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第三章:Bunny&Black
百七十話:取調室
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東雲市役所19階、取調室……違った会議室。
「娘たちを救ってくれて、ありがとうシンク君」
ミサのお父さんとお話し中。
部屋に二人きりなのでまるで取り調べを受けているようだ。
色々聞かれたけど上手く言葉にできず、「うむ」とか「おう」とか答えてたらお父さんがちょっと眼光鋭くなってきたよ。 違うんですよ。 話すの苦手なんです。 決してめんどくさいとか思っているわけじゃないんです。
「……ここからは、父親としての質問だ。 娘とはどういう関係なんだい?」
素敵な指輪も渡したようだが……。と、質問されてしまった。
ミサとは同じクラスでパーティーメンバー、ってまぁそんなことを聞きたいわけではないのだろう。
「護る」
ただのクラスメイトだったけど、今では絶対に守りたい大切な存在だ。
どうせ上手く喋れないので一言で、力強く気持ちを表す。
臆病なのに友達を守るために俺に突っかかってきた。 未知の怪物のいる中、探索にも協力してくれた。 雑用も進んでやるし、辛そうな人がいれば積極的に声をかけてた。 優しい人だ。
あなたの優しい娘さんは絶対に守って見せるよ。
だから心配しなくていい。
俺が護る。
「……そうか」
お父さんが立ち上がったので俺も立ち上がる。
差し出された手を握る。
「娘を、よろしく頼む」
芯の通った瞳に見つめられ託される。
俺も見つめ返し頷いた。
緊張感に包まれていた取調室の空気が少し和らいだ。
「あの娘は本当にいい子なんだ。 仕事ばかりで禄に父親らしいことのできない俺を逆に支えてくれた。 優しくて気の利く――――」
娘自慢が始またったぞ。
知っているこれは長くなるやつだ。
俺はサンドバッグになるしかない。
仕方ないのでつまみでも出してやるか。
「ほう! これは美味しいね。 うん、こっちのお酒もフルーティで良い!」
ミサのお父さんお酒好きなのかな。
ネペンデス君の実で作ったお酒をあげたら凄く喜んだ。 密造酒だけど許してほしい。
パタラシュカをつまみに会話は弾む。
まぁ喋っているのはお父さんだけなのだが。
「小さい頃から走るのが好きでねぇ、ずっと走っていたよ。 母親には早くに出ていかれてしまってね……。 少し男っぽく育って心配していたのだが、君に出会えて変わったようだ」
「……」
「娘ぉお! よろしく頼むぅううううううう!!」
お父さん酒弱っ。
その後もミサの昔のエピソードを聞かされつつ『娘を頼む』をエンドレスで言われた。
あれ、これ、なんか勘違いされてる……?
「……」
もはや手遅れだ。
『鬼頭 神駆』は誤解が解けない。
◇◆◇
「お父さんとなに話してたの?」
ミサの昔話を延々とね。
5歳までおねしょしてたの知ってるよ。
ちなみにお父さんは寝てしまった。
疲れが溜まってたんだろうな。
お酒も久しぶりに飲んだらしいし。
なんか上機嫌だったし。
「おねしょ、5歳」
「っ!?!?」
「なんの話ししてるのよー!?」と取り乱すミサ。
エレベーターが使えないので階段で降りている。
これは……大変だな。
階段エクササイズにはなるけど。
「こっちだ」
市役所の人たちは各階で分散して住んでいるようだ。
効率が悪いように思えるのだが?
ただ1~3階には多くの人がいた。
1階の入り口の近くに武装した人たちは警戒中のようだった。
ただそこまで緊張感はないようだった。
「地下にあるんだ。 最初は驚いたが、【猫の手】のおかげでなんとか持ちこたえている」
地下1階。
元は職員用のコンビニがあったらしい場所は万屋【猫の手】になっていた。
ドアの入り口は猫の装飾に覆われ自動ドアはない。
中に入ると、雑多に商品が陳列されている。
「いらっしゃい、人族。 おや、会員様とは、珍しい」
アメショ猫さん。
ただちょっと東雲東高校の側の主人とは違う気がする。
顔だちというか雰囲気が。
「バステト様の香りがするね」
会員証は見せなくても持っているとわかるのか?
なんか特典はないのかしら。
「色々な商品を取り扱っているよ。 おすすめは、紫イモムシ、紫イモ、ゴブリンシリーズ装備、ゴンジュラ、ゴーシエガオだよ」
「ほう……」
結構ラインナップ更新されている。
ゴンジュラとゴーシエガオとはなんぞや!?
気になるけど怖い。
ついてきてくれた人が何も言わずにニヤニヤしているのが余計に怖い。
試しに買ってみる。
「ゴンジュラって、クレープ?」
ゴマ入りクレープ……?
なんか臭い。
見た目も良くない。
「う、うーん」
これは微妙だ。
酸味と臭みのハーモニー。 もちっと触感だけはいいけど。
「ゴーシエガオ」
こちらは紫色のエネルギーバーみたいなやつだ。
こちらももちもちしており、クセのある味だ。
うん、万人受けはしないけど、嫌いではない。
栄養は豊富そう。
一体原材料はなんなのか?
