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果たせない約束
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この角を曲がって行ったのは間違いないんだけれど……
狭い路地には怪しい夜の店が隙間なく立ち並び、人はまばらでひっそりとしていた。
まだ昼間だからどこも閉まっている。レオの相手はつまり……そういうお仕事の女性ということなのだろうか。
胸がチクチクと痛みながらも探していると、栗毛の青年が前を塞いだ。
「おまえが売人か?」
突然のことで意味がわからないでいると、青年は語尾を強めてきた。
「この街の者じゃないな?頭巾を取って顔をよく見せるんだっ!」
この青年は何者なんだろう……こんなところでミリアム妃だとバレたら非常に不味いのではないだろうか……
「わ、私っ、ただの町娘なので!」
逃げる私に青年は待て!と言いながら追いかけてきた。
前からも仲間らしき男が何人も集まってきて行く手を阻まれてしまい、頭に付けていた頭巾を奪い取られた。
「えっ……ミリアム妃?!」
その特徴的な髪色にすぐに私だとバレてしまった。
私は元々は敵国の王女だ……なにをされるかわからない。
早くこの場から逃げなきゃと思うけれども、体格のいい屈強な男達に取り囲まれた恐怖で腰が抜けてしまった。
「怯えてるだろっ!下がれ!!」
誰かが人だかりに割って入ってきて地面にへたれ込む私を優しく抱き上げてくれた。
「なぜミリアムがここにいる?それになんだその格好は?」
「………レオ?」
レオの顔を見てホッとしたけれど、なんて説明をしよう……浮気の有無を確かめに追いかけてきただなんて恥ずかしくて言えないっ。
私の代わりに青年が答えた。
「コソコソとして行動が非常に怪しかったので、もしかしたら売人かもしれません。」
「………ミリアムが売人?」
そんなわけがあるか!!とレオがみんなを一喝した。
聞けば最近アヘンという依存性の強い麻薬が入り込んできたらしく、広まる前に根絶しようとレオを中心とした自警団で日夜動き回っているのだという。
潜入捜査だったんだ。私ったらなんて勘違いを………
「良かったあレオが浮気してるんじゃなくて。」
「あ?俺が浮気だとっ?!」
しまった……ついうっかり口を滑らせてしまった。
レオは怒りでわなわなと口を震わせているのに、自警団の人達は嬉しそうに冷やかしてきた。
「旦那の浮気を疑って城から抜け出してきたってわけか!」
「うっほ~レオ愛されてるねえ~。」
「一人で尾行とは勇気あるじゃねえか!愛だねえ愛!」
なんだか私がレオにぞっこんラブみたいな話になっている……
栗毛の青年がニヤニヤしながらレオの肩をポンと叩いた。
「俺らもレオに早く帰れって言ってんだけどさあ、なんかミリアム様のことが好きすぎて二人になるのが照れくさいみたい。」
「フィリップ!勝手な憶測を言うなっ!」
この人達は元騎士団だから王族や貴族のご子息なのだろうけれども、それにしても皇太子であるレオとなんて気さくな関係なのだろう……
「ミリアムもミリアムだ!なんで俺が浮気をしてるだなんて思うんだ!バカなのかっ?!」
「だ、だってレオは夜二人っきりでいても私のことを全然構ってくれないじゃないですかっ!」
とんでもないことを口走ってしまった。
まるでおねだりしてるみたいで顔から火が出そうになったのだが、私以上にレオの顔は真っ赤だった。
「なっ……そんなことをこいつらの前で言うなっ!」
周りから一斉にブーイングが起こった。
「そりゃレオが悪いっ!」
「可愛い新妻になんて惨い仕打ちだっ。」
「疲れてようが夜の相手はきちんとやれ。愛想つかされんぞ?」
みんなレオに言いたい放題だ。
「うるさい貴様ら!持ち場に戻れっ!!」
みんながダラダラと退散する中、フィリップという青年がコソッと近付いてきて私に耳打ちした。
「レオって普段は頼れる皇太子なんだけど、色恋に関してはてんでネンネでさあ。不安にはなるだろうけど一途なやつだから安心して。」
「フィリップっ!今なにを告げ口した?!」
さあね~と言いながらフィリップは笑いながら去っていった。
安心してと言われても……こんなことをしでかしてしまったし、今度こそ完全に嫌われたんじゃないだろうか………
不機嫌そうなレオに深々と頭を下げて謝り、もう帰ろうと歩き出したら腕を掴まれた。
「一人でどこに行く?」
「も、もちろん城に戻って大人しくしております!」
レオは私のことをギロリと睨むと、私の腕を掴んだまま城とは反対方向の海に向かって歩き出した。
どこに行くのかと聞きたいけれど恐ろしくて聞けないっ。私、このまま海に突き落とされたりしないよね?
