42 / 57
41 ひとときの休息 5
しおりを挟む
レーゼはふらふらと階段を上っていった。
湯に浸かり過ぎ、その上カーネリアの迫力に押されて、体力をすっかり使い果たしてまったのだ。
髪もろくに乾かせていないから、背中はぐっしょりと濡れている。
部屋は三階だが、二階へ続く階段でついに座り込んでしまった。
『取らないで』
って、あの人は言ってた。
よくわからないけど、私とナギが一緒にいてはダメなんだろうか?
考えなくちゃと思うのに、頭がぐるぐる回って部屋にもたどり着けない。
「レーゼ様!」
気がつくとクチバが除き込んでいた。
「どうなさいました!」
「あ、クチバ……大丈夫よ」
「そんな顔色ではありませんな」
浮遊感がするのは抱き上げられたのだろう。階段を登るリズムを感じる。
「レーゼ!」
部屋から飛び出してきたのはナギだ。
「どうした! 何があった!?」
ナギは素早くレーゼの顔を確かめた。
「魔女の攻撃か!?」
「違う。私が宿舎の見張りから帰ってきたら、階段にうずくまっておられた」
「俺が運ぶ」
ナギは素早くレーゼをクチバから取り戻す。
「すっかり冷たくなっているじゃないか!」
「ともかく部屋へ!」
「ああ」
レーゼはすぐさま部屋へと運ばれ、乾いた布で濡れた髪を包み込まれた。
「服も湿っています。これ以上体が冷える前に着替えを」
「ああ。だが……」
レーゼは女の子だ、男の自分が服を脱がしていいわけがないとナギは焦った。
「大丈夫。少し長くお湯に浸かり過ぎただけだから……」
「でも着替えないと、布団まで湿ってしまう」
「じゃあ、ナギが手伝って」
「え! それはできない」
「じゃあこのままで」
レーゼは気だるげに答えた。自分が何を言っているのか、よくわかっていないのだろう。
「わ、わかった! 手伝う。着替えはどこにある?」
「横の戸棚に……」
「これですね」
出してくれたのはクチバだ。
「俺は出ています。ナギ、頼んだぞ。信じているからな」
そう言い残して無情にクチバは出ていく
「うう……じゃあ俺は目を瞑っているから!」
「なんで?」
「いいから、服を脱がすぞ!」
それからの数分間はナギにとって、今までのどの戦いで味わった経験より、緊張と集中を必要とするものとなった。
ぐったりとしているレーゼの服を脱がし、手探りでクチバがそばに置いていった服を着せる。
夏場なので替えの服がゆったりしていて、着せやすかったのがせめてもの救いだが、それでも時々柔らかい素肌に触れてしまうのはどうしようもなかった。
「最後に、この紐を結べばいいんだな」
ナギは固く目を瞑ったまま、最後の紐をよじり合わせる。多少難儀したが、なんとか蝶々結びが出来上がり、着せ替えは終了した。
「レーゼ。もういいな、目を開けるぞ」
レーゼが何も言わないので、ナギは恐る恐る目を開いた。
彼がみたのは──。
真っ白いシーツに広がる湿った髪、ボタンを一つ掛け違えた寝巻きと、ペンダントを巻き込んでしまった胸元の蝶々結び、そして悲しそうなレーゼの顔だった。
「レーゼ? 辛いか? 寒いのか?」
「ううん。私ってやっぱり見るのも嫌なほど醜いの?」
「……っ!」
「ごめんなさい。嫌なことさせて」
「ち、違う! 俺が目を閉じてたのはレーゼが女の子だからだ! 男は女の子の裸を見ちゃいけないんだ! 昔ルビアも言ってたろ!」
「そうだっけ……?」
「そうだよ。女の子はむやみに素肌を見せたらダメだ。レーゼみたいに綺麗な子は絶対に」
「……」
「まだしんどいか?」
「うん、ちょっと目が回るの。でも、喉乾いた。お水ちょうだい」
「水? あこれか。待ってろ、枕を重ねるから」
ナギはそう言って予備の枕をレーゼに頭の下に重ねる。上体が少し持ち上がったが、レーゼはまだ辛そうにしていた。
「すぐに飲ませてやる」
そう言ってナギは口に水を含むと、ゆっくりとレーゼに水を飲ませる。
レーゼの小さな喉が、ナギの含んだ水を飲み下すたびにこくんと動き、ナギを困惑させた。
