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第31話:夜風にあたって
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「───と、これが事件の真相よ。」
「そうか。」
部屋のバルコニーに出て夜風にあたりながら、私は日中ナターシャ様から聞いた話をそのまま隣のアストラに話した。
淡々と話す私と、黙ってそれを聞き特に驚く様子もなく飲み込むアストラ、という図だった。
「ショックとか、そういうのは無いのね」
「王宮の中の誰かが犯人だっていうのは分かっていたことだろう?」
「それはそう。」
「その人とは別に仲が良いわけでもなかったし…彼女はミコを侮辱するような言葉を吐いたから、むしろ嫌いまであるかな」
ニッコリと綺麗な笑顔で他人を嫌いと言ってのけるアストラ。
ここまで清々しいと面白いなと思いながら、私は彼に体をあずけて息をついた。
「ナターシャ様から話を受けたことで、私が動く大義名分は得た。あともうひと仕事しないとね…」
「本当に頑張ってくれているよね。ありがとう」
アストラは私の頭を優しく撫でて、肩を抱く。
「そのもうひと仕事、どうこなす?」
「んー…正直悩んでて。証拠となりそうなものは処分されてしまっているみたいだし…密室二人きりで行われた嫌がらせじゃ目撃者なんかもいなさそうだから、証人も期待できない」
私が言うと、少し考えたアストラがあまり乗り気じゃない様子ながら提案した。
「証拠も証人も無いのなら、作ればいい。」
「!……なるほどね」
「うん。でもこの状況だと…ミコが少し大変な役割になりそうだから、オススメは出来ないかな」
「それは仕方ないじゃない。受け入れるわよ」
「僕が気乗りしないっていう話」
「もう…」
心配してくれているということだろう。ちょっと嬉しく思いつつ、呆れたような顔をしてみせる。
そんな私を見たアストラは、私の髪を指にからめながら小さく笑った。
「気乗りはしない。でも心配もしてないよ」
「うん、心配はいらない。でも必要な時は助けてね」
「もちろん。…そろそろ中に入ろうか。」
「そうね。」
私たちは踵を返して、揃って部屋の中に戻る。
「ミコ」
「ん?どうし……」
名前を呼ばれて振り返ると、すぐにキスをされた。
私は起こったことを理解する時間の分遅れて赤くなりながら、「なんで今…」とアストラの服を掴む。
「さっき、君から体をあずけてきたのが可愛かったから。つい。」
「それけっこう前じゃない…?」
「大事な話の最中は流石にあれかなと思ってね」
ずっとこうしようと考えていたんだろうか。大事な話の最中だと分かっているんだからその大事な話に集中してほしい。
集中してほしいと考えつつ嬉しく思っている自分にも喝を入れたい。
なんならさっきのキスは不意打ちで短かったのでもう一度してほしいと思っている自分は彼の思うツボすぎるので飛び膝蹴りをかましたい。
「……」
「あれ。物欲しそうな顔してどうしたの?」
「してない……いや、やっぱり嘘…もう一回、して」
私の心の中を秒で読んでくるアストラが、意地悪そうに笑って顔を覗き込んできた。悔しいので否定しようかと思ったけれど、ここは理性が敗北した。
「話に集中しろって怒られるかと思ったよ」
「それとこれとは話が別なの」
「ふふ、はいはい」
アストラはからかうように笑いながらも愛おしそうに私の顔に手を添えて、「お望み通りに」ともう一度キスをしてくれた。
「そうか。」
部屋のバルコニーに出て夜風にあたりながら、私は日中ナターシャ様から聞いた話をそのまま隣のアストラに話した。
淡々と話す私と、黙ってそれを聞き特に驚く様子もなく飲み込むアストラ、という図だった。
「ショックとか、そういうのは無いのね」
「王宮の中の誰かが犯人だっていうのは分かっていたことだろう?」
「それはそう。」
「その人とは別に仲が良いわけでもなかったし…彼女はミコを侮辱するような言葉を吐いたから、むしろ嫌いまであるかな」
ニッコリと綺麗な笑顔で他人を嫌いと言ってのけるアストラ。
ここまで清々しいと面白いなと思いながら、私は彼に体をあずけて息をついた。
「ナターシャ様から話を受けたことで、私が動く大義名分は得た。あともうひと仕事しないとね…」
「本当に頑張ってくれているよね。ありがとう」
アストラは私の頭を優しく撫でて、肩を抱く。
「そのもうひと仕事、どうこなす?」
「んー…正直悩んでて。証拠となりそうなものは処分されてしまっているみたいだし…密室二人きりで行われた嫌がらせじゃ目撃者なんかもいなさそうだから、証人も期待できない」
私が言うと、少し考えたアストラがあまり乗り気じゃない様子ながら提案した。
「証拠も証人も無いのなら、作ればいい。」
「!……なるほどね」
「うん。でもこの状況だと…ミコが少し大変な役割になりそうだから、オススメは出来ないかな」
「それは仕方ないじゃない。受け入れるわよ」
「僕が気乗りしないっていう話」
「もう…」
心配してくれているということだろう。ちょっと嬉しく思いつつ、呆れたような顔をしてみせる。
そんな私を見たアストラは、私の髪を指にからめながら小さく笑った。
「気乗りはしない。でも心配もしてないよ」
「うん、心配はいらない。でも必要な時は助けてね」
「もちろん。…そろそろ中に入ろうか。」
「そうね。」
私たちは踵を返して、揃って部屋の中に戻る。
「ミコ」
「ん?どうし……」
名前を呼ばれて振り返ると、すぐにキスをされた。
私は起こったことを理解する時間の分遅れて赤くなりながら、「なんで今…」とアストラの服を掴む。
「さっき、君から体をあずけてきたのが可愛かったから。つい。」
「それけっこう前じゃない…?」
「大事な話の最中は流石にあれかなと思ってね」
ずっとこうしようと考えていたんだろうか。大事な話の最中だと分かっているんだからその大事な話に集中してほしい。
集中してほしいと考えつつ嬉しく思っている自分にも喝を入れたい。
なんならさっきのキスは不意打ちで短かったのでもう一度してほしいと思っている自分は彼の思うツボすぎるので飛び膝蹴りをかましたい。
「……」
「あれ。物欲しそうな顔してどうしたの?」
「してない……いや、やっぱり嘘…もう一回、して」
私の心の中を秒で読んでくるアストラが、意地悪そうに笑って顔を覗き込んできた。悔しいので否定しようかと思ったけれど、ここは理性が敗北した。
「話に集中しろって怒られるかと思ったよ」
「それとこれとは話が別なの」
「ふふ、はいはい」
アストラはからかうように笑いながらも愛おしそうに私の顔に手を添えて、「お望み通りに」ともう一度キスをしてくれた。
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