85 / 96
84 夜明け 4*
しおりを挟む
「甘いものって何? エルランド様」
「う~ん……前から思っていたんだが、リザ、俺を呼ぶ時、様づけはもうよしてくれないか?」
エルランドはリザを抱え上げながら奥の部屋へと歩いていく。
「身分からすれば、リザの方がずっと上なのだし。それに俺はリザと呼んでいる……短くて美しい響きが好きだ」
「結婚式の前に、兄上にも覚え易くて良いと言われたわ。生まれて初めて褒められた」
「王の話はしたくない。正直苦手だ」
エルランドはリザを自分の寝台に横たえながら言った。自分も横になり肘をついた彼は、もう一方の手でリザの頬を包む。
「今は俺とリザの時間だ。他の男の話はしたくない」
「いいけど……どうして、エルランド様の寝台に私を運ぶの?」
「一緒に寝たいからだ。初めてじゃないだろう?」
「それはそうだけど……また、あんな風にするの? 裸になって?」
森の見張り小屋での出来事が、もうずっと前のことのように思える。けれど忘れたことはない。リザの胸は大きく鼓動を打ち始めた。
「そうだ。だがリザが嫌ならしない」
「……嫌じゃないわ」
リザは真っ赤になって言った。
「温かくて……いえ、熱いのが好きよ」
その言葉にエルランド目は一瞬見開き、そしてすぐに色気たっぷりに微笑んだ。
「いくらでも熱くさせてやる」
そう言って、エルランドは蕾のような唇に深く口付けた。
リザの腕が大きな肩を両手で抱きしめる。大きな寝台がぎしりと揺れた。
***
するすると着ているものが解かれる。
胸元が緩められ、真っ白い珠が溢れでた。すかさず獣が喰らい付く。
「ん!」
びくりと背中がのけぞるが、その隙間に腕を差し込まれ、リザは動けなくなってしまった。
すごい音……恥ずかしいけど、とても嬉しそうな……。
渇いた狼が水を飲む様な音が胸元からひっきりなしに聞こえる。男のもう片方の手はやわやわと対の乳房を掴んでいた。
「はぁあ! ああ!」
熱く濡れた舌先と、硬くざらざらした指の腹で頂を刺激されると頭がおかしくなりそうで、快感から逃れるようにリザは腰を捻った。だがそれは、さらに愛撫を強めるだけの効果しかない。
きつく吸い上げられ、くりくりと擦られて、リザはさらに高く鳴いた。
「あうっ!」
つきんとする快感に翻弄されてこぼす息が荒くなる。胸の感覚はそのまま腹の下へと伸びていて、知らずに腰が揺れた。
それを見逃すエルランドではない。
長い腕が夜着の裾に伸びる。
あっという間にそれはたくし上げ上げられ、小さな下着を露わにした。
中央の窪んだ部分にそっと中指が添えられる。
「リザ、濡れている」
「え? どうして?」
驚いたリザが思わず体を起こそうとするのを止めて、エルランドはリザの耳に口をつけた。
「リザが俺を求めているという証だ」
「……そ、そうなの? 前の時もそうだった?」
「ああ。だが、まだ慣れていなかったから、これほど潤ってはいなかった。確かめるか?」
「う……うん」
エルランドはリザの手を取って自分の中心に触れさせた。初めて触れるのだろう、その指先はおぼつかない。
「う……濡れてる……気持ち悪い」
リザは慌てて手を引っ込めた。
「なんで? これが俺の好きな甘いものなのに」
そう言いながらエルランドは巧みに下着の紐を解いていく。
「食べさせて」
「え?」
リザが意味を解しかねているうちに、エルランドは機敏に体を沈めてリザの膝を抱えた。
すぐに頭が沈み込み、胸に受けた愛撫がそこにも繰り返される。
それは以前、森の小屋でも受けた行為。しかし、あの時のリザは混乱し切っていて、よく覚えていないのだ。
しかし今は、その横柄な舌の動きが全て感じ取れた。
「ん……くく」
「リザ、声を我慢するな。俺はあなたの声も貪りたい」
「こ、こえ? きゃあ!」
ある一点に触れられた時、自然に腰が小さく跳ねる。押さえ込まれて、捏ねられて、挟み込まれて悲鳴が止まらない。
もうそこは、お互いの体液で大変なことになっていた。
「あ、あああああ──っ!」
きつく吸い上げられて、リザの体が大きく伸び切った時、ようやくエルランドは僅かに身を離した。
「……リザ」
「て、鉄樹を挿れるの?」
リザは二人だけしか知らない例えを使った。
「ああ。受け止めてくれ」
そう言ってエルランドはゆっくりと体を進めた。
「あっ……!」
それは最初の時のように痛くはなかったけれど、やはり相当の質量でリザを圧倒する。たっぷり濡れていたにもかかわらず、太い部分が入り込む時、リザの眉間は苦痛に歪んだ。
「大丈夫だ、リザの体が慣れるまでこのままでいる」
エルランドはリザを安心させるように囁き、細い腰を撫でながら優しい口づけを与えた。
「ああ、リザ……あなたの中はとてもいい」
「よく……わからない。どんな風なの?」
リザは大きく息をつきながら尋ねた。
「そう、だな……極上の絹で締めあげられている……感じ?」
顎から滴り落ちた汗が、リザの頬に落ちる。動きたいのを我慢しているのだろう、彼は相当に汗をかいていた。
「エル、辛いの? 私はもう大丈夫だから……どうかエルの好きなように」
「いい、のか?」
「うん。エルが私を大事にしてくれるのがわかるから……さぁ」
「……」
「して」
まるでお預けを喰らっていた狼のように、エルランドは腰をゆすり始める。
最初はやはりゆっくりと小刻みに、そして次第に深く、大きな波のように彼は動いた。
「うっ、ううっ! リザ……リザ!」
エルランドが獣の様な唸り声を上げた。何かを堪えるように歯を食いしばり、汗が滝のように滴り落ちている。
「エル、いいの。もっと……お願い。私、もっと熱いのが欲しいわ!」
両腕を伸ばして、男の頬を覆いながらリザは叫んだ。
「もっと!」
「くそ! 殺し文句を!」
そう叫ぶとエルランドは、本能に従って猛然と腰を突き上げ始めた。
「あああ!」
体ががくがくと揺れる、しかし一見激しいようでも、乱暴ではない。
エルランドはリザがちゃんと受け止められるようにちゃんと配慮している。自分だけ悦くても彼は嬉しくないのだ。
だから、私も受け止める。
彼の形を硬さを熱さを。
ああ、少し苦しいけど、なんて幸せなの!
「エル! もっとよ! もっと熱くして! 熱くなって!」
「おう!」
どん! と打ち付けられる。リザはぎゅっと目を瞑って体に力を入れた。
「く……ああ!」
ぎりぎりと歯を食いしばってエルランドは最奥まで到達し、そこで昇り詰めた。胎内に大量の熱を感じて、リザも顎をあげてのけぞる。
二人は荒い息をこぼしながら、汗まみれの体でどっと敷布に倒れ込んだ。
「リザ……すまない……大丈夫か? うお⁉︎」
リザは心配そうに覗き込むエルランドの首に両手を回し、自分から強く唇を押し付けた。そのままエルランドがしてくれるように自分の唇で彼のそれを挟み、小さな舌を滑り込ませる。
「ん……む!」
エルランドリザを抱いたまま、仰向けに転がり、リザの好きなようにさせた。
「エル、こんなのは嬉しい?」
「ああ、最高だ。もっと喰ってくれ」
二人はそのまま舌を絡め合い、胸をすり合わせ、お互いを貪った。
──やがて。
「リザ……俺は再び満ちた。このまま……いいか?」
「ん……」
そうして二人は再び揺れ始めたのだった。
***
半刻の後──。
「……リザ?」
「……ん?」
まどろんでいた瞼がゆっくりと上がり、瞳にエルランドを捉えた。
「私、寝ていた?」
「ああ。可愛い声をあげてから、気をやってしまったな。すまない。少し励みすぎたかもしれない。リザも疲れているのに」
「エルランド様ほどじゃないわ」
「男はいいんだ。疲れるとこういうことをしたくなる……すごくよかった」
足の間にリザを挟み込みながらエルランドは満足そうな太い吐息をついた。
「よかったならよかったわ」
「意味がわかってないくせに」
「じゃあ、なにがよかったの?」
「リザの外も中も全部よかった」
「中? 心の中?」
「それもある。でも、ここもすごく俺にぴったり寄り添ってくれる」
「やぁ!」
触れられたところはまだ濡れていて、リザは思わず腰を引いた。二人ともまだなにも着ていないのだ。
「確かに……少し汚してしまったな。汗もかいたし」
エルランドは暖炉の前においた桶の湯を使ってリザの体を拭き、自分もざっと体を拭った。
暖炉の灯りに照らされて、何も纏わぬその体は男性神の彫刻のように美しい。あちこちにある傷跡でさえも、全身を鎧う筋肉の装飾のように思えてくる。
私の貧弱な体とは全然違う……。
「綺麗ね」
「何が?」
「エルランド様の体」
リザは、腰に布を巻いただけで寝台へと戻ってきたエルランドの体をするりと撫でた。
「こんな傷だらけのごつい体が? リザの柔らかくて白い体の方がよほど触り心地がいい……さっき感じたが、前よりも豊かになったな」
「ええ。たくさん食べているもの。動くとお腹が減るのよ」
リザは瘤のようにいくつも盛り上がった腹の肉に指先を滑らせる。エルランドは立ったままで、自分の体に興味を示すリザに、新たな欲がじわりと滲む。
「リザ、そんなにするな。今日はもう眠ろうと思っていたのに」
腰に巻いた布が少し持ち上がっているのを隠そうともせずに、エルランドが苦笑する。
「ええ、そうね。確かに眠いわ……エル」
「エル?」
「そう……様では嫌なのでしょう? 私の名が短くていいのなら、エルランド様のも短いのがいいわ」
「ああ、いいな……これからはそう呼んでくれ……そら!」
エルランドは裸のリザの体に布を巻きつけ、勢いよく抱き上げた。
「どこに行くの? 寝るのじゃないの?」
「寝るさ。リザの部屋でな。この寝台はやや寝るには不適だ」
「でもそっちは廊下じゃないわ」
「こっちからの方が近い」
そう言うと、エルランド部屋の北側の壁に設けられた小さな扉を開けた。
そこには織物がかけられてあり、それを捲るとリザの寝室へとつながる扉が現れた。
「まぁ! こんな仕組みになっていたとは知らなかったわ」
「昔はもっと小さな通路だったようだ。砦だったから、あまり大っぴらにできなかったんだろう。だが、リザにこの部屋を使ってもらうと決めた時から、俺がもっと大きくしようと壁をくり抜いたんだ……さぁここなら清潔だ。誰か気の利く奴が火を入れてくれたようだ。寒くはないか?」
「ええ……わたし、いい港になれた?」
「ああ。この上なく素晴らしい、俺だけの港だ……」
満足しきったエルランドが足の間にリザを挟む。
「そう? いつか本当の港もみてみたいなぁ」
「ああ、ぜひそうしよう。綺麗で大きいぞ」
「嬉しい……」
エルランドに抱き込まれ、リザの瞼は次第に重くなっていく。
「エルの腕が気持ちがいい」
「腕か……」
エルランドはやや残念そうに言って、眠りに落ちようとするリザを寝台に横たえた。
「さすがに疲れたな。俺も疲れた」
寄り添って眠る冬の夜。
いつしか雪がちらついている。この雪は溶けない雪だ。朝まで降り続くだろう。巣篭もりの季節がもう直ぐにやってくる。
エルランドは深い吐息をついた。リザが眠ったまま、くすぐったそうに首を竦めている。
俺たちはもう、大丈夫だな……リザ。
夜が一番深く暗い時は、夜明けがすぐそこまで来ているのだ。