だめだ。
こんな気持ちになってはいけない。
汚い気持ちでレーゼを見てはだめだ。
もうすぐにエニグマとの決戦が待ち構えているというのに。
「レーゼ?」
気がつくとレーゼは眠っていた。微かに微笑んでいる。
ナギはくれた口元を拭いてやり、まだ少し湿った額に唇を落とすと、傍の長椅子に横になった。
彼の長身にやや寝心地が悪いが、レーゼのことが心配だったのだ。何事もなければ朝早く自室に戻ればいいだろう。
「おやすみ、レーゼ」
──その時。
『若者よ』
「……っ!」
声はビャクランのもので、レーゼの胸元で守り石が小さく光る。
「あんたか。まさか一緒に風呂に入っていたんじゃないだろうな」
『もちろん、入ったとも。私は彼女の守り人だからな。あ、待て待て。殺気はよしてくれ』
ビャクランは慌てたような声になったが、ナギの殺気は収まらない。ただ、実体がないのでどうしようもないだけだ。まさかレーゼの胸にある石に触れるわけにもいかない。
「……」
『心配せずとも良い。私はちゃんと眠っていた。やれやれ若者よ』
守り石が淡く光り始める。
光は人の像を結んでナギの前に立った。彼よりもまだ背が高く、古めかしい服装の男だ。
「お前がビャクラン?」
『そうだ。この姿になるのは久しぶりだ。結構疲れるから、滅多にしないんだけど』
「……ならなんで出てきた?」
『若者とは、少し話をしたほうがいいと思ったからね。孫娘と言っていいレーゼに、邪な気持ちは起きないよ。落ち着いたかい?』
ビャクランは透けるような光の姿で微笑んだ。
「あんたはゴールディフロウの王族だったんだろう?」
『そうだ。滅んだ王──レーゼの祖父のことだが、それより五代くらい前になるかな? その辺りは眠っていたので曖昧なんだよ』
「力と能力を有した王だと聞いたが、その割に若いな」
ナギを若者と呼ぶ割にはビャクランも、さほど歳の変わらない青年の姿をしている。
『まぁ、一番美しかった頃の姿で現れたいのは人情だろう』
「……」
ナギは嫌そうな顔つきになっている。
『あのな若者、私はそなたには少しくらい感謝されてもいいんだぞ。彼女の呪いの進行を遅らせたのも、能力を増長させたのも私なのだからな!』
「それはまぁ……」
『それからな。風呂で、良い体付きをした赤毛の娘が、レーゼに絡んでおったぞ』
「……眠っていたんじゃなかったのか?」
『ちょっとだけ目を覚ましたんだ。あ、こら! 剣に手をかけるな! 私はレーゼの守り人だ、危険な気配を察知するのは当然だろう!?』
ナギは無言で手を下ろす。
「……で、カーネリア、彼女が何を?」
『鈍感な男だな。つまり、そなたを挟んで女同士の火花のやりとりよ』
「俺を挟んで火花のやりとり……?」
『あ~、モテる男が無知なのは罪だな。つまり、あの赤毛の娘は、そなたに横恋慕しておるのだ。だからレーゼに喧嘩を売ったと』
「俺が守るのはレーゼだけだ。カーネリアは強いから」
『……』
ビャクランは半目になってナギを見ていたが、やがて首を振った。
『まぁ、これ以上私が口を挟むのも野暮というものだろう。それに長くこの姿を晒すわけにもいかんからな。とにかく、レーゼを大切にしてくれ。この娘は我が王家の良心のようなものだ』
「わかっている」
『それからエニグマだが、彼女は東北を拠点としているが、新たに島を作ってそこに立てこもっている』
「島だと!?」
『そうだ。そなた達のことを脅威と感じ、陸から攻め込まれないように、魔力で島を作った。そこには塔のような山が聳え、波も荒く、近づくのは容易ではない』
「……」
『しかし一方で、これは彼女が脅威を感じている証拠でもある。さて、私が教えられるのはここまでだ。戦いに備えてまた眠らなければならない。レーゼを頼んだぞ』
そう言ってビャクランの姿はかき消えた。後には眠るレーゼと、青い宝石が光るのみだった。
「お前、レーゼ様に何か言っただろう」
クチバは風呂から上がったカーネリアを見つけて問いかけた。