「港の広場でお祭りをしている。少し寄っていこう。」
照れたようにレオが呟いた。
「えっ、わ、私を誘ってるんですかっ?」
「他に誰がいる!!」
レオからのまさかのデートのお誘いに、胸の辺りにくすぐったいような感情が込み上げてきた。
「あの、でも私……頭巾を被っていません。」
「変装する必要なんかない。その祭りはミリアムを歓迎するイベントなのだからな。」
………えっ………
────────私を……?
お祭り会場はとても賑わっていた。
魔女やドラキュラなど思い思いの衣装で着飾り、中には私の髪色を真似て作った毛糸のカツラを被った子供までいた。
舞台では音楽家や歌手、役者、手品師達が芸を披露していて、中央ではダンスやゲームも催されており、屋台からは美味しそうな匂いが漂っていた。
みんな……幸せそうだった。
「私は嫌われているのだと思っていました……」
式典での参列者達の視線は冷ややかだった。
城の中で親しげに話しかけてくれるのはアビだけだ。
長年戦争をして苦しめられてきた国の王女なんて、民《たみ》からは到底受け入れられるはずがないと思っていた。
空にたなびく旗の文字を読んで、涙が溢れてきた。
そこには……
我が国へようこそ!美しき花嫁・ミリアム妃!!
と……大きく描かれていた─────………
「おおレオ様!いつもパトロールご苦労さまです!」
「今日はミリアム様まで一緒じゃないですかあ!」
「ミリアム様、ご結婚おめでとうございますっ。」
私達に気付いた人々がたくさんの祝福の言葉をかけてくれた。みんな気さくで優しくて、パワフルだ。
「ミリアム姫様、これあげる。」
一人の小さな少女が私に花冠をプレゼントしてくれた。頭に被せると、レオが良く似合っていると褒めてくれた。
舞台から四分の三拍子の軽快な音楽が鳴り出した。人々は手に手を取り合い、大きな輪になって踊り始めた。
レオが私に向かって拳を突き出してきた。
「レオ様、コブシで誘ってどうするんですか!それじゃあ決闘の申し込みですよっ。」
「女性をダンスに誘う時は手の平をそっと差し伸べるんです。ホント女性の扱いがなってないんだからっ。」
「うるさいなおまえら!あっちに行ってろ!!」
街の人からもレオはとても愛されていた。
レオは私の手を取り、ダンスを踊っている輪の中へと引き込んだ。
「あの夜のことは言葉がきつくなって不快な思いをさせてしまい悪かった。謝らなければとは思っていたんだ。」
ワルツを踊りながら、レオが耳元で囁くように呟いた。
「俺はただ……ミリアムに自分を好きになってもらってから結ばれたかったんだ。」
あなたの言葉一つでこんなにも胸が熱くなる。
どうか私だけを見ていて欲しいと願ってしまう。
一秒でも長く……あなたと一緒にいたいと思う。
これを恋と言うならば……
私は……
私はもうとっくに────────……
「レオ……顔が真っ赤。」
「こんなセリフを照れずに言えるかっ。」
それでも伝えようとしてくれるレオの優しさがたまらなく嬉しい……
許されるのであればすぐにでもその愛を全て受け入れて、私の体の奥底までを満たして欲しい……
「全てが片付いたら、ミリアムの行きたいところにどこへだって連れて行ってやる。考えておけ。」
全てとはアヘンのことだろうか……
「どこでもいいのですか?」
「ああ。ミリアムにちゃんと俺の事を惚れさせないといけないからな。」
こういうことはサラッと言えちゃうんだ。十分照れくさいセリフだと思うんだけれど……
真顔で言ってくるもんだからこっちが恥ずかしくなってきた。
「言っとくが、俺は惚れさせる自信があるからな。」
レオは私を見つめながら優しく微笑んだ。
その大人びた笑顔に、トドメを刺されてしまった。
「どうしたミリアム、顔が真っ赤だぞ?トマトジュースでもかかったのか?」
「もうっレオの意地悪!見ないで下さいっ。」
自分の悲運を受け入れるのが当たり前になっていた。
運良く悪いことから逃れられても、その先に待っているのはさらなる絶望しかないのだと……
失うことへの恐怖に怯えて生きてきた。
望むものはどうせ手に入らないからと、なにも抗うことなく諦めていた………
でも私だって……なにかを叶えようと願ってもいいはずだ。
───────思い通りになんかさせない。
先ずはスティルス陛下に伝えよう……
ドレン帝国は最初から和平など望んではいないと。
それどころか、命を狙うために毒を持った暗殺者を送り込んでいるのだと。
こんな平和な国の国王を死なせるわけにはいかない。
問題は一人残してきた母をどうやって救うかだ。
母の五歳児の知能ではあの城から一人で逃げ出すなんて不可能だ。
