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彼女のガキんちょ 中編
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──────運動会当日。
空は気持ちが良いくらい晴れ渡っていて、10月だというのに暑いくらいだった。
千夏さんから事前に渡されていた関係者証明書のカードを入口の人に見せて幼稚園に入ると、ちょうど開会式が始まったところだった。
たくさんの幼稚園児が軽快な音楽に合わせて入場門からトラックの中へと行進していく。
こんなにうじゃうじゃいたんじゃガキがどこにいるかなんてわからない。
みんなキチンと列になって歩いてはいるが、中には泣いてる子もいて先生に抱っこされていた。
おしっこ~と急に言い出す子もいて、先生が慌ててトイレへと連れていく。
幼稚園の先生って結構重労働だな……
千夏さんはどこに座っているんだろうか?
確かガキはパンダ組だったよな。
保護者は園児と一緒にクラスごとに座る。
パンダ組と書かれた一角の最前列で、千夏さんが俺に向かって手を振っているのが見えた。
「千夏さんすごいですね。一番前じゃないですか。」
「まあねぇ前の晩から並んだから。」
千夏さんは得意げに答えたのだけど…前の晩てマジかよ?!
他の最前列の人達を見ると、パパ達が眠そうな目をしていた。
幼稚園の運動会の席取り争いって凄まじいな……
千夏さん…俺に頼めばいいのに。
相変わらず一人で無理するんだから……
にしても──────
若いママさんて意外と多いんだな。
とても子持ちには見えないアイドルみたいな人とか、女優かと思うくらい綺麗な人までいる。
最近のママの質の高さに驚いていると、千夏さんから思いっきり耳を引っ張られた。
「痛たたっ!なんすか千夏さんっ!」
「鼻の下伸びてるからっ。」
千夏さんが頬を膨らませてからプイッとそっぽを向いた。
えっ……なにこれ?
もしかして千夏さんヤキモチやいた?
やべっ…なんかすげぇ嬉しいんだけど……
「……千夏さんが一番可愛いですよ。」
「はあっ?!クリリンなに言ってんのっ?他のママさんに手ぇ出したら殺すからね!!」
こんな場所で中指おっ立てんのはどうかと思う。
「出しませんよ。俺、最近全然そんな気になれないんで。」
「なにクリリン…その若さでインポ?」
だからこんな場所でど下ネタはどうかと思う……
開会式から帰ってきたガキが席に座る俺を見つけて飛びついてきた。
相変わらず可愛いやつだ。
ギュって抱きしめてグリグリと頬ずりをした。
「ねぇ親子競技、クリリンが出てよ。」
「親子競技?」
親と園児が二人で力を合わせてする種目で、年長さんは障害物競走と借り物競争がくっついたものをするらしい。
千夏さんからも是非にとお願いされてしまった。
どうも運動の苦手な千夏さんは、年少の時も年中の時もぶっちぎりの最下位でとても恥かしかったらしい。
別にいいけど…いいのかな。俺なんかが出ても。
年長さんの親子競技はプログラムの三番目。
大盛り上がりの年長さんによるクラス対抗リレーは午後の部のラストらしい。
「おいガキ。やるからには一位取るぞ。」
「うんっ!」
そう言ってガキと右手をパチンと合わせた。
まずは先生から競技についての説明を受けた。
ボールを手を使わずに二人の体で挟みながら、ハードルを越えたり平均台を渡ったり大玉を転がしたりするらしい。
思っていたより難しそうだ。
それから紙を引いて、そこに書かれてあるものを借りてきてゴールするらしい。
自分達の順番が来るまでガキと並んで待っていた。
前の順番の人らがボロボロとボールを落としまくっている。
張り切りすぎて顔から転けてるパパまでいた。
「寧々ちゃん頑張れ──っ!」
ガキが応援する方を見ると、大きな赤いリボンを付けた女の子がママと一緒に大玉を転がしていた。
あれが言ってた好きな子か…なかなか可愛らしい子じゃん。
寧々ちゃんは残念ながら二位だった。
ガキががっくりと肩を落とす……
「寧々ちゃんの分も一位取ってやろうな。」
そう言ってガキの頭をくしゃくしゃっとしたのだが……
「一位は無理だよ。俺がいるもん。」
横から生意気そうなデブが話しかけてきた。
なんだこいつはっ?
「この子、マーク君。幼稚園で一番足が早いの……」
こいつが言ってた恋敵か?!
デブなのに…走れるデブってやつか?