「別に? お風呂で少し女の子同士の話をしていただけよ、おっさん」
「ナギは今レーゼの部屋にいるぞ」
おっさんと呼ばれたことは無視して、クチバは無情に告げる。
「えっ!」
カーネリアの顔色がさっと変わる。表情の豊かな娘だと、クチバは思った。
「まぁ、釘を刺しておいたし、ナギはナギだから、心配するようなことは決してない」
「……」
「なぁ、カーネリア。もし誰かに自分を認めさせたいなら、己の価値は己で示すことだ」
「……」
「お前は若くて美しい。そして戦士としても優秀だ。およそ女の持つ魅力は全て持っている。そしてそれはレーゼ様も同じ。あの方はこんな俺でも救ってくれた」
「ふ、ふん! 誰にも情けを下さる女神様ってわけ? 男ってちょろいわね!」
「他人を貶めることは、自分をも貶める。かつて俺がそうだったように。だがレーゼ様を傷つけることは許さない。あの方は、お前が思うほど弱くはないぞ」
「……わかってるわよ」
「もう一度行っておく。お前の価値はお前でしめせ。お前を慕う人は大勢いるぞ、カーネリア。俺も、お前には大いに期待している」
クチバはそう言ってカーネリアの前から去った。
暗い廊下には、唇を噛み締める赤毛の娘が残った。
湯に浸かり過ぎ、その上カーネリアの迫力に押されて、体力をすっかり使い果たしてまったのだ。
髪もろくに乾かせていないから、背中はぐっしょりと濡れている。
部屋は三階だが、二階へ続く階段でついに座り込んでしまった。
『取らないで』
って、あの人は言ってた。
よくわからないけど、私とナギが一緒にいてはダメなんだろうか?
考えなくちゃと思うのに、頭がぐるぐる回って部屋にもたどり着けない。
「レーゼ様!」
気がつくとクチバが除き込んでいた。
「どうなさいました!」
「あ、クチバ……大丈夫よ」
「そんな顔色ではありませんな」
浮遊感がするのは抱き上げられたのだろう。階段を登るリズムを感じる。
「レーゼ!」
部屋から飛び出してきたのはナギだ。
「どうした! 何があった!?」
ナギは素早くレーゼの顔を確かめた。
「魔女の攻撃か!?」
「違う。私が宿舎の見張りから帰ってきたら、階段にうずくまっておられた」
「俺が運ぶ」
ナギは素早くレーゼをクチバから取り戻す。
「すっかり冷たくなっているじゃないか!」
「ともかく部屋へ!」
「ああ」
レーゼはすぐさま部屋へと運ばれ、乾いた布で濡れた髪を包み込まれた。
「服も湿っています。これ以上体が冷える前に着替えを」
「ああ。だが……」
レーゼは女の子だ、男の自分が服を脱がしていいわけがないとナギは焦った。
「大丈夫。少し長くお湯に浸かり過ぎただけだから……」
「でも着替えないと、布団まで湿ってしまう」
「じゃあ、ナギが手伝って」
「え! それはできない」
「じゃあこのままで」
レーゼは気だるげに答えた。自分が何を言っているのか、よくわかっていないのだろう。
「わ、わかった! 手伝う。着替えはどこにある?」
「横の戸棚に……」
「これですね」
出してくれたのはクチバだ。
「俺は出ています。ナギ、頼んだぞ。信じているからな」
そう言い残して無情にクチバは出ていく
「うう……じゃあ俺は目を瞑っているから!」
「なんで?」
「いいから、服を脱がすぞ!」
それからの数分間はナギにとって、今までのどの戦いで味わった経験より、緊張と集中を必要とするものとなった。
ぐったりとしているレーゼの服を脱がし、手探りでクチバがそばに置いていった服を着せる。
夏場なので替えの服がゆったりしていて、着せやすかったのがせめてもの救いだが、それでも時々柔らかい素肌に触れてしまうのはどうしようもなかった。
「最後に、この紐を結べばいいんだな」
ナギは固く目を瞑ったまま、最後の紐をよじり合わせる。多少難儀したが、なんとか蝶々結びが出来上がり、着せ替えは終了した。
「レーゼ。もういいな、目を開けるぞ」
レーゼが何も言わないので、ナギは恐る恐る目を開いた。
彼がみたのは──。
真っ白いシーツに広がる湿った髪、ボタンを一つ掛け違えた寝巻きと、ペンダントを巻き込んでしまった胸元の蝶々結び、そして悲しそうなレーゼの顔だった。
「レーゼ? 辛いか? 寒いのか?」
「ううん。私ってやっぱり見るのも嫌なほど醜いの?」
「……っ!」
「ごめんなさい。嫌なことさせて」
「ち、違う! 俺が目を閉じてたのはレーゼが女の子だからだ! 男は女の子の裸を見ちゃいけないんだ! 昔ルビアも言ってたろ!」
「そうだっけ……?」
「そうだよ。女の子はむやみに素肌を見せたらダメだ。レーゼみたいに綺麗な子は絶対に」
「……」
「まだしんどいか?」
「うん、ちょっと目が回るの。でも、喉乾いた。お水ちょうだい」
「水? あこれか。待ってろ、枕を重ねるから」
ナギはそう言って予備の枕をレーゼに頭の下に重ねる。上体が少し持ち上がったが、レーゼはまだ辛そうにしていた。
「すぐに飲ませてやる」
そう言ってナギは口に水を含むと、ゆっくりとレーゼに水を飲ませる。
レーゼの小さな喉が、ナギの含んだ水を飲み下すたびにこくんと動き、ナギを困惑させた。
だめだ。
こんな気持ちになってはいけない。
汚い気持ちでレーゼを見てはだめだ。
もうすぐにエニグマとの決戦が待ち構えているというのに。
「レーゼ?」
気がつくとレーゼは眠っていた。微かに微笑んでいる。
ナギはくれた口元を拭いてやり、まだ少し湿った額に唇を落とすと、傍の長椅子に横になった。
彼の長身にやや寝心地が悪いが、レーゼのことが心配だったのだ。何事もなければ朝早く自室に戻ればいいだろう。
「おやすみ、レーゼ」
──その時。
『若者よ』
「……っ!」
声はビャクランのもので、レーゼの胸元で守り石が小さく光る。
「あんたか。まさか一緒に風呂に入っていたんじゃないだろうな」
『もちろん、入ったとも。私は彼女の守り人だからな。あ、待て待て。殺気はよしてくれ』
ビャクランは慌てたような声になったが、ナギの殺気は収まらない。ただ、実体がないのでどうしようもないだけだ。まさかレーゼの胸にある石に触れるわけにもいかない。
「……」
『心配せずとも良い。私はちゃんと眠っていた。やれやれ若者よ』
守り石が淡く光り始める。
光は人の像を結んでナギの前に立った。彼よりもまだ背が高く、古めかしい服装の男だ。
「お前がビャクラン?」
『そうだ。この姿になるのは久しぶりだ。結構疲れるから、滅多にしないんだけど』
「……ならなんで出てきた?」
『若者とは、少し話をしたほうがいいと思ったからね。孫娘と言っていいレーゼに、邪な気持ちは起きないよ。落ち着いたかい?』
ビャクランは透けるような光の姿で微笑んだ。
「あんたはゴールディフロウの王族だったんだろう?」
『そうだ。滅んだ王──レーゼの祖父のことだが、それより五代くらい前になるかな? その辺りは眠っていたので曖昧なんだよ』
「力と能力を有した王だと聞いたが、その割に若いな」
ナギを若者と呼ぶ割にはビャクランも、さほど歳の変わらない青年の姿をしている。
『まぁ、一番美しかった頃の姿で現れたいのは人情だろう』
「……」
ナギは嫌そうな顔つきになっている。
『あのな若者、私はそなたには少しくらい感謝されてもいいんだぞ。彼女の呪いの進行を遅らせたのも、能力を増長させたのも私なのだからな!』
「それはまぁ……」
『それからな。風呂で、良い体付きをした赤毛の娘が、レーゼに絡んでおったぞ』
「……眠っていたんじゃなかったのか?」
『ちょっとだけ目を覚ましたんだ。あ、こら! 剣に手をかけるな! 私はレーゼの守り人だ、危険な気配を察知するのは当然だろう!?』
ナギは無言で手を下ろす。
「……で、カーネリア、彼女が何を?」
『鈍感な男だな。つまり、そなたを挟んで女同士の火花のやりとりよ』
「俺を挟んで火花のやりとり……?」
『あ~、モテる男が無知なのは罪だな。つまり、あの赤毛の娘は、そなたに横恋慕しておるのだ。だからレーゼに喧嘩を売ったと』
「俺が守るのはレーゼだけだ。カーネリアは強いから」
『……』
ビャクランは半目になってナギを見ていたが、やがて首を振った。
『まぁ、これ以上私が口を挟むのも野暮というものだろう。それに長くこの姿を晒すわけにもいかんからな。とにかく、レーゼを大切にしてくれ。この娘は我が王家の良心のようなものだ』
「わかっている」
『それからエニグマだが、彼女は東北を拠点としているが、新たに島を作ってそこに立てこもっている』
「島だと!?」
『そうだ。そなた達のことを脅威と感じ、陸から攻め込まれないように、魔力で島を作った。そこには塔のような山が聳え、波も荒く、近づくのは容易ではない』
「……」
『しかし一方で、これは彼女が脅威を感じている証拠でもある。さて、私が教えられるのはここまでだ。戦いに備えてまた眠らなければならない。レーゼを頼んだぞ』
そう言ってビャクランの姿はかき消えた。後には眠るレーゼと、青い宝石が光るのみだった。
「お前、レーゼ様に何か言っただろう」
クチバは風呂から上がったカーネリアを見つけて問いかけた。
「別に? お風呂で少し女の子同士の話をしていただけよ、おっさん」
「ナギは今レーゼの部屋にいるぞ」
おっさんと呼ばれたことは無視して、クチバは無情に告げる。
「えっ!」
カーネリアの顔色がさっと変わる。表情の豊かな娘だと、クチバは思った。
「まぁ、釘を刺しておいたし、ナギはナギだから、心配するようなことは決してない」
「……」
「なぁ、カーネリア。もし誰かに自分を認めさせたいなら、己の価値は己で示すことだ」
「……」
「お前は若くて美しい。そして戦士としても優秀だ。およそ女の持つ魅力は全て持っている。そしてそれはレーゼ様も同じ。あの方はこんな俺でも救ってくれた」
「ふ、ふん! 誰にも情けを下さる女神様ってわけ? 男ってちょろいわね!」
「他人を貶めることは、自分をも貶める。かつて俺がそうだったように。だがレーゼ様を傷つけることは許さない。あの方は、お前が思うほど弱くはないぞ」
「……わかってるわよ」
「もう一度行っておく。お前の価値はお前でしめせ。お前を慕う人は大勢いるぞ、カーネリア。俺も、お前には大いに期待している」
クチバはそう言ってカーネリアの前から去った。
暗い廊下には、唇を噛み締める赤毛の娘が残った。
1
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

37才にして遂に「剣神」の称号を得ましたが、20年前に自分を振った勇者のパーティのエルフの女剣士に今更求婚されました。
カタナヅキ
ファンタジー
20年前、異世界「マテラ」に召喚された「レオ」は当時の国王に頼まれて魔王退治の旅に出る。数多くの苦難を乗り越え、頼りになる仲間達と共に魔王を打ち倒す。旅の終わりの際、レオは共に旅をしていた仲間のエルフ族の剣士に告白するが、彼女から振られてしまう。
「すまないレオ……私は剣の道に生きる」
彼女はそれだけを告げると彼の前から立ち去り、この一件からレオは彼女の選んだ道を追うように自分も剣一筋の人生を歩む。英雄として生きるのではなく、只の冒険者として再出発した彼は様々な依頼を引き受け、遂には冒険者の頂点のSランクの階級を与えられる。
勇者としてではなく、冒険者の英雄として信頼や人望も得られた彼は冒険者を引退し、今後は指導者として冒険者ギルドの受付員として就職を果たした時、20年前に別れたはずの勇者のパーティの女性たちが訪れる。
「やっと見つけた!!頼むレオ!!私と結婚してくれ!!」
「レオ君!!私と結婚して!!」
「頼む、娘と結婚してくれ!!」
「はあっ?」
20年の時を迎え、彼は苦難を共に乗り越えた仲間達に今度は苦悩される日々を迎える。
※本格的に連載するつもりはありませんが、暇なときに投稿します。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる