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7.入学式

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私の二度目の生が始まってから5年、13歳になった私は学校に入学する事になった。
この5年は本当に穏やかで幸せな生活だった。

既に王妃教育を終わらせていた私には、勉強も苦にならず、マナーも完璧。

一度目の生では王妃教育で忙し過ぎて何も出来なかった。今回は流行の観劇を見に行ったり、街に出かけて買い物をしたり、お茶会に参加したり、充実した日々を送る事が出来た。

生徒は寮生活を送る事になるので、私も家族から離れて、寮で生活する事になる。

「ミルシェ!」
「ルーファス!」

入学式が終わった後、同じクラスになったルーファスと教室で再会した。

「元気そうだね、暫く会えなかったから…」

蕩けるような笑みを浮かべるルーファスに私も嬉しくなって微笑む。

「入学の準備で忙しかったものね、仕方がないわ」
「同じクラスで嬉しいよ」
「ふふ、私も」

私とルーファスの関係だが、既に内々には婚約者となっている。
だが、まだ公にはしておらず、その原因は私にあった。

実際に婚約者として発表するかという段階で、怖くなってしまったのだ。
気にしていないと思っていたのだが、例の男爵令嬢にまた婚約者を奪われるかもしれないという恐怖が拭えなかった。

ルーファスの事は信じている筈なのに、どうも一歩が踏み出せない。
私が不安がった為、成人になる16歳に発表しようかという話になり、ルーファスはそれを快く了承してくれた。
本当に優しい人だ。

「相変わらず仲良しだねぇ」

二人の世界に入ってきたのは、ステファン殿下だ。13歳になった彼は、王妃様に似た色気が出てきていた。

「ステファン殿下、同じクラスですね。よろしくお願いいたします」

ルーファスが礼をとるとステファン殿下は苦笑する。

「堅苦しいなぁ。僕たちは同じ学校に通う学生だよ?もう少し砕けても誰も文句は言わないよ」
「それはそうですが…」
「ルーファスは真面目だねえ。そうは思わない、ミルシェ嬢?」
「ふふ、そこがルーファスの良いところですから」

私がクスクスと笑うと、ステファン殿下は苦笑する。

「ご馳走さまだねえ。仲良しで羨ましいよ。僕も素敵な恋人が欲しいなぁ」
「殿下は、隣国の姫との婚約の話が出ているのでは?」

ルーファスが尋ねると、ステファン殿下はため息を吐く。

「あー、うん。まあね。でも10も歳下なんだよ?婚約するにしても…後10年は先なんじゃないかなぁ。それまで一人で堪えるなんて無理だよ」
「それは…」

ステファン殿下の言葉にルーファスは言葉を濁す。

確か一度目の生の時は、隣国の姫を娶って臣籍降下する予定だったはずだけれど、結果を知る前に私は死んでしまったのでどうなったか知らないのよね。

そう考えると可哀想な人なのかも知れないわ…一度目の生の時、彼は女遊びが激しかった。
10歳も歳下の婚約者候補ならば多少は遊んでも仕方ないかもしれないとは思う…まあ、不誠実に変わりはないけど。

そういえば、彼は例の男爵令嬢と懇意にはしていたけれど…あの毒殺未遂の後に私に対して憎々しいとか許さないみたいな目で見てきた記憶がないわね。

他の面子と大して変わらない気持ちだったでしょうし、気にすることないわね。

「まあ、これからはクラスメイトなんだし…宜しくね」

軽い口調でそう言うステファン殿下に対して、ルーファスと私は礼をとった。

こうして私の二度目の学校生活は始まった。
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