29 / 35
28 話してください 少尉さん
しおりを挟む
薄暗い厩舎は、優しい動物の体温と吐く息で温められ、それほど寒くはない。
上部の換気窓からは朝の光が斜めに差し込み、天使の階段をいく筋も作っていた。
しかし今のアンには、そのどれも意味がない。
抱き込まれている腕は強く、分厚い軍服のボタンは固く頬に押しつけられていた。
「アン……アン。本当に無事でよかった……」
聞いたことのないような弱い声でレイルダーが呟く。
彼はアンの髪に顔を埋めてうわ言のようにアンの名を呼んだ。
ああ、少尉さんの匂いだ……。
それはアンが大好きな甘苦いゼラニウムと少しの煙草の香り。彼の香りだ。泥や硝煙の匂いに混じって、それはアンの脳髄を甘く痺れさせる。
だけど……あれ? ちょっと苦しい……?
広い胸への安心感と、抱きしめられる力があまりに強いのとで、アンの意識が朦朧とし始める。
「アン!? おい、アン!」
「……ふぁい?」
アンはぼんやりと目を開けた。
「すまん! 力を入れすぎた。大丈夫か?」
「へ? あ……だ、だいじょ、うぶ、です」
「うわ! ボタンの跡がほっぺたについている。ごめん! 痛くないか?」
アンはぼうっとしたまま、頬に手を当てた。痛くもなんともない。ただ、冷えた指先に頬がひりつくほど熱い。
「そうだ! 水、水飲むか? あ」
水筒はだいぶ前から隅に転がっている。
「ううん、大丈夫です」
「ほんとか? 無理してないか?」
アンはレイルダーの膝の上で体勢を立て直した。
「あ、俺まだ濡れてる」
レイルダーはラジムに脅されて真冬の川へと入っていったのだ。
あれからまだ数時間しか経っていない。渇いてなくて当然だった。レイルダーは船で借りた軍用の外套でアンを包みこんだ。
「私は、大丈夫、です。少尉さん。少尉さんこそ、寒くないですか?」
「……平気だよ」
アンの言葉に、こわばっていた青年の頬がみるみる緩んでいくのがわかった。
「あの……怒っていたのではないのですか?」
「ああそうだよ。俺は怒っている。自分にも、アンにも」
「じゃあ……叱ってください」
アンはレイルダーの膝の上で殊勝に言った。
「ではまず!」
「……はい」
「見習い看護婦になったこともそうだが、なんで川を渡ってきた? アンは兵士じゃない、作戦行動は俺たち兵士の仕事だ」
「私は作戦のことなど何も知りません。でも、お父さまが少尉さんを助けて欲しいって。私は迷わず引き受けたんです」
美しい瞳が見開かれた。
「……っ! あの人はっ……!」
「馬のことがわかるっていう、なんの役にも立たないと思っていた私の妙な力が、役に立つかもしれないって思ったから、迷わず決めました」
彼はぎゅっと目を瞑っている。苦悩しているようだ。アンはただ金色の長いまつ毛を眺めていた。
「あの人はなんで……俺なんかに……」
「お父さまは私の知らない事情を話してくれて……秘色の人たちのことも。そして、少尉さんのこと息子も同じだって」
「……」
さっきまでアンを抱いていた拳が震えている。唇を噛み締め、激しい感情をやり過ごしているようだった。
「……俺のことなど捨て置けばいいのにさ」
「そんなこと言わないで! みんな少尉さんのことが大好きなんですよ! 私も、お父さまも、お母さまも、ケイン様も、それからえっと侯爵夫人……ミレイユ様も」
アンは最後の名前をしぶしぶ付け足したが、レイルダーは訳がわからないという風に眉を顰めた。
「ミレイユ? 誰?」
レイルダーは訳がわからないように言った。
「誰って? こ、恋人でしょう?」
レイルダーが本気で愛しているのは、母のカーマインだとは思うが、それでも恋人を作ってはいけないということはない。
母もミレイユも、アンと違って派手な美人だ。そういう女性が彼の好みなんだろうと、アンは思っている。
「恋人? そんなものいないよ」
「でも……少尉さん。すごくモテるじゃないですか」
この状況下で、一体なんの話をしているんだろうとアンは思ったが、二人で話せる機会はもうないかもしれないと思うと、普段無口な彼が語る話なら、全部聞きたい。長いこと話せなかった今までの分まで。
「モテる? 知らない。そりゃ正直に言うと、勝手にベッドに入ってくる強引な女とは、後腐れがないようにその夜だけつきあって別れる。それだけ」
「勝手に……って、女の人ってすごいんですねぇ」
かなり最低な告白だが、アンは別の意味で感心した。
レイルダーが非常に人気があって、身分をカサに言い寄ってくる女性が多いことは知っていたからだ。彼らは自分と違って大人なのだから、恋愛に関する決まり事や、駆け引きには慣れているのに違いない。
ベッドのことはよくわからないが、知らないことだからそれほど気にはならない。。
「さぁ。俺には女性は誰でも同じに見える」
「同じ? じゃあ私も!? 私も同じですか?」
「いや違う。アンはアンだ」
レイルダーは妙に自信たっぷりに断定した。
「はぁ。わかりません。少尉さんのお話、もっと聞きたいです!」
「俺の話なんてつまらないさ」
レイルダーは暗い顔でつぶやく。
「つまらなくありません! 言ったでしょう? 私だって少尉さんのことが大好きなんです!」
「……アン」
大好きな美しい瞳が、揺らいだように見えたのは、アンの思い過ごしだろうか?
「知っていたでしょう? だって、小さい頃から私は」
「俺のことを知ったら、大好きなんて言えないよ」
アンの言葉に被せるようにレイルダーは言った。
「お父さまは知っているのでしょう?」
「……閣下の知らないことがある」
「あの! よかったらお話ししてくれませんか? 少尉さんのこと、私にも」
「嫌だ。知ったらアンは俺のこと嫌いになる」
レイルダーはぷいと横を向いて言った。この瞬間、怜悧な美貌で女性たちの視線を集める美青年が少年のように見えた。
アンはどきどきしながら声を張った。
「なりません!」
「なるよ」
「ならないったら! 約束します!」
「約束か……そんなものを信じられたらなぁ」
「他の人の約束は知らないけど、私は約束守ります。でも……もし仮に、私が少尉さんを嫌いになったとしても、少尉さん別に困らないでしょう?」
「いや。実はものすごく困るんだ。だから言いたくない」
「困る? どうして?」
アンは自分がレイルダーの膝の上にいることも忘れ、不思議そうに彼を覗き込んだ。
青年は目を合わせようともしないで、秀麗な横顔を見せていたが、不意にアンを間近にのぞき込んで言った。
「俺もアンが大好きだからさ」
上部の換気窓からは朝の光が斜めに差し込み、天使の階段をいく筋も作っていた。
しかし今のアンには、そのどれも意味がない。
抱き込まれている腕は強く、分厚い軍服のボタンは固く頬に押しつけられていた。
「アン……アン。本当に無事でよかった……」
聞いたことのないような弱い声でレイルダーが呟く。
彼はアンの髪に顔を埋めてうわ言のようにアンの名を呼んだ。
ああ、少尉さんの匂いだ……。
それはアンが大好きな甘苦いゼラニウムと少しの煙草の香り。彼の香りだ。泥や硝煙の匂いに混じって、それはアンの脳髄を甘く痺れさせる。
だけど……あれ? ちょっと苦しい……?
広い胸への安心感と、抱きしめられる力があまりに強いのとで、アンの意識が朦朧とし始める。
「アン!? おい、アン!」
「……ふぁい?」
アンはぼんやりと目を開けた。
「すまん! 力を入れすぎた。大丈夫か?」
「へ? あ……だ、だいじょ、うぶ、です」
「うわ! ボタンの跡がほっぺたについている。ごめん! 痛くないか?」
アンはぼうっとしたまま、頬に手を当てた。痛くもなんともない。ただ、冷えた指先に頬がひりつくほど熱い。
「そうだ! 水、水飲むか? あ」
水筒はだいぶ前から隅に転がっている。
「ううん、大丈夫です」
「ほんとか? 無理してないか?」
アンはレイルダーの膝の上で体勢を立て直した。
「あ、俺まだ濡れてる」
レイルダーはラジムに脅されて真冬の川へと入っていったのだ。
あれからまだ数時間しか経っていない。渇いてなくて当然だった。レイルダーは船で借りた軍用の外套でアンを包みこんだ。
「私は、大丈夫、です。少尉さん。少尉さんこそ、寒くないですか?」
「……平気だよ」
アンの言葉に、こわばっていた青年の頬がみるみる緩んでいくのがわかった。
「あの……怒っていたのではないのですか?」
「ああそうだよ。俺は怒っている。自分にも、アンにも」
「じゃあ……叱ってください」
アンはレイルダーの膝の上で殊勝に言った。
「ではまず!」
「……はい」
「見習い看護婦になったこともそうだが、なんで川を渡ってきた? アンは兵士じゃない、作戦行動は俺たち兵士の仕事だ」
「私は作戦のことなど何も知りません。でも、お父さまが少尉さんを助けて欲しいって。私は迷わず引き受けたんです」
美しい瞳が見開かれた。
「……っ! あの人はっ……!」
「馬のことがわかるっていう、なんの役にも立たないと思っていた私の妙な力が、役に立つかもしれないって思ったから、迷わず決めました」
彼はぎゅっと目を瞑っている。苦悩しているようだ。アンはただ金色の長いまつ毛を眺めていた。
「あの人はなんで……俺なんかに……」
「お父さまは私の知らない事情を話してくれて……秘色の人たちのことも。そして、少尉さんのこと息子も同じだって」
「……」
さっきまでアンを抱いていた拳が震えている。唇を噛み締め、激しい感情をやり過ごしているようだった。
「……俺のことなど捨て置けばいいのにさ」
「そんなこと言わないで! みんな少尉さんのことが大好きなんですよ! 私も、お父さまも、お母さまも、ケイン様も、それからえっと侯爵夫人……ミレイユ様も」
アンは最後の名前をしぶしぶ付け足したが、レイルダーは訳がわからないという風に眉を顰めた。
「ミレイユ? 誰?」
レイルダーは訳がわからないように言った。
「誰って? こ、恋人でしょう?」
レイルダーが本気で愛しているのは、母のカーマインだとは思うが、それでも恋人を作ってはいけないということはない。
母もミレイユも、アンと違って派手な美人だ。そういう女性が彼の好みなんだろうと、アンは思っている。
「恋人? そんなものいないよ」
「でも……少尉さん。すごくモテるじゃないですか」
この状況下で、一体なんの話をしているんだろうとアンは思ったが、二人で話せる機会はもうないかもしれないと思うと、普段無口な彼が語る話なら、全部聞きたい。長いこと話せなかった今までの分まで。
「モテる? 知らない。そりゃ正直に言うと、勝手にベッドに入ってくる強引な女とは、後腐れがないようにその夜だけつきあって別れる。それだけ」
「勝手に……って、女の人ってすごいんですねぇ」
かなり最低な告白だが、アンは別の意味で感心した。
レイルダーが非常に人気があって、身分をカサに言い寄ってくる女性が多いことは知っていたからだ。彼らは自分と違って大人なのだから、恋愛に関する決まり事や、駆け引きには慣れているのに違いない。
ベッドのことはよくわからないが、知らないことだからそれほど気にはならない。。
「さぁ。俺には女性は誰でも同じに見える」
「同じ? じゃあ私も!? 私も同じですか?」
「いや違う。アンはアンだ」
レイルダーは妙に自信たっぷりに断定した。
「はぁ。わかりません。少尉さんのお話、もっと聞きたいです!」
「俺の話なんてつまらないさ」
レイルダーは暗い顔でつぶやく。
「つまらなくありません! 言ったでしょう? 私だって少尉さんのことが大好きなんです!」
「……アン」
大好きな美しい瞳が、揺らいだように見えたのは、アンの思い過ごしだろうか?
「知っていたでしょう? だって、小さい頃から私は」
「俺のことを知ったら、大好きなんて言えないよ」
アンの言葉に被せるようにレイルダーは言った。
「お父さまは知っているのでしょう?」
「……閣下の知らないことがある」
「あの! よかったらお話ししてくれませんか? 少尉さんのこと、私にも」
「嫌だ。知ったらアンは俺のこと嫌いになる」
レイルダーはぷいと横を向いて言った。この瞬間、怜悧な美貌で女性たちの視線を集める美青年が少年のように見えた。
アンはどきどきしながら声を張った。
「なりません!」
「なるよ」
「ならないったら! 約束します!」
「約束か……そんなものを信じられたらなぁ」
「他の人の約束は知らないけど、私は約束守ります。でも……もし仮に、私が少尉さんを嫌いになったとしても、少尉さん別に困らないでしょう?」
「いや。実はものすごく困るんだ。だから言いたくない」
「困る? どうして?」
アンは自分がレイルダーの膝の上にいることも忘れ、不思議そうに彼を覗き込んだ。
青年は目を合わせようともしないで、秀麗な横顔を見せていたが、不意にアンを間近にのぞき込んで言った。
「俺もアンが大好きだからさ」
2
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
欲に負けた婚約者は代償を払う
京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。
そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。
「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」
気が付くと私はゼン先生の前にいた。
起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。
「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる