る姿が見えた。ごめんなさいね。この子、ちょっと学習能力が欠落してるみたいなの。
「……そんなキャラじゃないわよ」
「俺は別にお前自身がそうだといったわけじゃない。あくまでイメージの話だ。チャラいチャラくないで言えばチャラくない側だったわけだろ?」
「それはまあ……っていうか今もそうだけど」
「それはお前のメンタリティの話だろ?見た目とか、普段一緒に居る面々からすれば、どっちかといえば頭もお股も緩い側に所属して層に見えるって話だ」
「誰が頭が、」
「「しー」」
「……ぐぐぐぐぐぐぐ」
おお、面白いな。大声を出すと迷惑が掛かるから、出せない。でも腹は立つ。そして腹が立つと言動に出るタイプなんだな。もう何回かからかってやろうかな。
「零くん。今、よからぬこと考えてるでしょ?」
「……何故分かった?」
「なんか楽しそうだった」
「そうか?まあいいや。それより問題は星咲、お前だ。お前は今言ったみたいなゆるゆるのゆるキャラじゃなかったけど、高校に進学する際に、思い切って今みたいなキャラに変えた。それでいいか?」
「……言い方は引っ掛かるけど、まあ概ねあってるわ」
「んで、それは友達を作ったり、その友達と修学旅行を一緒に回ったり、体育祭でちょっと小粋な汗を流してみたり、文化祭で泊まり込みの準備してみたり、そんなきゃぴきゃぴした青春を送るために必死で作った外面。それでいいか?」
「いちいち言葉に棘があるのは気になるけど……大体そういうことよ」
「なるほどな。ところで星咲」
「何よ」
「もしかして気が付いてないかもしれないけど、お前が通っている学び舎はお笑い芸人を目指す人間の養成所じゃないぞ?」
「ボケてるんじゃないわよ!」
「おお、ナイスツッコミ」
「突っ込んでない!!」
「「しー!!」」
「ご、ごめんさない……」
三度目、しかも立ち上がらずに騒音を出してしまった学習能力のなさには流石に当人も恥ずかしさを覚えたのか、随分と縮こまってしまったし、謝る言葉も本気の謝罪だった。
まあ、うん。その大声を出させる要因となったのは全部俺なんだけどね。でもまあ、こんなに煽り耐性が無いのも流石にどうかと思うけど。と、いうか学習しろよ。俺が素直な発言をするわけがないだろう?(開き直り)
自分は元々、中学校でも余り目立つ方ではなかった。
だから、高校からはあか抜けて、友達も作って、学生生活を謳歌したいと思って頑張って変わって、結果彼女らの目に留まり、よく一緒にお昼なんかを食べるようになった。
そこまではよかった。
問題はそこからだ。
ある日。星咲がぽろっと漫画の話に食いつくと、あれよあれよという間に漫画を描いているということがバレ、それなら描いているのを見たいという話になり、三対一という人数に任せた多数決という名の暴力的決議が行われ、星咲はいつも描いている漫画を持ってくることになった。
ところが、星咲がいつも描いているのはとても三匹に見せられないようなもので、それなら新たに描いて、三匹に認められ、友達として付き合いを続けられるようなものを作りたいと思い、異世界転生ものが好きだという情報だけを元に、作成されたのが、
「あれだったってことか」
「…………そう、いうこと」
一連の話を聞いた俺は一息おいて、
「ひとつ、聞いてもいいか?」
「……なによ」
「指さして爆笑していい?」
「駄目に決まってるでしょ!」
そうかー駄目かー困ったなあ。俺は今すぐにでも星咲を指さして「ぷーくすくす」みたいな馬鹿にしきった表情で爆笑して、それに腹を立てた星咲の顔を思いっきり激写してみたい気分なんだけど駄目かぁ。それなら、
「(笑)」
「指ささなきゃ何やってもいいって話じゃないぞゴラお前」
おかしいな。俺は指もさしてないし、爆笑もしてないんだけど。したことと言えば、それはそれはもう「こんなことも分からないの?だっさーい」みたいな顔で、声も出さずに、ただただ鼻で笑い飛ばすことくらいなんだけど、これも駄目なのか。
「いちいち注文の多い奴だな、全く」
「いや、流石にそれは怒ると思うよ?」
仲間だと思っていたはずの二見の裏切りにあう。俺はあくまで平生のまま、
「いや、だって。笑いどころしかなかったんだぞ?お前、爆笑必須の漫才を見せられて、くすっとでも笑ったらキレられたらどう思うよ」
「それは……理不尽だと思うけど」
俺は二見を指さして、
「それ!俺はまさに今、そのキレ方をされてるんだよ」
「え、ええー……」
おかしいな。賛同が得られない。まあ、流石に説明不足だったかもしれない。
俺は改めて、
「星咲」
「な、なによ」
「お前は中学生までは、そんなキャラじゃなかったんだな?」
「なによキャラって」
「セ○レいそうな感じのキャラ」
「そんなキャラじゃないわよ!」
立ち上がって抗議する星咲。その声に対して俺と二見が二人同時に、
「「しー」」」
「ご、ごめん、なさい」
急失速して、再び着席する星咲。その背中の先には明らかに気になってこちらを見たであろう数人の客が、「見てませんよ」オーラと共に明後日の方向に振り返る姿が見えた。ごめんなさいね。この子、ちょっと学習能力が欠落してるみたいなの。
「……そんなキャラじゃないわよ」
「俺は別にお前自身がそうだといったわけじゃない。あくまでイメージの話だ。チャラいチャラくないで言えばチャラくない側だったわけだろ?」
「それはまあ……っていうか今もそうだけど」
「それはお前のメンタリティの話だろ?見た目とか、普段一緒に居る面々からすれば、どっちかといえば頭もお股も緩い側に所属して層に見えるって話だ」
「誰が頭が、」
「「しー」」
「……ぐぐぐぐぐぐぐ」
おお、面白いな。大声を出すと迷惑が掛かるから、出せない。でも腹は立つ。そして腹が立つと言動に出るタイプなんだな。もう何回かからかってやろうかな。
「零くん。今、よからぬこと考えてるでしょ?」
「……何故分かった?」
「なんか楽しそうだった」
「そうか?まあいいや。それより問題は星咲、お前だ。お前は今言ったみたいなゆるゆるのゆるキャラじゃなかったけど、高校に進学する際に、思い切って今みたいなキャラに変えた。それでいいか?」
「……言い方は引っ掛かるけど、まあ概ねあってるわ」
「んで、それは友達を作ったり、その友達と修学旅行を一緒に回ったり、体育祭でちょっと小粋な汗を流してみたり、文化祭で泊まり込みの準備してみたり、そんなきゃぴきゃぴした青春を送るために必死で作った外面。それでいいか?」
「いちいち言葉に棘があるのは気になるけど……大体そういうことよ」
「なるほどな。ところで星咲」
「何よ」
「もしかして気が付いてないかもしれないけど、お前が通っている学び舎はお笑い芸人を目指す人間の養成所じゃないぞ?」
「ボケてるんじゃないわよ!」
「おお、ナイスツッコミ」
「突っ込んでない!!」
「「しー!!」」
「ご、ごめんさない……」
三度目、しかも立ち上がらずに騒音を出してしまった学習能力のなさには流石に当人も恥ずかしさを覚えたのか、随分と縮こまってしまったし、謝る言葉も本気の謝罪だった。
まあ、うん。その大声を出させる要因となったのは全部俺なんだけどね。でもまあ、こんなに煽り耐性が無いのも流石にどうかと思うけど。と、いうか学習しろよ。俺が素直な発言をするわけがないだろう?(開き直り)
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