リレーのアンカーだけでなく、親子競技も一緒なのか…これは負けられないっ。
「すいません、うちの子が……」
隣に座っていたデブのママが謝ってきた。
さっき見かけた女優みたいに綺麗なママだった。
子供の運動会だっていうのに不似合いなくらいオシャレをしていて、香水プンプン、足元はハイヒールを履いていた。
確かに綺麗なんだけどちょっと…いやかなり違うよな。
俺達の番が回ってきて、ピストルが鳴り響いた。
ボールの扱いは得意だ。
落ちそうになっても足でひょいと受け止め、障害物はなんなくクリアしてトップで通過した。
後ろを見るとデブが最下位だった。
まあ母親があんな靴じゃね…可哀想に。
ガキが借り物を選ぶ紙を引くと、そこに書かれていたのは「ヒゲ」だった。
…………ヒゲ?
ヒゲってのはあれか?ヒゲが生えてる人ってことだよな。
無精髭はOKなのだろうか……
いや、ヒゲって書いてるんだから、それ相当の立派なヒゲじゃないといけないような気がする。
せっかく一位になれても、これはヒゲじゃないですと失格になるのだけは避けたい。
「クリリンあの人は?」
「あれは剃り跡が濃いだけだ。ヒゲじゃない。」
ヒゲなんて年いった人が生やしてるイメージだ。
幼稚園児をもつこんな若いパパさんらが生やしてたりする?
探してるうちにあとから来た子らが追いついてきた。
メガネや白いタオルなど簡単そうな借り物ばかりで、どんどん抜かされていってしまった。まずい……
本部席のテントに、白くて長いヒゲの生えたおじぃちゃんが座っているのをようやく見つけた。
俺は飛んでいってテントからそのおじぃちゃんを引きづり出した。
「おいっじぃさん、もっと早く走れ!」
「ふぉっふぉっふぉ。これが全速力ですわい。」
「マーク君にも抜かされちゃうよ~。」
ガキが泣きそうになりながら言った。
見ると、最下位だったあのデブがもうゴールへと迫っていた。
あいつに先を越されたら俺達がべべになってしまう。
にしてもこのじぃさん遅いっ遅すぎるっ!
ヒゲだけ引きちぎっていきたいとこだが、そんなことをするわけにはいかない。
俺はじぃさんの背中と膝の裏に手を伸ばし、お姫様抱っこをした。
保護者席からどよめきが上がったがそんなこと知ったこっちゃない。
「ガキ急ぐぞっ。転ばずに付いてこいよ!」
「うんっ!」
そのままじぃさんを抱えてゴールまで突っ走ったんだが、健闘むなしく最下位だった。
くっそお~っ。
「ふぉっふぉっふぉ。大丈夫ですかな?」
地面に項垂れる俺にじぃさんが話しかけてきた。
「大丈夫じゃねえっ。じぃさんもっと死ぬ気で走れよ!」
じぃさんに文句を言っていると後ろからぶん殴られた。
「いったぁ~なんすかっ千夏さん?!」
「なんすかじゃねえ!!園長先生になにしでかしてんだゴラァ!!」
えっ……園長先生?
千夏さんは園長先生に土下座する勢いで謝っていた。
園長先生はふぉっふぉっふぉっとヒゲを撫でながら楽しそうに笑っていた。
良かった…気の良さそうな人で。
パンダ組の保護者席に戻ると拍手で出迎えられてしまった。
みんな一生懸命声援を送ってくれていたらしい。
面白かったと褒められてしまった。
ガキからも頑張ってくれてありがとうとお礼を言われた。
年長さんが流行りの曲に合わせてダンスを踊っている。
横で千夏さんがその姿を収めようと一生懸命ビデオを回していた。
千夏さんだけじゃない。
みんな、我が子のその時にしかないその姿を、思い出と共に映像に刻もうとしていた。
年長さんは今年で幼稚園最後の運動会だ。
感極まって泣いているママもいる。
千夏さんもその一人で……
「千夏さん…泣きすぎです。」
「うるさいっ……あんなに小さかったのにって思ったら…涙が止まらないのよっ。」
そう言ってまたボロボロと泣き出した。
ビデオはちゃんと撮れているのだろうか………
子供を育てるのははたから見てても大変だろうなって思う。
でも…大変だった分、その子を愛おしく思えるのだろうし強くなれるんだと思う。
他では決して得ることの出来ない形にはないものを、自分の子供からたくさんもらえるんだろうなって……
とても…羨ましく見えた。
俺の母親は俺からなにかをもらえたのだろうか?
なんで────…………
………なんで俺のことを捨てたんだろう………
「クリリン?」
千夏さんが俺の顔を下から覗き込むようにして見ていた。
近いっ!
「おわっ、なんすか千夏さんっ?」
「もうお昼の時間だから。お弁当作ってきたから食べよ。」
千夏さんは日影にゴザを敷き、お弁当を並べた。
唐揚げにタコさんウィンナーに卵焼き…どれも全部美味しそうだった。
「残したら許さないからね。」
「10代の男の胃袋舐めないで下さい。」
「僕もお腹ペッコペコ~。」
ガキは体のサイズに似合わず、すごい食欲だった。
負けてられない。
二人してがっつくもんだから千夏さんに落ち着いて食べろと怒られた。
青空の下で手作りのお弁当を食べるのってこんなにも気持ちが良いものなんだ……
こういうのを何気ない幸せって言うんだろうな。
卵焼きをパクっと一口で頬張ると、意外なくらい甘かった。
「ゴメン、卵焼き甘すぎでしょ?たっ君が甘いのが好きなの。」
「えーっ卵焼きは甘い方がいいでしょ?クリリンは塩っぱい方が好きなの?」
「いや…俺は……」
言葉に詰まる……
俺は母親から卵焼きを作ってもらったことなんてない。
「ねぇねぇ、ママの卵焼き寧々ちゃんにもわけてあげていい?」
「はいはい。ちゃんと用意しといたよ。」
可愛くラッピングされた卵焼きをママから受け取ると、ガキは寧々ちゃんを探しにいった。
俺はまた卵焼きを口に頬張った。
「うまいっすよ。この卵焼き。」
「ありがとう。今度…塩っぱいのも作ってあげるね。」
そう言って千夏さんはニッコリと微笑んだ。
─────千夏さんは多分気付いている。
俺が過去に、母親となにかがあったことを……
でもそれには触れずに、俺のことを励まそうとしてくれている。
そんな千夏さんの優しさが
この卵焼きみたいに甘くて温かくて
心地良かった────────
午後の部のプログラムが始まった。
まだ体の小さな幼稚園児は体力がそんなにはないので、午後からの種目は少ない。
あっという間にラストの年長さんによるクラス対抗リレーとなった。
年長さんは全部で5クラスある。
1クラス20人全員が順番に走り、ひとつのバトンを繋ぐのだ。
デブがいるクラスはライオン組。
いかにも強そうな名前だ。
ガキが言うには、毎回パンダ組とライオン組がアンカーにバトンを渡すまで抜きつ抜かれつで一位を争っていて、最後の自分の番でいつも負けてしまうのだという……
でもあれだけ特訓したんだ。
本番の今日は絶対に勝ってやるっ。
「では皆さん、頑張って応援しましょう。エイエイオー。」
パンダ組の先生はいかにも新人さんて感じのおっとりした人だった。
「じゃあ皆さん気合い入れて応援するわよーっ!!」
一方、ライオン組の先生はベテランの人らしく、猛獣みたいに迫力のある人だった。
ピストルが鳴らされ、第一走者がスタートした。
リレーは最初からパンダ組とライオン組が他の組とかなりの差をつけ、2つの組による白熱した先頭争いとなった。
保護者席の応援にも熱が入る。
そんな中、五番目にバトンを受け取ったパンダ組の子が転倒してしまった。
頭に大きな赤いリボンを付けた女の子…寧々ちゃんだった。
派手に転んだ寧々ちゃんに、みんな言葉を失ってしまった。大丈夫なのだろうか……
「寧々ちゃん頑張って──────!!」
ガキが立ち上がって大声で叫んだ。
その声につられるようにパンダ組の子らがワーワー応援し始めた。
寧々ちゃんはなんとか立ち上がり、泣きながらも次の走者にバトンを渡したのだが、順番は一気に最下位へと転落してしまった。
ライオン組は他を大きく引き離して一位を独走していた。
ライオン組の保護者席は大盛り上がりなのに対して、パンダ組はお通夜かってくらい静まり返ってしまった。
「皆さんゴメンなさいっ!」
寧々ちゃんのお母さんがペコペコと頭を下げて謝り出した。
幼稚園最後の運動会、ラストのクラス対抗リレー。
本来ならトップ争いが出来るクラスなのに自分の子が足を引っ張り最下位になってしまった。
責任を感じたんだろうが、俺には理解出来なかった。
「なんで謝るんですか!寧々ちゃん怪我したのに頑張って次の子にちゃんとバトン渡したんですよ?褒めてあげて下さいっ!」
寧々ちゃんのお母さんが俺の言葉に目を潤ませた。
「千夏さんっ!今走ってる子の名前なにっ?!」
「えっ……け、ケンタ君だけど?」
早く走るには幾つかのコツがある。
一番大事なのは正しい姿勢。
それに気を付けるだけで見違えるくらい速く走れるようになる。