決して考えてはいけない気がする。
「う~ん……」
ミサには不評な模様。
「さてここからは気をつけてくれ。 地下2階は異変が起きている」
地上1階よりも多くの人たちが武装し警戒している。
ゴブリンシリーズ装備を身に着けているのだろう、どこかファンタジー世界のようだ。
「【小鬼地下迷宮】」
地下2階。
かつては駐車場だったその場所に、地獄の入り口はひっそりと待ち構えていた。
「娘たちを救ってくれて、ありがとうシンク君」
ミサのお父さんとお話し中。
部屋に二人きりなのでまるで取り調べを受けているようだ。
色々聞かれたけど上手く言葉にできず、「うむ」とか「おう」とか答えてたらお父さんがちょっと眼光鋭くなってきたよ。 違うんですよ。 話すの苦手なんです。 決してめんどくさいとか思っているわけじゃないんです。
「……ここからは、父親としての質問だ。 娘とはどういう関係なんだい?」
素敵な指輪も渡したようだが……。と、質問されてしまった。
ミサとは同じクラスでパーティーメンバー、ってまぁそんなことを聞きたいわけではないのだろう。
「護る」
ただのクラスメイトだったけど、今では絶対に守りたい大切な存在だ。
どうせ上手く喋れないので一言で、力強く気持ちを表す。
臆病なのに友達を守るために俺に突っかかってきた。 未知の怪物のいる中、探索にも協力してくれた。 雑用も進んでやるし、辛そうな人がいれば積極的に声をかけてた。 優しい人だ。
あなたの優しい娘さんは絶対に守って見せるよ。
だから心配しなくていい。
俺が護る。
「……そうか」
お父さんが立ち上がったので俺も立ち上がる。
差し出された手を握る。
「娘を、よろしく頼む」
芯の通った瞳に見つめられ託される。
俺も見つめ返し頷いた。
緊張感に包まれていた取調室の空気が少し和らいだ。
「あの娘は本当にいい子なんだ。 仕事ばかりで禄に父親らしいことのできない俺を逆に支えてくれた。 優しくて気の利く――――」
娘自慢が始またったぞ。
知っているこれは長くなるやつだ。
俺はサンドバッグになるしかない。
仕方ないのでつまみでも出してやるか。
「ほう! これは美味しいね。 うん、こっちのお酒もフルーティで良い!」
ミサのお父さんお酒好きなのかな。
ネペンデス君の実で作ったお酒をあげたら凄く喜んだ。 密造酒だけど許してほしい。
パタラシュカをつまみに会話は弾む。
まぁ喋っているのはお父さんだけなのだが。
「小さい頃から走るのが好きでねぇ、ずっと走っていたよ。 母親には早くに出ていかれてしまってね……。 少し男っぽく育って心配していたのだが、君に出会えて変わったようだ」
「……」
「娘ぉお! よろしく頼むぅううううううう!!」
お父さん酒弱っ。
その後もミサの昔のエピソードを聞かされつつ『娘を頼む』をエンドレスで言われた。
あれ、これ、なんか勘違いされてる……?
「……」
もはや手遅れだ。
『鬼頭 神駆』は誤解が解けない。
◇◆◇
「お父さんとなに話してたの?」
ミサの昔話を延々とね。
5歳までおねしょしてたの知ってるよ。
ちなみにお父さんは寝てしまった。
疲れが溜まってたんだろうな。
お酒も久しぶりに飲んだらしいし。
なんか上機嫌だったし。
「おねしょ、5歳」
「っ!?!?」
「なんの話ししてるのよー!?」と取り乱すミサ。
エレベーターが使えないので階段で降りている。
これは……大変だな。
階段エクササイズにはなるけど。
「こっちだ」
市役所の人たちは各階で分散して住んでいるようだ。
効率が悪いように思えるのだが?
ただ1~3階には多くの人がいた。
1階の入り口の近くに武装した人たちは警戒中のようだった。
ただそこまで緊張感はないようだった。
「地下にあるんだ。 最初は驚いたが、【猫の手】のおかげでなんとか持ちこたえている」
地下1階。
元は職員用のコンビニがあったらしい場所は万屋【猫の手】になっていた。
ドアの入り口は猫の装飾に覆われ自動ドアはない。
中に入ると、雑多に商品が陳列されている。
「いらっしゃい、人族。 おや、会員様とは、珍しい」
アメショ猫さん。
ただちょっと東雲東高校の側の主人とは違う気がする。
顔だちというか雰囲気が。
「バステト様の香りがするね」
会員証は見せなくても持っているとわかるのか?
なんか特典はないのかしら。
「色々な商品を取り扱っているよ。 おすすめは、紫イモムシ、紫イモ、ゴブリンシリーズ装備、ゴンジュラ、ゴーシエガオだよ」
「ほう……」
結構ラインナップ更新されている。
ゴンジュラとゴーシエガオとはなんぞや!?
気になるけど怖い。
ついてきてくれた人が何も言わずにニヤニヤしているのが余計に怖い。
試しに買ってみる。
「ゴンジュラって、クレープ?」
ゴマ入りクレープ……?
なんか臭い。
見た目も良くない。
「う、うーん」
これは微妙だ。
酸味と臭みのハーモニー。 もちっと触感だけはいいけど。
「ゴーシエガオ」
こちらは紫色のエネルギーバーみたいなやつだ。
こちらももちもちしており、クセのある味だ。
うん、万人受けはしないけど、嫌いではない。
栄養は豊富そう。
一体原材料はなんなのか?
決して考えてはいけない気がする。
「う~ん……」
ミサには不評な模様。
「さてここからは気をつけてくれ。 地下2階は異変が起きている」
地上1階よりも多くの人たちが武装し警戒している。
ゴブリンシリーズ装備を身に着けているのだろう、どこかファンタジー世界のようだ。
「【小鬼地下迷宮】」
地下2階。
かつては駐車場だったその場所に、地獄の入り口はひっそりと待ち構えていた。
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