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第28話:直接行くわ。
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「私が直接フィノン家に行くわ。」
「さすがに行動的すぎやしない?」
セルバスさん、パトリシアさんと話したその日の夜。
私はアストラが帰ってくるやいなや、ナターシャ様と直接会って話すという意志を伝えた。
「君のそういう突然大胆になるところは嫌いじゃないけども。今のナターシャ嬢が、王宮から来た人間とすんなり会ってくれるとは思えないよ。しかもその目的は聴取…」
「ナターシャ様の性格的に、押せばいけるわ。ヴァネッサ様を見習うのよ。申し訳ないけれど事情が事情…是が非でも対応しなければいけない状況を作って乗り込む」
「必要な時は割り切って容赦を無くせるところも嫌いじゃないけども」
まあ確かにね、とアストラは腕を組む。
「それが一番手っ取り早い。でもそうしてこなかったのは、安易に行動に移せないような事だからだよ。」
アストラの言いたいことは分かる。
ナターシャ様は公爵家のご令嬢で元王太子妃候補で気弱で…乗り込んで話を聞こうと思っても相手が相手というやつだ。
エレーナ様に自ら相談した時も加害者の名前を出さないような方だし、会ったところで正直に受けた被害を話してくれるかはわからない。
「分かった上で乗り込むと言うのなら、もう任せるけどね」
「任せて。ヴァネッサ様とナターシャ様のやり取りはばっちり視て頭に入っているから、それを活かしてナターシャ様に押し勝つことだって出来るはず」
「ヴァネッサ嬢は一体ナターシャ嬢に何をしたの?」
本当に分かっているのかと笑顔のまま疑ってくるアストラ。分かっていますとも。
ちゃんと、私にも考えはある。
「…まあ、君のことだし。考え無しではないんだろうね。」
「ええ」
「じゃあ一つだけ聞いておくけど、“是が非でも対応しなければいけない状況”っていうのはどう作るのかな。…まさかアポ無し突撃だとか言うんじゃ」
「言うわよ」
「やっぱり…」
強引だろうとナターシャ様と話す状況さえ作れれば、あとはどうにか出来る。手段は選ばずにいく。
「あなたの名前は使うし、必要とあればレオヴィル殿下の名前も使うから、そこはよろしく。」
「僕は全然許可するよ。殿下の名前の使い方には気をつけてね」
火の扱いに気をつけてねみたいなノリで第一王子の名前の乱用を許可してくれる側近アストラ。
「そうだ、私からも一つ確認しておきたいことがある」
「どうぞ。」
「ナターシャ様が王太子妃候補に復帰するのは望ましいこと?」
「!…ああ。殿下の精神衛生上というのもそうだけど、ナターシャ嬢は心優しく国民からの人望が厚い。まだ未熟な面は目立つかもしれないけれど、“平和なラトナティア”を築き上げるには必要な方だよ」
「そう。それならいいわ」
私は胸に手を当てて宣言する。
「この占い娘が、ナターシャ・フィノン様を王太子殿下の元へ連れ戻しましょう」
アストラは私の言葉を聞くと、そう来なくっちゃというように、口の端を上げて笑った。
「さすがに行動的すぎやしない?」
セルバスさん、パトリシアさんと話したその日の夜。
私はアストラが帰ってくるやいなや、ナターシャ様と直接会って話すという意志を伝えた。
「君のそういう突然大胆になるところは嫌いじゃないけども。今のナターシャ嬢が、王宮から来た人間とすんなり会ってくれるとは思えないよ。しかもその目的は聴取…」
「ナターシャ様の性格的に、押せばいけるわ。ヴァネッサ様を見習うのよ。申し訳ないけれど事情が事情…是が非でも対応しなければいけない状況を作って乗り込む」
「必要な時は割り切って容赦を無くせるところも嫌いじゃないけども」
まあ確かにね、とアストラは腕を組む。
「それが一番手っ取り早い。でもそうしてこなかったのは、安易に行動に移せないような事だからだよ。」
アストラの言いたいことは分かる。
ナターシャ様は公爵家のご令嬢で元王太子妃候補で気弱で…乗り込んで話を聞こうと思っても相手が相手というやつだ。
エレーナ様に自ら相談した時も加害者の名前を出さないような方だし、会ったところで正直に受けた被害を話してくれるかはわからない。
「分かった上で乗り込むと言うのなら、もう任せるけどね」
「任せて。ヴァネッサ様とナターシャ様のやり取りはばっちり視て頭に入っているから、それを活かしてナターシャ様に押し勝つことだって出来るはず」
「ヴァネッサ嬢は一体ナターシャ嬢に何をしたの?」
本当に分かっているのかと笑顔のまま疑ってくるアストラ。分かっていますとも。
ちゃんと、私にも考えはある。
「…まあ、君のことだし。考え無しではないんだろうね。」
「ええ」
「じゃあ一つだけ聞いておくけど、“是が非でも対応しなければいけない状況”っていうのはどう作るのかな。…まさかアポ無し突撃だとか言うんじゃ」
「言うわよ」
「やっぱり…」
強引だろうとナターシャ様と話す状況さえ作れれば、あとはどうにか出来る。手段は選ばずにいく。
「あなたの名前は使うし、必要とあればレオヴィル殿下の名前も使うから、そこはよろしく。」
「僕は全然許可するよ。殿下の名前の使い方には気をつけてね」
火の扱いに気をつけてねみたいなノリで第一王子の名前の乱用を許可してくれる側近アストラ。
「そうだ、私からも一つ確認しておきたいことがある」
「どうぞ。」
「ナターシャ様が王太子妃候補に復帰するのは望ましいこと?」
「!…ああ。殿下の精神衛生上というのもそうだけど、ナターシャ嬢は心優しく国民からの人望が厚い。まだ未熟な面は目立つかもしれないけれど、“平和なラトナティア”を築き上げるには必要な方だよ」
「そう。それならいいわ」
私は胸に手を当てて宣言する。
「この占い娘が、ナターシャ・フィノン様を王太子殿下の元へ連れ戻しましょう」
アストラは私の言葉を聞くと、そう来なくっちゃというように、口の端を上げて笑った。
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