「ケンタ───!背中伸ばせ────っ!!」
俺がそう叫ぶとケンタ君はこちらをチラリと見てから背中を伸ばした。
すると足が高く上がるようになり、ぐんと走る速度が増した。
パンダ組の保護者から拍手がわき起こった。
「好きなもん叫びながらバトン渡せ────!!」
「クリリンなにそれっ?」
「『シャウト効果』っていって、大きな声を上げたら少しの間だけ筋出力がアップするんだ。」
ケンタ君は唐揚げ───!と叫びながら次の子にバトンを渡した。
「今走ってるのはミヨちゃんて言います!あの子にもなにかアドバイスをっ!」
パンダ組の先生が俺の腕にしがみついてきた。
意外と勝ち負けにこだわるタイプのようだ。
「あの子はそうだな……アゴが前に出すぎてる。もっと引かないといけない。」
先生はミヨちゃんにアゴを引いてと大声で連呼した。
最後にミヨちゃんもキュアプリ───!と叫びながらバトンを渡した。
俺が早く走れるようにアドバイスを言うと、パンダ組の保護者全員で走っている子に声援とともに大声で伝えた。
最後はみんな好きなものを叫びながらバトンを繋いでいく……
いつしか順位は上がり、パンダ組はライオン組に継いで2位となっていた。
その差もどんどん縮まっていく……
いけるかもしれない──────
「たっ君…寧々ちゃんて言いながらゴールするかも。」
「それで一位になったら落ちない女なんていないでしょうね。」
「母親としては複雑なんだけどね。」
千夏さんは顔では笑っていたけれど、ビデオを持つ手が小刻みに震えていた。
こんな緊迫した中で自分の子供が責任重大なアンカーなのだ。
母親なら緊張しないわけがない。いや…本人以上に緊張しているのかもしれない。
俺は千夏さんが持つビデオを取り上げた。
「ビデオは俺が撮りますんで、千夏さんはその目でガキが走るとこをちゃんと見てあげて下さい。」
千夏さんが不安そうな目で俺を見た。
「大丈夫です。あいつ…ビックリするくらい早くなりましたから。」
いよいよ次はアンカーの出番だ。
みんなは半周だが、アンカーだけはグランドを一周する。
ガキは俺が教えた通りに筋肉の緊張を緩めるためにぴょんぴょんとジャンプをしていた。
落ち着いた表情をしている…頼もしいじゃん。
一位であるライオン組との差はわずか1メートルとなっていて、ほぼ同時に2人にバトンが渡った。
デブの走りを見てビビった。
誰かに教わったんだろうか……姿勢が完璧だ。
腕の振り方も膝の上げ方も文句の付けようがない。
こんなに走れるとは思わなかった……
ジリジリと差は縮まってきてはいるものの、抜かせるかどうかは微妙かもしれない。
「どうしようクリリンっ私、見てられない。」
「ダメですよっちゃんと見て応援してあげて下さいっ。」
俺だって口から心臓が飛び出そうだ……
ビデオを持つのとは反対の手で千夏さんの手をギュと握った。
この運動場にいる全ての人が二人の戦いを固唾を呑んで見守っていた。
ピッタリと横並びになり、あと少しでゴールと言う時にガキが叫んだ。
きっと、好きなものと聞いて真っ先に浮かんでいたんだろう……
好きな食べ物でも人気のアニメでもなく、あれだけ好きだと言っていた寧々ちゃんでもなく……
「ママ─────────────っ!!」
ガキが選んだのは
いつも子供のために忙しく頑張ってくれていた
ママだった──────────
ガキがゴールテープを切ると、大歓声が上がった。
─────やった…………一位だっ!!
「クリリ───ンっ!」
千夏さんが俺に勢い良く抱きついてきた。
「ちょっ……千夏さん、俺、甥っ子!!」
「あの子ママって…私のことを呼んでくれたっ。」
そう言って千夏さんは俺の胸に顔を埋めて泣き出した。
あぁもう…子供がからむと泣き虫になるんだから……
「……ママのこと大好きなんでしょうね。」
「うん……嬉しい…産んで良かった……」
そう言ってボロボロと泣く千夏さんが、すごく可愛らしくて愛おしく思えた。
「クリリ──ンっ!僕やったよお!!」
リレーを終えたガキどもが保護者席に戻ってきた。
みんな大喜びで自分の子供に駆け寄り、パンダ組はお祭り騒ぎのようになった。
「たっ君パパありがとうございましたっ!」
先生が俺に抱きついてきた。
俺、パパじゃないし!胸当たってるしぃ!!
ママさん達からも囲まれるように抱きつかれてしまった。
なにこれ?ハーレムっ?!
千夏さんからまた思いっきり耳を引っ張られた。
パパさんで俺のほっぺにチュウする者まで現れて本当にカオスだった……
子供以上に喜びにわく大人の姿を見て、ママとパパの愛情のパワーってすげぇなあって…改めて思ったんだ。
空は気持ちが良いくらい晴れ渡っていて、10月だというのに暑いくらいだった。
千夏さんから事前に渡されていた関係者証明書のカードを入口の人に見せて幼稚園に入ると、ちょうど開会式が始まったところだった。
たくさんの幼稚園児が軽快な音楽に合わせて入場門からトラックの中へと行進していく。
こんなにうじゃうじゃいたんじゃガキがどこにいるかなんてわからない。
みんなキチンと列になって歩いてはいるが、中には泣いてる子もいて先生に抱っこされていた。
おしっこ~と急に言い出す子もいて、先生が慌ててトイレへと連れていく。
幼稚園の先生って結構重労働だな……
千夏さんはどこに座っているんだろうか?
確かガキはパンダ組だったよな。
保護者は園児と一緒にクラスごとに座る。
パンダ組と書かれた一角の最前列で、千夏さんが俺に向かって手を振っているのが見えた。
「千夏さんすごいですね。一番前じゃないですか。」
「まあねぇ前の晩から並んだから。」
千夏さんは得意げに答えたのだけど…前の晩てマジかよ?!
他の最前列の人達を見ると、パパ達が眠そうな目をしていた。
幼稚園の運動会の席取り争いって凄まじいな……
千夏さん…俺に頼めばいいのに。
相変わらず一人で無理するんだから……
にしても──────
若いママさんて意外と多いんだな。
とても子持ちには見えないアイドルみたいな人とか、女優かと思うくらい綺麗な人までいる。
最近のママの質の高さに驚いていると、千夏さんから思いっきり耳を引っ張られた。
「痛たたっ!なんすか千夏さんっ!」
「鼻の下伸びてるからっ。」
千夏さんが頬を膨らませてからプイッとそっぽを向いた。
えっ……なにこれ?
もしかして千夏さんヤキモチやいた?
やべっ…なんかすげぇ嬉しいんだけど……
「……千夏さんが一番可愛いですよ。」
「はあっ?!クリリンなに言ってんのっ?他のママさんに手ぇ出したら殺すからね!!」
こんな場所で中指おっ立てんのはどうかと思う。
「出しませんよ。俺、最近全然そんな気になれないんで。」
「なにクリリン…その若さでインポ?」
だからこんな場所でど下ネタはどうかと思う……
開会式から帰ってきたガキが席に座る俺を見つけて飛びついてきた。
相変わらず可愛いやつだ。
ギュって抱きしめてグリグリと頬ずりをした。
「ねぇ親子競技、クリリンが出てよ。」
「親子競技?」
親と園児が二人で力を合わせてする種目で、年長さんは障害物競走と借り物競争がくっついたものをするらしい。
千夏さんからも是非にとお願いされてしまった。
どうも運動の苦手な千夏さんは、年少の時も年中の時もぶっちぎりの最下位でとても恥かしかったらしい。
別にいいけど…いいのかな。俺なんかが出ても。
年長さんの親子競技はプログラムの三番目。
大盛り上がりの年長さんによるクラス対抗リレーは午後の部のラストらしい。
「おいガキ。やるからには一位取るぞ。」
「うんっ!」
そう言ってガキと右手をパチンと合わせた。
まずは先生から競技についての説明を受けた。
ボールを手を使わずに二人の体で挟みながら、ハードルを越えたり平均台を渡ったり大玉を転がしたりするらしい。
思っていたより難しそうだ。
それから紙を引いて、そこに書かれてあるものを借りてきてゴールするらしい。
自分達の順番が来るまでガキと並んで待っていた。
前の順番の人らがボロボロとボールを落としまくっている。
張り切りすぎて顔から転けてるパパまでいた。
「寧々ちゃん頑張れ──っ!」
ガキが応援する方を見ると、大きな赤いリボンを付けた女の子がママと一緒に大玉を転がしていた。
あれが言ってた好きな子か…なかなか可愛らしい子じゃん。
寧々ちゃんは残念ながら二位だった。
ガキががっくりと肩を落とす……
「寧々ちゃんの分も一位取ってやろうな。」
そう言ってガキの頭をくしゃくしゃっとしたのだが……
「一位は無理だよ。俺がいるもん。」
横から生意気そうなデブが話しかけてきた。
なんだこいつはっ?
「この子、マーク君。幼稚園で一番足が早いの……」
こいつが言ってた恋敵か?!
デブなのに…走れるデブってやつか?
リレーのアンカーだけでなく、親子競技も一緒なのか…これは負けられないっ。
「すいません、うちの子が……」
隣に座っていたデブのママが謝ってきた。
さっき見かけた女優みたいに綺麗なママだった。
子供の運動会だっていうのに不似合いなくらいオシャレをしていて、香水プンプン、足元はハイヒールを履いていた。
確かに綺麗なんだけどちょっと…いやかなり違うよな。
俺達の番が回ってきて、ピストルが鳴り響いた。
ボールの扱いは得意だ。
落ちそうになっても足でひょいと受け止め、障害物はなんなくクリアしてトップで通過した。
後ろを見るとデブが最下位だった。
まあ母親があんな靴じゃね…可哀想に。
ガキが借り物を選ぶ紙を引くと、そこに書かれていたのは「ヒゲ」だった。
…………ヒゲ?
ヒゲってのはあれか?ヒゲが生えてる人ってことだよな。
無精髭はOKなのだろうか……
いや、ヒゲって書いてるんだから、それ相当の立派なヒゲじゃないといけないような気がする。
せっかく一位になれても、これはヒゲじゃないですと失格になるのだけは避けたい。
「クリリンあの人は?」
「あれは剃り跡が濃いだけだ。ヒゲじゃない。」
ヒゲなんて年いった人が生やしてるイメージだ。
幼稚園児をもつこんな若いパパさんらが生やしてたりする?
探してるうちにあとから来た子らが追いついてきた。
メガネや白いタオルなど簡単そうな借り物ばかりで、どんどん抜かされていってしまった。まずい……
本部席のテントに、白くて長いヒゲの生えたおじぃちゃんが座っているのをようやく見つけた。
俺は飛んでいってテントからそのおじぃちゃんを引きづり出した。
「おいっじぃさん、もっと早く走れ!」
「ふぉっふぉっふぉ。これが全速力ですわい。」
「マーク君にも抜かされちゃうよ~。」
ガキが泣きそうになりながら言った。
見ると、最下位だったあのデブがもうゴールへと迫っていた。
あいつに先を越されたら俺達がべべになってしまう。
にしてもこのじぃさん遅いっ遅すぎるっ!
ヒゲだけ引きちぎっていきたいとこだが、そんなことをするわけにはいかない。
俺はじぃさんの背中と膝の裏に手を伸ばし、お姫様抱っこをした。
保護者席からどよめきが上がったがそんなこと知ったこっちゃない。
「ガキ急ぐぞっ。転ばずに付いてこいよ!」
「うんっ!」
そのままじぃさんを抱えてゴールまで突っ走ったんだが、健闘むなしく最下位だった。
くっそお~っ。
「ふぉっふぉっふぉ。大丈夫ですかな?」
地面に項垂れる俺にじぃさんが話しかけてきた。
「大丈夫じゃねえっ。じぃさんもっと死ぬ気で走れよ!」
じぃさんに文句を言っていると後ろからぶん殴られた。
「いったぁ~なんすかっ千夏さん?!」
「なんすかじゃねえ!!園長先生になにしでかしてんだゴラァ!!」
えっ……園長先生?
千夏さんは園長先生に土下座する勢いで謝っていた。
園長先生はふぉっふぉっふぉっとヒゲを撫でながら楽しそうに笑っていた。
良かった…気の良さそうな人で。
パンダ組の保護者席に戻ると拍手で出迎えられてしまった。
みんな一生懸命声援を送ってくれていたらしい。
面白かったと褒められてしまった。
ガキからも頑張ってくれてありがとうとお礼を言われた。
年長さんが流行りの曲に合わせてダンスを踊っている。
横で千夏さんがその姿を収めようと一生懸命ビデオを回していた。
千夏さんだけじゃない。
みんな、我が子のその時にしかないその姿を、思い出と共に映像に刻もうとしていた。
年長さんは今年で幼稚園最後の運動会だ。
感極まって泣いているママもいる。
千夏さんもその一人で……
「千夏さん…泣きすぎです。」
「うるさいっ……あんなに小さかったのにって思ったら…涙が止まらないのよっ。」
そう言ってまたボロボロと泣き出した。
ビデオはちゃんと撮れているのだろうか………
子供を育てるのははたから見てても大変だろうなって思う。
でも…大変だった分、その子を愛おしく思えるのだろうし強くなれるんだと思う。
他では決して得ることの出来ない形にはないものを、自分の子供からたくさんもらえるんだろうなって……
とても…羨ましく見えた。
俺の母親は俺からなにかをもらえたのだろうか?
なんで────…………
………なんで俺のことを捨てたんだろう………
「クリリン?」
千夏さんが俺の顔を下から覗き込むようにして見ていた。
近いっ!