「う~ん……前から思っていたんだが、リザ、俺を呼ぶ時、様づけはもうよしてくれないか?」
エルランドはリザを抱え上げながら奥の部屋へと歩いていく。
「身分からすれば、リザの方がずっと上なのだし。それに俺はリザと呼んでいる……短くて美しい響きが好きだ」
「結婚式の前に、兄上にも覚え易くて良いと言われたわ。生まれて初めて褒められた」
「王の話はしたくない。正直苦手だ」
エルランドはリザを自分の寝台に横たえながら言った。自分も横になり肘をついた彼は、もう一方の手でリザの頬を包む。
「今は俺とリザの時間だ。他の男の話はしたくない」
「いいけど……どうして、エルランド様の寝台に私を運ぶの?」
「一緒に寝たいからだ。初めてじゃないだろう?」
「それはそうだけど……また、あんな風にするの? 裸になって?」
森の見張り小屋での出来事が、もうずっと前のことのように思える。けれど忘れたことはない。リザの胸は大きく鼓動を打ち始めた。
「そうだ。だがリザが嫌ならしない」
「……嫌じゃないわ」
リザは真っ赤になって言った。
「温かくて……いえ、熱いのが好きよ」
その言葉にエルランド目は一瞬見開き、そしてすぐに色気たっぷりに微笑んだ。
「いくらでも熱くさせてやる」
そう言って、エルランドは蕾のような唇に深く口付けた。
リザの腕が大きな肩を両手で抱きしめる。大きな寝台がぎしりと揺れた。
***
するすると着ているものが解かれる。
胸元が緩められ、真っ白い珠が溢れでた。すかさず獣が喰らい付く。
「ん!」
びくりと背中がのけぞるが、その隙間に腕を差し込まれ、リザは動けなくなってしまった。
すごい音……恥ずかしいけど、とても嬉しそうな……。
渇いた狼が水を飲む様な音が胸元からひっきりなしに聞こえる。男のもう片方の手はやわやわと対の乳房を掴んでいた。
「はぁあ! ああ!」
熱く濡れた舌先と、硬くざらざらした指の腹で頂を刺激されると頭がおかしくなりそうで、快感から逃れるようにリザは腰を捻った。だがそれは、さらに愛撫を強めるだけの効果しかない。
きつく吸い上げられ、くりくりと擦られて、リザはさらに高く鳴いた。
「あうっ!」
つきんとする快感に翻弄されてこぼす息が荒くなる。胸の感覚はそのまま腹の下へと伸びていて、知らずに腰が揺れた。
それを見逃すエルランドではない。
長い腕が夜着の裾に伸びる。
あっという間にそれはたくし上げ上げられ、小さな下着を露わにした。
中央の窪んだ部分にそっと中指が添えられる。
「リザ、濡れている」
「え? どうして?」
驚いたリザが思わず体を起こそうとするのを止めて、エルランドはリザの耳に口をつけた。
「リザが俺を求めているという証だ」
「……そ、そうなの? 前の時もそうだった?」
「ああ。だが、まだ慣れていなかったから、これほど潤ってはいなかった。確かめるか?」
「う……うん」
エルランドはリザの手を取って自分の中心に触れさせた。初めて触れるのだろう、その指先はおぼつかない。
「う……濡れてる……気持ち悪い」
リザは慌てて手を引っ込めた。
「なんで? これが俺の好きな甘いものなのに」
そう言いながらエルランドは巧みに下着の紐を解いていく。
「食べさせて」
「え?」
リザが意味を解しかねているうちに、エルランドは機敏に体を沈めてリザの膝を抱えた。
すぐに頭が沈み込み、胸に受けた愛撫がそこにも繰り返される。
それは以前、森の小屋でも受けた行為。しかし、あの時のリザは混乱し切っていて、よく覚えていないのだ。
しかし今は、その横柄な舌の動きが全て感じ取れた。
「ん……くく」
「リザ、声を我慢するな。俺はあなたの声も貪りたい」
「こ、こえ? きゃあ!」
ある一点に触れられた時、自然に腰が小さく跳ねる。押さえ込まれて、捏ねられて、挟み込まれて悲鳴が止まらない。