でもきっとあの人なら、助けてくれるかもしれない……
とにかく時間が無い。
暗殺命令が下るよりも早くに
動き出さないと─────────……
狭い路地には怪しい夜の店が隙間なく立ち並び、人はまばらでひっそりとしていた。
まだ昼間だからどこも閉まっている。レオの相手はつまり……そういうお仕事の女性ということなのだろうか。
胸がチクチクと痛みながらも探していると、栗毛の青年が前を塞いだ。
「おまえが売人か?」
突然のことで意味がわからないでいると、青年は語尾を強めてきた。
「この街の者じゃないな?頭巾を取って顔をよく見せるんだっ!」
この青年は何者なんだろう……こんなところでミリアム妃だとバレたら非常に不味いのではないだろうか……
「わ、私っ、ただの町娘なので!」
逃げる私に青年は待て!と言いながら追いかけてきた。
前からも仲間らしき男が何人も集まってきて行く手を阻まれてしまい、頭に付けていた頭巾を奪い取られた。
「えっ……ミリアム妃?!」
その特徴的な髪色にすぐに私だとバレてしまった。
私は元々は敵国の王女だ……なにをされるかわからない。
早くこの場から逃げなきゃと思うけれども、体格のいい屈強な男達に取り囲まれた恐怖で腰が抜けてしまった。
「怯えてるだろっ!下がれ!!」
誰かが人だかりに割って入ってきて地面にへたれ込む私を優しく抱き上げてくれた。
「なぜミリアムがここにいる?それになんだその格好は?」
「………レオ?」
レオの顔を見てホッとしたけれど、なんて説明をしよう……浮気の有無を確かめに追いかけてきただなんて恥ずかしくて言えないっ。
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「………ミリアムが売人?」
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聞けば最近アヘンという依存性の強い麻薬が入り込んできたらしく、広まる前に根絶しようとレオを中心とした自警団で日夜動き回っているのだという。
潜入捜査だったんだ。私ったらなんて勘違いを………
「良かったあレオが浮気してるんじゃなくて。」
「あ?俺が浮気だとっ?!」
しまった……ついうっかり口を滑らせてしまった。
レオは怒りでわなわなと口を震わせているのに、自警団の人達は嬉しそうに冷やかしてきた。
「旦那の浮気を疑って城から抜け出してきたってわけか!」
「うっほ~レオ愛されてるねえ~。」
「一人で尾行とは勇気あるじゃねえか!愛だねえ愛!」
なんだか私がレオにぞっこんラブみたいな話になっている……
栗毛の青年がニヤニヤしながらレオの肩をポンと叩いた。
「俺らもレオに早く帰れって言ってんだけどさあ、なんかミリアム様のことが好きすぎて二人になるのが照れくさいみたい。」
「フィリップ!勝手な憶測を言うなっ!」
この人達は元騎士団だから王族や貴族のご子息なのだろうけれども、それにしても皇太子であるレオとなんて気さくな関係なのだろう……
「ミリアムもミリアムだ!なんで俺が浮気をしてるだなんて思うんだ!バカなのかっ?!」
「だ、だってレオは夜二人っきりでいても私のことを全然構ってくれないじゃないですかっ!」
とんでもないことを口走ってしまった。
まるでおねだりしてるみたいで顔から火が出そうになったのだが、私以上にレオの顔は真っ赤だった。
「なっ……そんなことをこいつらの前で言うなっ!」
周りから一斉にブーイングが起こった。
「そりゃレオが悪いっ!」
「可愛い新妻になんて惨い仕打ちだっ。」
「疲れてようが夜の相手はきちんとやれ。愛想つかされんぞ?」
みんなレオに言いたい放題だ。
「うるさい貴様ら!持ち場に戻れっ!!」
みんながダラダラと退散する中、フィリップという青年がコソッと近付いてきて私に耳打ちした。
「レオって普段は頼れる皇太子なんだけど、色恋に関してはてんでネンネでさあ。不安にはなるだろうけど一途なやつだから安心して。」
「フィリップっ!今なにを告げ口した?!」
さあね~と言いながらフィリップは笑いながら去っていった。
安心してと言われても……こんなことをしでかしてしまったし、今度こそ完全に嫌われたんじゃないだろうか………
不機嫌そうなレオに深々と頭を下げて謝り、もう帰ろうと歩き出したら腕を掴まれた。
「一人でどこに行く?」
「も、もちろん城に戻って大人しくしております!」
レオは私のことをギロリと睨むと、私の腕を掴んだまま城とは反対方向の海に向かって歩き出した。
どこに行くのかと聞きたいけれど恐ろしくて聞けないっ。私、このまま海に突き落とされたりしないよね?