「おわっ、なんすか千夏さんっ?」
「もうお昼の時間だから。お弁当作ってきたから食べよ。」
千夏さんは日影にゴザを敷き、お弁当を並べた。
唐揚げにタコさんウィンナーに卵焼き…どれも全部美味しそうだった。
「残したら許さないからね。」
「10代の男の胃袋舐めないで下さい。」
「僕もお腹ペッコペコ~。」
ガキは体のサイズに似合わず、すごい食欲だった。
負けてられない。
二人してがっつくもんだから千夏さんに落ち着いて食べろと怒られた。
青空の下で手作りのお弁当を食べるのってこんなにも気持ちが良いものなんだ……
こういうのを何気ない幸せって言うんだろうな。
卵焼きをパクっと一口で頬張ると、意外なくらい甘かった。
「ゴメン、卵焼き甘すぎでしょ?たっ君が甘いのが好きなの。」
「えーっ卵焼きは甘い方がいいでしょ?クリリンは塩っぱい方が好きなの?」
「いや…俺は……」
言葉に詰まる……
俺は母親から卵焼きを作ってもらったことなんてない。
「ねぇねぇ、ママの卵焼き寧々ちゃんにもわけてあげていい?」
「はいはい。ちゃんと用意しといたよ。」
可愛くラッピングされた卵焼きをママから受け取ると、ガキは寧々ちゃんを探しにいった。
俺はまた卵焼きを口に頬張った。
「うまいっすよ。この卵焼き。」
「ありがとう。今度…塩っぱいのも作ってあげるね。」
そう言って千夏さんはニッコリと微笑んだ。
─────千夏さんは多分気付いている。
俺が過去に、母親となにかがあったことを……
でもそれには触れずに、俺のことを励まそうとしてくれている。
そんな千夏さんの優しさが
この卵焼きみたいに甘くて温かくて
心地良かった────────
午後の部のプログラムが始まった。
まだ体の小さな幼稚園児は体力がそんなにはないので、午後からの種目は少ない。
あっという間にラストの年長さんによるクラス対抗リレーとなった。
年長さんは全部で5クラスある。
1クラス20人全員が順番に走り、ひとつのバトンを繋ぐのだ。
デブがいるクラスはライオン組。
いかにも強そうな名前だ。
ガキが言うには、毎回パンダ組とライオン組がアンカーにバトンを渡すまで抜きつ抜かれつで一位を争っていて、最後の自分の番でいつも負けてしまうのだという……
でもあれだけ特訓したんだ。
本番の今日は絶対に勝ってやるっ。
「では皆さん、頑張って応援しましょう。エイエイオー。」
パンダ組の先生はいかにも新人さんて感じのおっとりした人だった。
「じゃあ皆さん気合い入れて応援するわよーっ!!」
一方、ライオン組の先生はベテランの人らしく、猛獣みたいに迫力のある人だった。
ピストルが鳴らされ、第一走者がスタートした。
リレーは最初からパンダ組とライオン組が他の組とかなりの差をつけ、2つの組による白熱した先頭争いとなった。
保護者席の応援にも熱が入る。
そんな中、五番目にバトンを受け取ったパンダ組の子が転倒してしまった。
頭に大きな赤いリボンを付けた女の子…寧々ちゃんだった。
派手に転んだ寧々ちゃんに、みんな言葉を失ってしまった。大丈夫なのだろうか……
「寧々ちゃん頑張って──────!!」
ガキが立ち上がって大声で叫んだ。
その声につられるようにパンダ組の子らがワーワー応援し始めた。
寧々ちゃんはなんとか立ち上がり、泣きながらも次の走者にバトンを渡したのだが、順番は一気に最下位へと転落してしまった。
ライオン組は他を大きく引き離して一位を独走していた。
ライオン組の保護者席は大盛り上がりなのに対して、パンダ組はお通夜かってくらい静まり返ってしまった。
「皆さんゴメンなさいっ!」
寧々ちゃんのお母さんがペコペコと頭を下げて謝り出した。
幼稚園最後の運動会、ラストのクラス対抗リレー。
本来ならトップ争いが出来るクラスなのに自分の子が足を引っ張り最下位になってしまった。
責任を感じたんだろうが、俺には理解出来なかった。
「なんで謝るんですか!寧々ちゃん怪我したのに頑張って次の子にちゃんとバトン渡したんですよ?褒めてあげて下さいっ!」
寧々ちゃんのお母さんが俺の言葉に目を潤ませた。
「千夏さんっ!今走ってる子の名前なにっ?!」
「えっ……け、ケンタ君だけど?」
早く走るには幾つかのコツがある。
一番大事なのは正しい姿勢。
それに気を付けるだけで見違えるくらい速く走れるようになる。
「ケンタ───!背中伸ばせ────っ!!」
俺がそう叫ぶとケンタ君はこちらをチラリと見てから背中を伸ばした。
すると足が高く上がるようになり、ぐんと走る速度が増した。
パンダ組の保護者から拍手がわき起こった。
「好きなもん叫びながらバトン渡せ────!!」
「クリリンなにそれっ?」
「『シャウト効果』っていって、大きな声を上げたら少しの間だけ筋出力がアップするんだ。」
ケンタ君は唐揚げ───!と叫びながら次の子にバトンを渡した。
「今走ってるのはミヨちゃんて言います!あの子にもなにかアドバイスをっ!」
パンダ組の先生が俺の腕にしがみついてきた。
意外と勝ち負けにこだわるタイプのようだ。
「あの子はそうだな……アゴが前に出すぎてる。もっと引かないといけない。」
先生はミヨちゃんにアゴを引いてと大声で連呼した。
最後にミヨちゃんもキュアプリ───!と叫びながらバトンを渡した。
俺が早く走れるようにアドバイスを言うと、パンダ組の保護者全員で走っている子に声援とともに大声で伝えた。
最後はみんな好きなものを叫びながらバトンを繋いでいく……
いつしか順位は上がり、パンダ組はライオン組に継いで2位となっていた。
その差もどんどん縮まっていく……
いけるかもしれない──────
「たっ君…寧々ちゃんて言いながらゴールするかも。」
「それで一位になったら落ちない女なんていないでしょうね。」
「母親としては複雑なんだけどね。」
千夏さんは顔では笑っていたけれど、ビデオを持つ手が小刻みに震えていた。
こんな緊迫した中で自分の子供が責任重大なアンカーなのだ。
母親なら緊張しないわけがない。いや…本人以上に緊張しているのかもしれない。
俺は千夏さんが持つビデオを取り上げた。
「ビデオは俺が撮りますんで、千夏さんはその目でガキが走るとこをちゃんと見てあげて下さい。」
千夏さんが不安そうな目で俺を見た。
「大丈夫です。あいつ…ビックリするくらい早くなりましたから。」
いよいよ次はアンカーの出番だ。
みんなは半周だが、アンカーだけはグランドを一周する。
ガキは俺が教えた通りに筋肉の緊張を緩めるためにぴょんぴょんとジャンプをしていた。
落ち着いた表情をしている…頼もしいじゃん。
一位であるライオン組との差はわずか1メートルとなっていて、ほぼ同時に2人にバトンが渡った。
デブの走りを見てビビった。
誰かに教わったんだろうか……姿勢が完璧だ。
腕の振り方も膝の上げ方も文句の付けようがない。
こんなに走れるとは思わなかった……
ジリジリと差は縮まってきてはいるものの、抜かせるかどうかは微妙かもしれない。
「どうしようクリリンっ私、見てられない。」
「ダメですよっちゃんと見て応援してあげて下さいっ。」
俺だって口から心臓が飛び出そうだ……
ビデオを持つのとは反対の手で千夏さんの手をギュと握った。
この運動場にいる全ての人が二人の戦いを固唾を呑んで見守っていた。
ピッタリと横並びになり、あと少しでゴールと言う時にガキが叫んだ。
きっと、好きなものと聞いて真っ先に浮かんでいたんだろう……
好きな食べ物でも人気のアニメでもなく、あれだけ好きだと言っていた寧々ちゃんでもなく……
「ママ─────────────っ!!」
ガキが選んだのは
いつも子供のために忙しく頑張ってくれていた
ママだった──────────
ガキがゴールテープを切ると、大歓声が上がった。
─────やった…………一位だっ!!
「クリリ───ンっ!」
千夏さんが俺に勢い良く抱きついてきた。
「ちょっ……千夏さん、俺、甥っ子!!」
「あの子ママって…私のことを呼んでくれたっ。」
そう言って千夏さんは俺の胸に顔を埋めて泣き出した。
あぁもう…子供がからむと泣き虫になるんだから……
「……ママのこと大好きなんでしょうね。」
「うん……嬉しい…産んで良かった……」
そう言ってボロボロと泣く千夏さんが、すごく可愛らしくて愛おしく思えた。
「クリリ──ンっ!僕やったよお!!」
リレーを終えたガキどもが保護者席に戻ってきた。
みんな大喜びで自分の子供に駆け寄り、パンダ組はお祭り騒ぎのようになった。
「たっ君パパありがとうございましたっ!」
先生が俺に抱きついてきた。
俺、パパじゃないし!胸当たってるしぃ!!
ママさん達からも囲まれるように抱きつかれてしまった。
なにこれ?ハーレムっ?!
千夏さんからまた思いっきり耳を引っ張られた。
パパさんで俺のほっぺにチュウする者まで現れて本当にカオスだった……
子供以上に喜びにわく大人の姿を見て、ママとパパの愛情のパワーってすげぇなあって…改めて思ったんだ。
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