もうそこは、お互いの体液で大変なことになっていた。
「あ、あああああ──っ!」
きつく吸い上げられて、リザの体が大きく伸び切った時、ようやくエルランドは僅かに身を離した。
「……リザ」
「て、鉄樹を挿れるの?」
リザは二人だけしか知らない例えを使った。
「ああ。受け止めてくれ」
そう言ってエルランドはゆっくりと体を進めた。
「あっ……!」
それは最初の時のように痛くはなかったけれど、やはり相当の質量でリザを圧倒する。たっぷり濡れていたにもかかわらず、太い部分が入り込む時、リザの眉間は苦痛に歪んだ。
「大丈夫だ、リザの体が慣れるまでこのままでいる」
エルランドはリザを安心させるように囁き、細い腰を撫でながら優しい口づけを与えた。
「ああ、リザ……あなたの中はとてもいい」
「よく……わからない。どんな風なの?」
リザは大きく息をつきながら尋ねた。
「そう、だな……極上の絹で締めあげられている……感じ?」
顎から滴り落ちた汗が、リザの頬に落ちる。動きたいのを我慢しているのだろう、彼は相当に汗をかいていた。
「エル、辛いの? 私はもう大丈夫だから……どうかエルの好きなように」
「いい、のか?」
「うん。エルが私を大事にしてくれるのがわかるから……さぁ」
「……」
「して」
まるでお預けを喰らっていた狼のように、エルランドは腰をゆすり始める。
最初はやはりゆっくりと小刻みに、そして次第に深く、大きな波のように彼は動いた。
「うっ、ううっ! リザ……リザ!」
エルランドが獣の様な唸り声を上げた。何かを堪えるように歯を食いしばり、汗が滝のように滴り落ちている。
「エル、いいの。もっと……お願い。私、もっと熱いのが欲しいわ!」
両腕を伸ばして、男の頬を覆いながらリザは叫んだ。
「もっと!」
「くそ! 殺し文句を!」
そう叫ぶとエルランドは、本能に従って猛然と腰を突き上げ始めた。
「あああ!」
体ががくがくと揺れる、しかし一見激しいようでも、乱暴ではない。
エルランドはリザがちゃんと受け止められるようにちゃんと配慮している。自分だけ悦くても彼は嬉しくないのだ。
だから、私も受け止める。
彼の形を硬さを熱さを。
ああ、少し苦しいけど、なんて幸せなの!
「エル! もっとよ! もっと熱くして! 熱くなって!」
「おう!」
どん! と打ち付けられる。リザはぎゅっと目を瞑って体に力を入れた。
「く……ああ!」
ぎりぎりと歯を食いしばってエルランドは最奥まで到達し、そこで昇り詰めた。胎内に大量の熱を感じて、リザも顎をあげてのけぞる。
二人は荒い息をこぼしながら、汗まみれの体でどっと敷布に倒れ込んだ。
「リザ……すまない……大丈夫か? うお⁉︎」
リザは心配そうに覗き込むエルランドの首に両手を回し、自分から強く唇を押し付けた。そのままエルランドがしてくれるように自分の唇で彼のそれを挟み、小さな舌を滑り込ませる。
「ん……む!」
エルランドリザを抱いたまま、仰向けに転がり、リザの好きなようにさせた。
「エル、こんなのは嬉しい?」
「ああ、最高だ。もっと喰ってくれ」
二人はそのまま舌を絡め合い、胸をすり合わせ、お互いを貪った。
──やがて。
「リザ……俺は再び満ちた。このまま……いいか?」
「ん……」
そうして二人は再び揺れ始めたのだった。
***
半刻の後──。
「……リザ?」
「……ん?」
まどろんでいた瞼がゆっくりと上がり、瞳にエルランドを捉えた。
「私、寝ていた?」
「ああ。可愛い声をあげてから、気をやってしまったな。すまない。少し励みすぎたかもしれない。リザも疲れているのに」
「エルランド様ほどじゃないわ」