「港の広場でお祭りをしている。少し寄っていこう。」
照れたようにレオが呟いた。
「えっ、わ、私を誘ってるんですかっ?」
「他に誰がいる!!」
レオからのまさかのデートのお誘いに、胸の辺りにくすぐったいような感情が込み上げてきた。
「あの、でも私……頭巾を被っていません。」
「変装する必要なんかない。その祭りはミリアムを歓迎するイベントなのだからな。」
………えっ………
────────私を……?
お祭り会場はとても賑わっていた。
魔女やドラキュラなど思い思いの衣装で着飾り、中には私の髪色を真似て作った毛糸のカツラを被った子供までいた。
舞台では音楽家や歌手、役者、手品師達が芸を披露していて、中央ではダンスやゲームも催されており、屋台からは美味しそうな匂いが漂っていた。
みんな……幸せそうだった。
「私は嫌われているのだと思っていました……」
式典での参列者達の視線は冷ややかだった。
城の中で親しげに話しかけてくれるのはアビだけだ。
長年戦争をして苦しめられてきた国の王女なんて、民《たみ》からは到底受け入れられるはずがないと思っていた。
空にたなびく旗の文字を読んで、涙が溢れてきた。
そこには……
我が国へようこそ!美しき花嫁・ミリアム妃!!
と……大きく描かれていた─────………
「おおレオ様!いつもパトロールご苦労さまです!」
「今日はミリアム様まで一緒じゃないですかあ!」
「ミリアム様、ご結婚おめでとうございますっ。」
私達に気付いた人々がたくさんの祝福の言葉をかけてくれた。みんな気さくで優しくて、パワフルだ。
「ミリアム姫様、これあげる。」
一人の小さな少女が私に花冠をプレゼントしてくれた。頭に被せると、レオが良く似合っていると褒めてくれた。
舞台から四分の三拍子の軽快な音楽が鳴り出した。人々は手に手を取り合い、大きな輪になって踊り始めた。
レオが私に向かって拳を突き出してきた。
「レオ様、コブシで誘ってどうするんですか!それじゃあ決闘の申し込みですよっ。」
「女性をダンスに誘う時は手の平をそっと差し伸べるんです。ホント女性の扱いがなってないんだからっ。」
「うるさいなおまえら!あっちに行ってろ!!」
街の人からもレオはとても愛されていた。
レオは私の手を取り、ダンスを踊っている輪の中へと引き込んだ。
「あの夜のことは言葉がきつくなって不快な思いをさせてしまい悪かった。謝らなければとは思っていたんだ。」
ワルツを踊りながら、レオが耳元で囁くように呟いた。
「俺はただ……ミリアムに自分を好きになってもらってから結ばれたかったんだ。」
あなたの言葉一つでこんなにも胸が熱くなる。
どうか私だけを見ていて欲しいと願ってしまう。
一秒でも長く……あなたと一緒にいたいと思う。
これを恋と言うならば……
私は……
私はもうとっくに────────……
「レオ……顔が真っ赤。」
「こんなセリフを照れずに言えるかっ。」
それでも伝えようとしてくれるレオの優しさがたまらなく嬉しい……
許されるのであればすぐにでもその愛を全て受け入れて、私の体の奥底までを満たして欲しい……
「全てが片付いたら、ミリアムの行きたいところにどこへだって連れて行ってやる。考えておけ。」
全てとはアヘンのことだろうか……
「どこでもいいのですか?」
「ああ。ミリアムにちゃんと俺の事を惚れさせないといけないからな。」
こういうことはサラッと言えちゃうんだ。十分照れくさいセリフだと思うんだけれど……
真顔で言ってくるもんだからこっちが恥ずかしくなってきた。
「言っとくが、俺は惚れさせる自信があるからな。」
レオは私を見つめながら優しく微笑んだ。
その大人びた笑顔に、トドメを刺されてしまった。
「どうしたミリアム、顔が真っ赤だぞ?トマトジュースでもかかったのか?」
「もうっレオの意地悪!見ないで下さいっ。」
自分の悲運を受け入れるのが当たり前になっていた。
運良く悪いことから逃れられても、その先に待っているのはさらなる絶望しかないのだと……
失うことへの恐怖に怯えて生きてきた。
望むものはどうせ手に入らないからと、なにも抗うことなく諦めていた………
でも私だって……なにかを叶えようと願ってもいいはずだ。
───────思い通りになんかさせない。
先ずはスティルス陛下に伝えよう……
ドレン帝国は最初から和平など望んではいないと。
それどころか、命を狙うために毒を持った暗殺者を送り込んでいるのだと。
こんな平和な国の国王を死なせるわけにはいかない。
問題は一人残してきた母をどうやって救うかだ。
母の五歳児の知能ではあの城から一人で逃げ出すなんて不可能だ。
でもきっとあの人なら、助けてくれるかもしれない……
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