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Ⅰ.
11.特定のタイミングだけ成人済です。
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「ビバ、青春。ビバ、刹那的恋愛」
「どしたの急に」
二見が特に驚かずに質問をぶつける。この辺が幼馴染だなぁと思う。びくっとなったりしないもんな。まあ、なられても困るけど、このくらいで。
「いや、若いうちはもっと刹那的に生きるべきだと思うって話」
「若い時って……零くんだってまだ若いでしょ」
「いや、分からんぞ。若い若いと思っていたら、いつのまにか段々と年を取っていく……」
「や、やだ、やめて!」
「ひとつ……ひとつ……年を取っていく。そして……気が付くのだ……昔は難なく走って登っていた階段が……」
俺はふっと形而上のろうそくを吹き消して、
「登れなくなっていることに!」
「きゃー(棒)」
と、下らない怪談遊びをしたところで、
「ま、それは冗談だけど。でも、若い今この時間ってのはすぐに過ぎ去っていくだろ?だからもっと刹那的に生きていいと思うんだよね。世の中はすぐ急かすけどさ」
「どしたの急に。老けこんで。動悸息切れが激しいのかい?」
「んなわけあるか。俺を何歳だと思ってるんだよ」
「さあ?」
「幼馴染なのに年齢不詳!?」
二見は俺の下らないボケを完全スルーし、
「いやまあ実年齢は知ってるよ?一五歳でしょ?でも、ほら。零くんって時々年齢不肖なことあるじゃない」
「まああるな。特定のタイミングだけは十八歳以上になるしな」
「やだ卑猥」
「卑猥なものか。世の中にはアングラな場所でないと表現出来ないような内容もあるんだよ」
「ほう、具体的には?」
「ま、例えば人がばったばった切り殺されるようなものはその手の制限がかかるな」
「そこでしか出来ない表現があると」
「そういうことだ。よく分かってるじゃないか」
二見は不満そうに、
「えー……でも、いくら零くんが大人っぽいとは言っても、流石にそういうものを買うときは年齢確認されるんじゃない?」
「あ、大丈夫。その手のは全部二見パパンに代理で買っていただいてるから」
「身内に裏切り者!?」
そう。
二見家の両親は実のそのあたりが奔放だ。母親の方は母親の方で大分性的な話にフランクで、俺に対してもその手のネタをしょっちゅう振ってくる。一回「司とはもうヤッたのか」なんて言葉が出てきたときは流石に耳を疑った。
仮にも娘だろうと思ったし、そんなことを言った覚えもあるのだが、彼女はといえば「まあ、それも青春だからな」の一点張りだった。青春をなんだと思ってるんだろう。
後で知ったところによると、若い頃はかなり“やんちゃ”をしていたらしく。その中で出会ったのが今の二見パパンなのだそうで、その辺りの経験が実に活かされているのかもしれない。活きなくていいような気もするけど。
そして、それと未だに仲睦まじく。なんだったら、二人でデートに出かけたりするほどの間柄である父親がゆるゆるなのは当然の帰結と言える。最も、彼の場合はそう言ったゲーム業界に片足突っ込んでいたことがあったこともあって、昨今の斜陽具合を嘆いてという側面の方が強そうだけど。
「ま、そんなわけで……なんの話だっけ?」
一切会話に入ってこなかったはずの安楽城が一言、
「……刹那的」
「そう。刹那的に生きていいと思うんだよ、人間だもの」
「大分酷い使い方をしたね、人間だもの」
「うるさいな。はい、終わり終わり。司も仕事に戻った戻った」
「あ、私今日シフトでもなんでもないよ?」
「あ?そうなの?」
「うん。勝手に手伝ってるだけ。後はまあ、この制服着てた方が、厨房とか入るのに説明いらないかなって思って」
なるほど。
いや、確かにさっきから一切注文を取りに行ったりしないとは思っていた。ただ、二見が俺に話しかける時は基本的に仕事の方で余裕が出来てる時だけなもんだから、てっきり今日もそうだと思っていた。どうやらわざわざ構いに来ていたらしい。
「え、もしかして、俺を心配してた?」
「オーダー入りまーす。青酸カリ、一杯」
「喫茶店殺人事件!?」
前言撤回。ただの暇つぶしだったようだ。なんだよ、全く。
「どしたの急に」
二見が特に驚かずに質問をぶつける。この辺が幼馴染だなぁと思う。びくっとなったりしないもんな。まあ、なられても困るけど、このくらいで。
「いや、若いうちはもっと刹那的に生きるべきだと思うって話」
「若い時って……零くんだってまだ若いでしょ」
「いや、分からんぞ。若い若いと思っていたら、いつのまにか段々と年を取っていく……」
「や、やだ、やめて!」
「ひとつ……ひとつ……年を取っていく。そして……気が付くのだ……昔は難なく走って登っていた階段が……」
俺はふっと形而上のろうそくを吹き消して、
「登れなくなっていることに!」
「きゃー(棒)」
と、下らない怪談遊びをしたところで、
「ま、それは冗談だけど。でも、若い今この時間ってのはすぐに過ぎ去っていくだろ?だからもっと刹那的に生きていいと思うんだよね。世の中はすぐ急かすけどさ」
「どしたの急に。老けこんで。動悸息切れが激しいのかい?」
「んなわけあるか。俺を何歳だと思ってるんだよ」
「さあ?」
「幼馴染なのに年齢不詳!?」
二見は俺の下らないボケを完全スルーし、
「いやまあ実年齢は知ってるよ?一五歳でしょ?でも、ほら。零くんって時々年齢不肖なことあるじゃない」
「まああるな。特定のタイミングだけは十八歳以上になるしな」
「やだ卑猥」
「卑猥なものか。世の中にはアングラな場所でないと表現出来ないような内容もあるんだよ」
「ほう、具体的には?」
「ま、例えば人がばったばった切り殺されるようなものはその手の制限がかかるな」
「そこでしか出来ない表現があると」
「そういうことだ。よく分かってるじゃないか」
二見は不満そうに、
「えー……でも、いくら零くんが大人っぽいとは言っても、流石にそういうものを買うときは年齢確認されるんじゃない?」
「あ、大丈夫。その手のは全部二見パパンに代理で買っていただいてるから」
「身内に裏切り者!?」
そう。
二見家の両親は実のそのあたりが奔放だ。母親の方は母親の方で大分性的な話にフランクで、俺に対してもその手のネタをしょっちゅう振ってくる。一回「司とはもうヤッたのか」なんて言葉が出てきたときは流石に耳を疑った。
仮にも娘だろうと思ったし、そんなことを言った覚えもあるのだが、彼女はといえば「まあ、それも青春だからな」の一点張りだった。青春をなんだと思ってるんだろう。
後で知ったところによると、若い頃はかなり“やんちゃ”をしていたらしく。その中で出会ったのが今の二見パパンなのだそうで、その辺りの経験が実に活かされているのかもしれない。活きなくていいような気もするけど。
そして、それと未だに仲睦まじく。なんだったら、二人でデートに出かけたりするほどの間柄である父親がゆるゆるなのは当然の帰結と言える。最も、彼の場合はそう言ったゲーム業界に片足突っ込んでいたことがあったこともあって、昨今の斜陽具合を嘆いてという側面の方が強そうだけど。
「ま、そんなわけで……なんの話だっけ?」
一切会話に入ってこなかったはずの安楽城が一言、
「……刹那的」
「そう。刹那的に生きていいと思うんだよ、人間だもの」
「大分酷い使い方をしたね、人間だもの」
「うるさいな。はい、終わり終わり。司も仕事に戻った戻った」
「あ、私今日シフトでもなんでもないよ?」
「あ?そうなの?」
「うん。勝手に手伝ってるだけ。後はまあ、この制服着てた方が、厨房とか入るのに説明いらないかなって思って」
なるほど。
いや、確かにさっきから一切注文を取りに行ったりしないとは思っていた。ただ、二見が俺に話しかける時は基本的に仕事の方で余裕が出来てる時だけなもんだから、てっきり今日もそうだと思っていた。どうやらわざわざ構いに来ていたらしい。
「え、もしかして、俺を心配してた?」
「オーダー入りまーす。青酸カリ、一杯」
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