「男はいいんだ。疲れるとこういうことをしたくなる……すごくよかった」
足の間にリザを挟み込みながらエルランドは満足そうな太い吐息をついた。
「よかったならよかったわ」
「意味がわかってないくせに」
「じゃあ、なにがよかったの?」
「リザの外も中も全部よかった」
「中? 心の中?」
「それもある。でも、ここもすごく俺にぴったり寄り添ってくれる」
「やぁ!」
触れられたところはまだ濡れていて、リザは思わず腰を引いた。二人ともまだなにも着ていないのだ。
「確かに……少し汚してしまったな。汗もかいたし」
エルランドは暖炉の前においた桶の湯を使ってリザの体を拭き、自分もざっと体を拭った。
暖炉の灯りに照らされて、何も纏わぬその体は男性神の彫刻のように美しい。あちこちにある傷跡でさえも、全身を鎧う筋肉の装飾のように思えてくる。
私の貧弱な体とは全然違う……。
「綺麗ね」
「何が?」
「エルランド様の体」
リザは、腰に布を巻いただけで寝台へと戻ってきたエルランドの体をするりと撫でた。
「こんな傷だらけのごつい体が? リザの柔らかくて白い体の方がよほど触り心地がいい……さっき感じたが、前よりも豊かになったな」
「ええ。たくさん食べているもの。動くとお腹が減るのよ」
リザは瘤のようにいくつも盛り上がった腹の肉に指先を滑らせる。エルランドは立ったままで、自分の体に興味を示すリザに、新たな欲がじわりと滲む。
「リザ、そんなにするな。今日はもう眠ろうと思っていたのに」
腰に巻いた布が少し持ち上がっているのを隠そうともせずに、エルランドが苦笑する。
「ええ、そうね。確かに眠いわ……エル」
「エル?」
「そう……様では嫌なのでしょう? 私の名が短くていいのなら、エルランド様のも短いのがいいわ」
「ああ、いいな……これからはそう呼んでくれ……そら!」
エルランドは裸のリザの体に布を巻きつけ、勢いよく抱き上げた。
「どこに行くの? 寝るのじゃないの?」
「寝るさ。リザの部屋でな。この寝台はやや寝るには不適だ」
「でもそっちは廊下じゃないわ」
「こっちからの方が近い」
そう言うと、エルランド部屋の北側の壁に設けられた小さな扉を開けた。
そこには織物がかけられてあり、それを捲るとリザの寝室へとつながる扉が現れた。
「まぁ! こんな仕組みになっていたとは知らなかったわ」
「昔はもっと小さな通路だったようだ。砦だったから、あまり大っぴらにできなかったんだろう。だが、リザにこの部屋を使ってもらうと決めた時から、俺がもっと大きくしようと壁をくり抜いたんだ……さぁここなら清潔だ。誰か気の利く奴が火を入れてくれたようだ。寒くはないか?」
「ええ……わたし、いい港になれた?」
「ああ。この上なく素晴らしい、俺だけの港だ……」
満足しきったエルランドが足の間にリザを挟む。
「そう? いつか本当の港もみてみたいなぁ」
「ああ、ぜひそうしよう。綺麗で大きいぞ」
「嬉しい……」
エルランドに抱き込まれ、リザの瞼は次第に重くなっていく。
「エルの腕が気持ちがいい」
「腕か……」
エルランドはやや残念そうに言って、眠りに落ちようとするリザを寝台に横たえた。
「さすがに疲れたな。俺も疲れた」
寄り添って眠る冬の夜。
いつしか雪がちらついている。この雪は溶けない雪だ。朝まで降り続くだろう。巣篭もりの季節がもう直ぐにやってくる。
エルランドは深い吐息をついた。リザが眠ったまま、くすぐったそうに首を竦めている。
俺たちはもう、大丈夫だな……リザ。
夜が一番深く暗い時は、夜明けがすぐそこまで来ているのだ。
20
お気に入りに追加
523
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる