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75 実りの時 7*
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二人はどんどん森の奥へと入っていった。
途中苔むした大きな岩があって、その背後に回るといきなり開けた場所に出る。
「ここは?」
リザは伐り出した材木の山に目を丸くした。馬から降りて見ると、材木はリザの身長の二倍は高く積まれている。
「切り出した木材の集積場だ。見つかりにくいところに作った」
「これが鉄樹?」
積まれた材木の中に一際目立つ黒い木材の山がある。
「そうだ。これが鉄樹の丸太」
鉄樹はそれほど太くは育たない。太くてもエルランドの太もも程度だ。しかしその樹肌は真っ黒で、その名の通り鉄のようだった。
「黒い……」
「ああ。それに固いぞ。これ一本伐り倒すのに、大の男が二人がかりで一時間近くもかかる」
「他の木はそんなにかからないの?」
「そうだな、同じ太さの広葉樹なら十分、針葉樹なら十五分ってところか。倍以上の効率の悪さだな。だが、その値打ちはある」
「燃料として優秀なのね」
リザは黒い樹肌を撫でながら言った。
「ああ。これを荷馬車一台分王都まで運べば、一つの村が一ヶ月は食っていける。それほど高く売れるんだ。買うのは主に貴族や大商人達だが」
「だから街道の整備が重要なのね」
「やっぱり俺のリザは賢いな。そうだ、これだけの量なら一財産だ。だが、この冬は荷馬車二十台分は伐採できる。すでに第一陣は王都に向かって荷を運んでいる。これは第二陣のものだ」
「そんなに伐り倒して大丈夫? なくなったりしない?」
「当然植林はしている。だが鉄樹の成長は遅い。だからイストラーダはこれだけには頼れないんだ」
「……私が絵付けした陶器は助けにならないかな?」
リザはふと思いついて言ってみたが、エルランドは難しい顔をした。
「リザを職人にしたくはない。職人は技術を持った優秀な人達だが、俺はリザをそんな風に使いたくはないんだ」
「うん……でも、私はやってみたい。ねぇ、お試しだけでもいいから、鉄樹を王都に運ぶのと一緒に私が描いた陶器も少し持って行って、ウィルターさんに市場へ出してもらってもいい?」
「それくらいなら構わないが……」
「ありがとう!」
作陶は季節はあまり関係ないし、質の良い粘土なら豊富にあるから、もし商品として認められれば、少しはこの地の助けになるかもしれない。リザの夢は膨らんだ。
丸太の山の間をゆるゆると進むと、森の中に小さいが頑丈そうな小屋があった。まだ新しい。
「これは?」
「材木が奪われないようにする見張り小屋だ。今年新しく建てた。夜間は兵士が泊まり込んで交代で見張る」
そう言いながらエルランドは小屋の戸を開けた。
中は意外に広くて清潔で、衝立の向こうには兵士が使うのだろう、大型の寝台が置いてある。薪が整えられた小さな炉や調理器具まであった。床は冷えないように厚地の敷物が敷き詰められている。
「居心地が良さそうね」
「今日いろいろ新たに揃えさせた」
エルランドは炉に火を熾しながら言った。
「今日? お泊まりに来る兵士さんのために?」
「違う。リザのために」
「……え?」
「さすがに夜までは過ごせない。でも、今からしばらくここは俺とリザだけの場所だ」
「……」
「昨日からずっとリザを抱くことだけ考えていた。豪華な部屋でなくてすまないが、リザ」
「はい」
「今、俺の港になってくれないか?」
「港……いいわ。でも一つ約束して?」
リザは抱くという言葉の意味をそのまま受け止めている。
「なんなりと」
「もしこれから先、私が要らなくなっても、イストラーダのどこかに置いてね?」
瞬間、エルランドの金緑の瞳が火を噴くように煌めいた。
彼はたった二歩で、無慈悲なことを平気で言ってのけるリザの腕を引き寄せる。
「リザ」
「なぁに?」
「俺の『愛している』は、そんなに軽いものじゃない。リザを要らなくなることなんてない」
「え?」
長い腕に腰と肩を保定され、リザは身じろぎもできない。
「俺はな、そんなに物に執着しない性だが、絶対に失いたくないものが二つある。それはな。リザとイストラーダだ。俺はこの二つとも絶対に手放さないし、生ある限り愛し、守って見せる!」
「……」
「あなたはもう、俺のものだ」
「……んっ!」
ぶつかるような口づけがリザを襲った。
***
エルランドは小さな唇を貪りながら、ぐいぐいと歩を進めた。
先刻からずっと我慢を重ねているのだ。わずかな距離さえもどかしく、彼は長い腕を伸ばしてリザのスカートをたくし上げる。
脚衣の中の雄は、もうずっといきり立っているのだ。それは帰るべき港を待ち焦がれていた。
衝立の先に寝台がある。男三人が眠っても十分な広さを持っているそれに、倒れ込むように伸しかかりながら、エルランドは自重でリザを潰してしまわないように腕を回した。
「あのっ……服を脱ぐの?」
リザは性急に外套を脱がしにかかったエルランドを見上げた。
「ああ、全部見たいと言ったろう」
「は、恥ずかしいわ。どうしても脱がないとだめ?」
「だめ。脱がなくても可能だが、リザの全部が見たい」
そう言いながらもエルランドはリザの服を脱がしていく。露わになっていく肌に次々に口付けながら、器用に、確実にリザを剥いていく。
そして全て取り払ったとき、エルランドはその無垢な美しさに言葉を失った。
最近やっと肉がついてきて、頬のくぼみが消えたとはいえ、それはあまりに白くて儚げな肢体だったからだ。リザは手を組んで懸命に胸を隠そうとしている。華奢とはいえ、頬から首が朱に染まって背徳的な色気を醸しだし、エルランド思わず生唾を飲み込んだ。
これからこの体を暴く自分が獰猛な獣になったような気がした。いや、すでに獣と化している。
折れそうな手首を掴んで広げると、控えめだが美しい丸みが姿を見せた。
なんて綺麗なんだ……。
それは慎ましくとも、紛れもなく女の持つ曲線だった。
まだまだ豊かになりゆく兆しが窺える。それは彼に手折られるのを待つ美しい蕾。
可哀想だという気持ちがないではない。
しかし、エルランドは明白にそれを無視し、自分の衣服を剥ぎ取ると、後は本能に従って白い肌に唇を寄せた。
「きゃあ!」
先端を含まれてリザが驚きの声をあげる。
「くすぐったいわ!」
「ゆっくりする。目を閉じて俺が触れているところに気をやって」
そう言ってエルランドは、ゆっくりとリザの硬い蕾を愛撫した。たっぷりと体液をまぶして舌先で突き、つんと上を向いたそれに絡めていく。
一方の手でまた彼の手には余る柔らかい膨らみを包み込んだ。
「あっ……あ! んん! これ、変!」
「これからもっと変になる」
無意識に背中を反らし、胸を高く上げたリザに笑いかけて、エルランドは少しずつリザの体を開いていく。
閉じ合わされた膝を割って己の体を差し入れた時、自分の上着で擦れたリザの肌が見えた。
「ああ、少し赤くなってしまった。俺も脱ぐからもう恥ずかしくない。見ててくれ」
そう言ってエルランドは上から順にどんどん衣を脱いでいった。それらは行儀悪く、全部寝台の下に放り出している。
シャツを取り去った時、うっすらとした柔毛に覆われた熱い胸板が現れた。その下の腹筋は深い筋を刻んでいる。
「まぁ、私と全然違うわ」
「もっと違うところがある」
ブーツを放り投げたエルランドは、脚衣から長い足をひき抜いた。
「……」
「どうだ?」
太くて長いものが引き締まった足の間から生えている。
「なんだか変なものが……」
「鉄樹さ」
「ここにも鉄樹があるの?」
「そうだ。あなたの港に帰りたがっている」
「私の港に?」
リザは少し怖気付いたように尻込みした。
その隙に図々しく、エルランドは大きくリザの膝を割る。
「ここがリザの港。だが、まだ満ちてないな」
「……満ちてない? きゃう!」
素肌がぴったりと触れ合い、しっとりと熱が与えられる。雄から立ち昇る濃密な香りが鼻腔を満たした。
そこから先のことは後から考えても、リザにはよくわからなかった。
覚えているのは──。
自分でもよく知らない部分に、ぬるぬると熱いものが這い回り、嫌だと身を捩っても許してもらえなかったこと。
その内に細長い異物が入り込んできて、自分を内側から触られるという考えもしなかった感覚を覚えこまされたこと。
でも、そんなことはただの序の口で、エルランドが鉄樹と呼んだ太くて硬いものが、足の付け根に押し込まれて、生まれて初めて味わう苦痛を強いられたこと。
「リザ! リザ……力を抜いて」
「無理! ああっ、まだ入れるの? 痛いわ!」
「ほんの少しだけでいいから力を抜いて、このままだと入らない」
「ううう……こ、こう?」
「そう……いい子だ。もう少し進めるぞ。うっ、きついな」
「あああ! やっぱり無理!」
「ああ十分だ。このままでもすごくいい」
くしゃくしゃに眉を顰めてリザが喘ぐ。エルランドはリザの体が充分馴染むまで、進める気持ちはなかった。
「そう、大きく息をして。ああ、少しは楽になったか……ゆっくり動くから、辛かったら言ってくれ」
「んんん! すっごく変な感じ……あ! 私の中が動いてる、動いてるわ!」
「ああ、慣らすように動いている。だが、これは……これだけでも……くぅっ!」
「あ! きゃああ!」
めりめりと引き裂かれるような痛みに、大声をあげてしまったこともリザは覚えていない。
ゆっくりと揺さぶられながらも、気遣うように、労るように頬が包み込まれ、唇を塞がれて、熱い吐息と囁きに飲み込まれてしまったのだ。
「大きく息をして……そう、上手だ……とてもいい」
エルランドは素直に自分に従い、必死で腕にしがみついてくるリザに愛おしさを堪えきれない。負担を与えないように緩慢な動きをしているつもりなのに、彼自身も次第に息が上がってくる。
「リザ! リザ! ああ……お前の港に俺を! おう!」
獣のような叫びを聞いたのが最後だった。
***
それから続いた嵐のような時間をリザはよく思い出せない。
ただ、身体中に触れられ、唇を這わされて、何度も高みへと誘われた。自分が何を見て、どんな声を発したかも定かではない。
身体が酷く濡れ、ある一点が敏感になって一番高く昇りつめ、そこで一度意識が途切れている。ただ、その後に突然やってきた突き刺すような痛みのことは後になっても覚えていた。
気がついたら、リザはエルランドの上で眠ってしまっていたのだ。
「あれ? 私……寝てた_」
「眠っていたのは十分くらいだよ。気分は?」
「よくわからない……けど、ちょっときまりがわるいわ」
リザは感じたままを言った。まるで子猫のように、大きくて熱い胸の上に収まっている。二人とも生まれたままの姿だ。
「体が辛いだろう?」
あの瞬間リザは酷く痛がっていた。
実を言うと、エルランドは処女を抱くのは初めてだったのだ。
今まで彼が相手にしてきた女たちは、玄人か、刹那の戯れと割り切れる女ばかりだったので、酔わし酔わされることはあっても、気を遣うことはなかったのである。
リザは初めてだった上に、この体格差だ。酷く辛かったに違いないと思うと、今更ながら自分が獣のように思える。
「ううん。足の間が少し変な感じがするけど、へいき」
「へいき? あなたの平気は信用できないな」
「平気よ。優しくしてくれたのでしょう?」
「……俺にしては随分抑えたつもりだが……最後は夢中にさせられたから」
「夢中? なにに」
「わからない? リザに、リザの体に、リザの心根に。全部」
「そう……このことはこれで終わりなの?」
そこが一番気になるリザは正直に尋ねた。
「今日のところは。でも、これで終わりじゃない」
「うん……」
「まだ俺を疑ってる?」
「ううん」
リザは大きな胸に頬を寄せ、酸っぱいような、苦いような香りを胸いっぱいに吸い込む。
それは不思議な感覚だったが酷く安心できた。
人の体は、こんなにも温かいものだったのね……。
「いつまでもこうしていたいが」
りざを抱き込みながらエルランドが呟く。窓から差し込む光はやや黄色味を帯びていた。
「ええ、もう直ぐ日暮れね……あ!」
起き上がろうとしたリザは、へなへなと敷布に崩れ落ちた。腰から下に力が入らないのだ。
「あれ? 今まで平気だったのに」
「動かなくていい。安心しなさい。俺が全部やってやる」
「う、うん……うん?」
エルランドはそっとリザを下ろすと、素早く自分の身を整え、炉のそばで温めていた鍋を持ってきた。
鍋には温まった水と布が入っている。彼は恥ずかしがるリザの抵抗をものともせずに体を清めると、服を着せ、靴を履かせてやった。
「もう帰るのね?」
「帰りたくはないが。皆がリザを心配するだろう。森の外れにコルが迎えにきているはずだから、リザは疲れたと言って、部屋でゆっくりしているといい。そう言い含めておく」
「わかったわ」
エルランドが密かに戻った少しの間、二人は今までの時間を埋めるように親密に過ごした。
リザは朝、城から歩いて城壁の外のエルランドの家に向かう。彼は村はずれに部屋を借りているのだ。
ウルリーケには不審がられないように、陶器の絵付けをしてくれる娘を広く探しているのだと説明してあった。
エルランドはリザとともに食事をし、馬で森を駆け、午後は森の小屋で長い間愛し合った。
そして二日後、エルランドは再び山に戻る。こうして、夢のようなひと時は終わりを告げた。
しかしリザはもう空虚ではなかった。新たな気持ちで彼の帰りを待つのだ。
イストラーダの女主として。
略奪者が現れたのは、その五日後だった。
途中苔むした大きな岩があって、その背後に回るといきなり開けた場所に出る。
「ここは?」
リザは伐り出した材木の山に目を丸くした。馬から降りて見ると、材木はリザの身長の二倍は高く積まれている。
「切り出した木材の集積場だ。見つかりにくいところに作った」
「これが鉄樹?」
積まれた材木の中に一際目立つ黒い木材の山がある。
「そうだ。これが鉄樹の丸太」
鉄樹はそれほど太くは育たない。太くてもエルランドの太もも程度だ。しかしその樹肌は真っ黒で、その名の通り鉄のようだった。
「黒い……」
「ああ。それに固いぞ。これ一本伐り倒すのに、大の男が二人がかりで一時間近くもかかる」
「他の木はそんなにかからないの?」
「そうだな、同じ太さの広葉樹なら十分、針葉樹なら十五分ってところか。倍以上の効率の悪さだな。だが、その値打ちはある」
「燃料として優秀なのね」
リザは黒い樹肌を撫でながら言った。
「ああ。これを荷馬車一台分王都まで運べば、一つの村が一ヶ月は食っていける。それほど高く売れるんだ。買うのは主に貴族や大商人達だが」
「だから街道の整備が重要なのね」
「やっぱり俺のリザは賢いな。そうだ、これだけの量なら一財産だ。だが、この冬は荷馬車二十台分は伐採できる。すでに第一陣は王都に向かって荷を運んでいる。これは第二陣のものだ」
「そんなに伐り倒して大丈夫? なくなったりしない?」
「当然植林はしている。だが鉄樹の成長は遅い。だからイストラーダはこれだけには頼れないんだ」
「……私が絵付けした陶器は助けにならないかな?」
リザはふと思いついて言ってみたが、エルランドは難しい顔をした。
「リザを職人にしたくはない。職人は技術を持った優秀な人達だが、俺はリザをそんな風に使いたくはないんだ」
「うん……でも、私はやってみたい。ねぇ、お試しだけでもいいから、鉄樹を王都に運ぶのと一緒に私が描いた陶器も少し持って行って、ウィルターさんに市場へ出してもらってもいい?」
