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第三章:Bunny&Black
百六十話:弟妹と温泉 ①
しおりを挟む弟ってこんな感じなのかな?
「ひゃあっはーー!!」
恥ずかしそうに掛け声をマネする『小鳥遊 涼』君。
恥ずかしがられると俺も恥ずかしくなってくるのでやめてほしい。
必死についてくる感じが弟っぽくて良い。
俺は一人っ子だったから、妹とか弟に憧れがある。
なんか無条件で兄に従う近所の家族を見ていたからだろうか。
「ゴブ即斬!」
スキルの影響で色々体に変化は出てしまったようだが、常時黒い翼を展開できるようになり戦力強化になったからまあいいかと、本人は納得しているようだ。
玉木さんのエルフ化と違って見た目に大きく影響している。
有翼人、果たして避難所の人たちは受け入れてくれるだろうか?
「……」
東雲東高校なら問題なく受け入れそうだな。
積み重ねてきた耐性が違う。
なぞ植物のトイレを作ったのに、めちゃくちゃ感謝されたからな。
過去一で感謝された。
それだけトイレ問題は深刻だったということかもしれない。
異臭を放つトイレから、緑と花に囲まれたフローラルなおしゃれトイレに変わったからね。
ご老人たちの見た目も若返っているらしいし、もうなんでもありだよな……。
「今まで、ありがとう。 俺も……いや、いつか話す! またね、みんな……」
東雲銀座通りは今までもっていたのが不思議なくらいに倒壊を始めた。
うん、ゴブリンを狩るときにちょっと俺が無理をしたせいではないと信じたい。
トロールゴブリンに崩された場所から天井は崩落し周囲の建物が崩れると連鎖的に。
綺麗に見えていた死体も腐敗が進んでいた。
よくわからない。
まるで何かに囚われていたように時間の止まった場所だったのか。
お別れを済ませたリョウと共に周囲のゴブリンを殲滅していく。
だがさすがに多い。
全部のゴブリンをぶっ殺すと契約したが、一日では到底無理だ。
「うん、わかってる。 でもいつか必ず、全部終わらせる」
「うむ」
計画は大事だ。
時間も遅いし拠点に帰ろう。
「臭い」
『ブラックホーンシャドウ』へと乗り込む。
「めちゃくちゃカッコイイ!」と褒めはやすリョウを後ろに乗せていざ出発といこうと思ったが、臭い。
「……え」
『ガードドッグイヤー』の効果で五感が鋭くなっている。
特に鼻と耳。
うすうす気づいていたがフルフェイスを外し後ろに乗せて確信した。
まぁゴブリンと戦い続けていればしょうがない。
碌に体も洗えなかっただろうし。
「く、臭い?」
「うむ」
「あうぅ」
飛び立とうとするので押さえつける。
まぁ俺はいいのだが、この臭いのまま避難所にいったらちょっと印象が悪い。
最初が肝心だからな。
ちゃんと風呂に入ってシャンプーとかしよう。
ついでに羽も洗ったらいいと思う。
別に汚いわけではないけど。
なんなら俺が洗ってあげようではないか。
いや、というか洗ってみたい。
「……普段は臭くないから。 マジ、ゴブリンぶっ殺す……!」
うむ。 全てはゴブリンが悪い。
◇◆◇
「弟……さん、ですか?」
『神鳴館女学院付属高校』、超お嬢様学校であるここには天然温泉がある。
「羽が生えてますし、あまり似ていないような……」
それに、弟? と訝しむ黒髪ロング。
ちょっとは睡眠が取れたのか顔色は良くなった。
「まぁ、ありがとうございます。 助かります」
リョウの手持ちが何もなかったので、ドラッグストアを襲――探索して色々ゲットしてきた。
お代はゴブリン掃討払いでお願いします。
いずれ復興するときは手伝うよ。
『ブラックホーンシャドウ』の荷台に無事そうな物は医薬品も含めて積んできた。
市街地からここまで距離はあるし、お嬢様学校の探索のエリア外だろう。
「それで温泉を使わせて欲しいと?」
「ああ」
「もちろん大丈夫ですよ。 シンクさんたちならいつでも歓迎です。 円さんもつけましょうか?」
弟妹と一緒にお風呂だと……?
黒髪ロングはわかってらっしゃるな。
いやお土産の効果かもしれない。 生理用品とか化粧品とかも持ってきたからね! 根回しは大事だよ何事も。
「うむ」
「……かしこまりました」
あれ自分で言ったのに、ちょっと引いてます……?
違うよ、円ちゃんは可愛かったけど、アレだから。
弟妹とお風呂とかアニメ展開に憧れているだけだから!
「わっ、お兄ちゃんまた円のこと呼んでくれたんだぁ! 円、嬉しいっ♡」
前回ちょっとやりすぎてしまって怒っているかと思ったが、円ちゃんは今日もあざと可愛い。
「責任、取ってくれるの?♡」
「んん゛」
「シン兄?」
ちなみにリョウには弟という設定にして置くと伝えたところ、シン兄と呼ばれるようになった。
抱き着いた円ちゃんは重かった、セリフが……。
「フフ♪」
上機嫌な円ちゃんに連れられて秘密温泉へ。
「ええーー? 学校の中に洞窟があんの?」
「そうですわ! 何世代も前の先輩方が造ってしまったそうですわ」
「お嬢様はんぱない!」
「フフ、リョウ様は面白い方ですね」
弟妹の中が良さそうでよき。
洞窟を抜けた先は森に囲まれた温泉だ。
カンテラの明かりに包まれている。
前に来た時と違ってちょっとおしゃれな空間になってるな。
イスやテーブル、それにベッドもある? ととのいベッドってやつかなぁ?
緑の香りを運んでくる風は外気浴に最適だしね。
「こ、混浴、なんだ!?」
「うむ」
円ちゃんは気にするな。
彼女は妹であると同時に立派なハニトラ要員だ。
油断していると骨抜きにされるぞ!
油断するなよ、弟よ。
「武装解除」
「っ!」
手ぬぐいを肩にパシンとのせ一番風呂へ。
うーん! 運動の後の温泉は最高だよね。
東雲東高校でもどうにかしたいなぁ。
やっぱりハウジングガチャにかけるしかない!
「ふぅぅ……!」
温泉最高ーー。
応援ありがとうございます!
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