「それくらいなら構わないが……」
「ありがとう!」
作陶は季節はあまり関係ないし、質の良い粘土なら豊富にあるから、もし商品として認められれば、少しはこの地の助けになるかもしれない。リザの夢は膨らんだ。
丸太の山の間をゆるゆると進むと、森の中に小さいが頑丈そうな小屋があった。まだ新しい。
「これは?」
「材木が奪われないようにする見張り小屋だ。今年新しく建てた。夜間は兵士が泊まり込んで交代で見張る」
そう言いながらエルランドは小屋の戸を開けた。
中は意外に広くて清潔で、衝立の向こうには兵士が使うのだろう、大型の寝台が置いてある。薪が整えられた小さな炉や調理器具まであった。床は冷えないように厚地の敷物が敷き詰められている。
「居心地が良さそうね」
「今日いろいろ新たに揃えさせた」
エルランドは炉に火を熾しながら言った。
「今日? お泊まりに来る兵士さんのために?」
「違う。リザのために」
「……え?」
「さすがに夜までは過ごせない。でも、今からしばらくここは俺とリザだけの場所だ」
「……」
「昨日からずっとリザを抱くことだけ考えていた。豪華な部屋でなくてすまないが、リザ」
「はい」
「今、俺の港になってくれないか?」
「港……いいわ。でも一つ約束して?」
リザは抱くという言葉の意味をそのまま受け止めている。
「なんなりと」
「もしこれから先、私が要らなくなっても、イストラーダのどこかに置いてね?」
瞬間、エルランドの金緑の瞳が火を噴くように煌めいた。
彼はたった二歩で、無慈悲なことを平気で言ってのけるリザの腕を引き寄せる。
「リザ」
「なぁに?」
「俺の『愛している』は、そんなに軽いものじゃない。リザを要らなくなることなんてない」
「え?」
長い腕に腰と肩を保定され、リザは身じろぎもできない。
「俺はな、そんなに物に執着しない性だが、絶対に失いたくないものが二つある。それはな。リザとイストラーダだ。俺はこの二つとも絶対に手放さないし、生ある限り愛し、守って見せる!」
「……」
「あなたはもう、俺のものだ」
「……んっ!」
ぶつかるような口づけがリザを襲った。
***
エルランドは小さな唇を貪りながら、ぐいぐいと歩を進めた。
先刻からずっと我慢を重ねているのだ。わずかな距離さえもどかしく、彼は長い腕を伸ばしてリザのスカートをたくし上げる。
脚衣の中の雄は、もうずっといきり立っているのだ。それは帰るべき港を待ち焦がれていた。
衝立の先に寝台がある。男三人が眠っても十分な広さを持っているそれに、倒れ込むように伸しかかりながら、エルランドは自重でリザを潰してしまわないように腕を回した。
「あのっ……服を脱ぐの?」
リザは性急に外套を脱がしにかかったエルランドを見上げた。
「ああ、全部見たいと言ったろう」
「は、恥ずかしいわ。どうしても脱がないとだめ?」
「だめ。脱がなくても可能だが、リザの全部が見たい」
そう言いながらもエルランドはリザの服を脱がしていく。露わになっていく肌に次々に口付けながら、器用に、確実にリザを剥いていく。
そして全て取り払ったとき、エルランドはその無垢な美しさに言葉を失った。
最近やっと肉がついてきて、頬のくぼみが消えたとはいえ、それはあまりに白くて儚げな肢体だったからだ。リザは手を組んで懸命に胸を隠そうとしている。華奢とはいえ、頬から首が朱に染まって背徳的な色気を醸しだし、エルランド思わず生唾を飲み込んだ。
これからこの体を暴く自分が獰猛な獣になったような気がした。いや、すでに獣と化している。
折れそうな手首を掴んで広げると、控えめだが美しい丸みが姿を見せた。
なんて綺麗なんだ……。
それは慎ましくとも、紛れもなく女の持つ曲線だった。
まだまだ豊かになりゆく兆しが窺える。それは彼に手折られるのを待つ美しい蕾。
可哀想だという気持ちがないではない。
しかし、エルランドは明白にそれを無視し、自分の衣服を剥ぎ取ると、後は本能に従って白い肌に唇を寄せた。
「きゃあ!」
先端を含まれてリザが驚きの声をあげる。
「くすぐったいわ!」
「ゆっくりする。目を閉じて俺が触れているところに気をやって」
そう言ってエルランドは、ゆっくりとリザの硬い蕾を愛撫した。たっぷりと体液をまぶして舌先で突き、つんと上を向いたそれに絡めていく。
一方の手でまた彼の手には余る柔らかい膨らみを包み込んだ。
「あっ……あ! んん! これ、変!」
「これからもっと変になる」
無意識に背中を反らし、胸を高く上げたリザに笑いかけて、エルランドは少しずつリザの体を開いていく。
閉じ合わされた膝を割って己の体を差し入れた時、自分の上着で擦れたリザの肌が見えた。
「ああ、少し赤くなってしまった。俺も脱ぐからもう恥ずかしくない。見ててくれ」
そう言ってエルランドは上から順にどんどん衣を脱いでいった。それらは行儀悪く、全部寝台の下に放り出している。
シャツを取り去った時、うっすらとした柔毛に覆われた熱い胸板が現れた。その下の腹筋は深い筋を刻んでいる。
「まぁ、私と全然違うわ」
「もっと違うところがある」
ブーツを放り投げたエルランドは、脚衣から長い足をひき抜いた。
「……」
「どうだ?」
太くて長いものが引き締まった足の間から生えている。
「なんだか変なものが……」
「鉄樹さ」
「ここにも鉄樹があるの?」
「そうだ。あなたの港に帰りたがっている」
「私の港に?」
リザは少し怖気付いたように尻込みした。
その隙に図々しく、エルランドは大きくリザの膝を割る。
「ここがリザの港。だが、まだ満ちてないな」
「……満ちてない? きゃう!」
素肌がぴったりと触れ合い、しっとりと熱が与えられる。雄から立ち昇る濃密な香りが鼻腔を満たした。
そこから先のことは後から考えても、リザにはよくわからなかった。
覚えているのは──。
自分でもよく知らない部分に、ぬるぬると熱いものが這い回り、嫌だと身を捩っても許してもらえなかったこと。
その内に細長い異物が入り込んできて、自分を内側から触られるという考えもしなかった感覚を覚えこまされたこと。
でも、そんなことはただの序の口で、エルランドが鉄樹と呼んだ太くて硬いものが、足の付け根に押し込まれて、生まれて初めて味わう苦痛を強いられたこと。
「リザ! リザ……力を抜いて」
「無理! ああっ、まだ入れるの? 痛いわ!」
「ほんの少しだけでいいから力を抜いて、このままだと入らない」
「ううう……こ、こう?」
「そう……いい子だ。もう少し進めるぞ。うっ、きついな」
「あああ! やっぱり無理!」
「ああ十分だ。このままでもすごくいい」
くしゃくしゃに眉を顰めてリザが喘ぐ。エルランドはリザの体が充分馴染むまで、進める気持ちはなかった。
「そう、大きく息をして。ああ、少しは楽になったか……ゆっくり動くから、辛かったら言ってくれ」
「んんん! すっごく変な感じ……あ! 私の中が動いてる、動いてるわ!」
「ああ、慣らすように動いている。だが、これは……これだけでも……くぅっ!」
「あ! きゃああ!」
めりめりと引き裂かれるような痛みに、大声をあげてしまったこともリザは覚えていない。
ゆっくりと揺さぶられながらも、気遣うように、労るように頬が包み込まれ、唇を塞がれて、熱い吐息と囁きに飲み込まれてしまったのだ。
「大きく息をして……そう、上手だ……とてもいい」
エルランドは素直に自分に従い、必死で腕にしがみついてくるリザに愛おしさを堪えきれない。負担を与えないように緩慢な動きをしているつもりなのに、彼自身も次第に息が上がってくる。
「リザ! リザ! ああ……お前の港に俺を! おう!」
獣のような叫びを聞いたのが最後だった。
***
それから続いた嵐のような時間をリザはよく思い出せない。
ただ、身体中に触れられ、唇を這わされて、何度も高みへと誘われた。自分が何を見て、どんな声を発したかも定かではない。
身体が酷く濡れ、ある一点が敏感になって一番高く昇りつめ、そこで一度意識が途切れている。ただ、その後に突然やってきた突き刺すような痛みのことは後になっても覚えていた。
気がついたら、リザはエルランドの上で眠ってしまっていたのだ。
「あれ? 私……寝てた_」
「眠っていたのは十分くらいだよ。気分は?」
「よくわからない……けど、ちょっときまりがわるいわ」
リザは感じたままを言った。まるで子猫のように、大きくて熱い胸の上に収まっている。二人とも生まれたままの姿だ。
「体が辛いだろう?」
あの瞬間リザは酷く痛がっていた。
実を言うと、エルランドは処女を抱くのは初めてだったのだ。
今まで彼が相手にしてきた女たちは、玄人か、刹那の戯れと割り切れる女ばかりだったので、酔わし酔わされることはあっても、気を遣うことはなかったのである。
リザは初めてだった上に、この体格差だ。酷く辛かったに違いないと思うと、今更ながら自分が獣のように思える。
「ううん。足の間が少し変な感じがするけど、へいき」
「へいき? あなたの平気は信用できないな」
「平気よ。優しくしてくれたのでしょう?」
「……俺にしては随分抑えたつもりだが……最後は夢中にさせられたから」
「夢中? なにに」
「わからない? リザに、リザの体に、リザの心根に。全部」
「そう……このことはこれで終わりなの?」
そこが一番気になるリザは正直に尋ねた。
「今日のところは。でも、これで終わりじゃない」
「うん……」
「まだ俺を疑ってる?」
「ううん」
リザは大きな胸に頬を寄せ、酸っぱいような、苦いような香りを胸いっぱいに吸い込む。
それは不思議な感覚だったが酷く安心できた。
人の体は、こんなにも温かいものだったのね……。
「いつまでもこうしていたいが」
りざを抱き込みながらエルランドが呟く。窓から差し込む光はやや黄色味を帯びていた。
「ええ、もう直ぐ日暮れね……あ!」
起き上がろうとしたリザは、へなへなと敷布に崩れ落ちた。腰から下に力が入らないのだ。
「あれ? 今まで平気だったのに」
「動かなくていい。安心しなさい。俺が全部やってやる」
「う、うん……うん?」
エルランドはそっとリザを下ろすと、素早く自分の身を整え、炉のそばで温めていた鍋を持ってきた。
鍋には温まった水と布が入っている。彼は恥ずかしがるリザの抵抗をものともせずに体を清めると、服を着せ、靴を履かせてやった。
「もう帰るのね?」
「帰りたくはないが。皆がリザを心配するだろう。森の外れにコルが迎えにきているはずだから、リザは疲れたと言って、部屋でゆっくりしているといい。そう言い含めておく」
「わかったわ」
エルランドが密かに戻った少しの間、二人は今までの時間を埋めるように親密に過ごした。
リザは朝、城から歩いて城壁の外のエルランドの家に向かう。彼は村はずれに部屋を借りているのだ。
ウルリーケには不審がられないように、陶器の絵付けをしてくれる娘を広く探しているのだと説明してあった。
エルランドはリザとともに食事をし、馬で森を駆け、午後は森の小屋で長い間愛し合った。
そして二日後、エルランドは再び山に戻る。こうして、夢のようなひと時は終わりを告げた。
しかしリザはもう空虚ではなかった。新たな気持ちで彼の帰りを待つのだ。
イストラーダの女主として。
略奪者が現れたのは、その五日後だった。
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危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
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