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第三章:Bunny&Black
百五十九話:おや、仲間になりたそうにこちらを見つめて……
しおりを挟むうるさい。
「はははっ!はっはー!!」
アーケード内に高笑いする声は響く。
羽をたたんで丸まっているのに、高笑いする声に心臓を揺さぶられヤツをみる。
(アイツ……なんなんだよ……)
甲高い音を立てるチェーンソーの大剣を振り回しゴブリンを虐殺している。
楽しそうに、踊るように。
まるで悪魔、いや死神。
……そうか、みんなを迎えに来たのか。
(俺も一緒に連れてってくれるのか?)
『KING』との約束も果たせずみんなを守れなかった俺を……。
私は……みんなと一緒になれない。
きっと違うところに連れていかれるんだ。
「連れてってよ……」
体が重い。
グルグルに鎖で繋がれたように。
この場所に囚われている。
でもそれでいい。
ここが私の居場所だった。
……だった?
「う、ぅぅ……」
もうみんなはいない。
馬鹿で頑固でどうしようもない人たちばっかりだったけど、異端の私にも俺にも優しくて。
ずっと一緒にいてくれて。
優しい人たち。
ずっと見守ってくれてた。
「……縛ってたのは、わたし?」
弱い私を見捨てなかった。
居場所をくれた。
それなのに、守れなかった。
ゴブリンに、みんな、殺された。
「はっはー!!」
死神なら守れただろうか。
……ううん。
死神は、守らない。
ただ狩るだけだ、魂を。
だったら――――
◇◆◇
あー雑魚狩りって楽しいよね。
最近強いやつばっかりと戦っていたから、逆に新鮮だわ。
「はっはー!!」
重い大剣を振るう。
筋力に適度な負荷がかかり気分は高揚していく。
『ブラックホーンオメガ』も喜んでいる。
最近なんだかガチャアイテムの気持ちが分かるようになった気がする。
ひょっとしてガチャのレベルが4に上がったからか?
「死神」
死神?
ずっと蹲って泣いていた黒づくめが声を掛けてくる。
なぜか鎖に繋がれたようなイメージが見えていた。 『千棘のマーマンロード』のような、呪いの類か。
それにしても死神って、俺の事かな?
「俺も一緒に連れていけ」
鋭い眼光で見つめながらそう言ってきた。
仲間になりたそうにこちらを見つめているってやつかな?
ちょっと殺気がだだもれているけれど。
「その代わり、契約しろ!」
契約?
「必ずゴブリンを、全部っ! ――――ぶっ殺すって!」
なんだそんなことか。
「承知」
契約なんてなくてもあいつらは駆逐するけどね。
「「約束だぞ!」」
さっき建物に入った時にチラっと見えてしまったけど、遺体が丁寧に寝かされていた。
死んだばかりのようで、やけに綺麗で怖かったが……。
きっと大切にしていた人たちを殺されたんだろう。
出会ったばかりの人間に頼りたくなるのもわかる。
それに俺ってば頼りがいありそうだし(筋肉)。
「うむ」
なぜかハモって聞こえた約束の声。
黒ずくめを縛っていた鎖が、ゆっくりと溶け込んでいく。
……大丈夫なんだろうか?
まぁ本人はなんだか平気そうだし問題ないか。
「あれ? ブラックフェザーが……解けない、なんで?」
玉木さんと同じ現象だろうか?
玉木さんは悪神の試練を生き延び、変な称号を手に入れ【森の麗人《エルフ》】のスキルを手に入れた。
似たようなスキルでも手に入れたのだろうか?
悪い物ではないだろう。
その翼めっちゃカッコイイし。
有翼人って感じか。
「ん、んん!?」
「?」
なにやら体をまさぐり変な声を上げている黒づくめ。
フードは落ち頭に巻いていたバンダナも取れる。
しかしこれは?
中性的な顔立ちだね、目が優しければ凄くモテただろうに。
前髪は長く襟足はカリあげている。
俺って言ってたし男の子だよね?
「うえ!?」
フルフェイスのヘルメットをイヤーカフに変形させる。
こちらも素顔を見せないとね。 臭い対策でずっと被ってたから。
ただ、うえ!?ってなに?
失礼では?
「に、人間……?」
「……」
失礼では……?
◇◆◇
男になりたい俺と女の子になりたい私。
まるで自分の中に二人いるような感覚をずっと持って育ってきた。
偉い先生によれば性同一障害だとか、幼少期の家庭の影響だとか、二重人格だとかいろいろ言われてきた。
お偉い先生に学者にどうしてわからない?
どっちも自分だ。
弱さを隠す俺も弱さをさらけ出す私も。
鎖につながれたように離れられない。
そう思って生きてきていた。
だけど違ったんだ。
縛っていた鎖は崩れ落ちても離れることはない。
両翼のように二つで一つだから。
一緒に飛ぼう。
「ひゃっはーーーー!」
目の前でゴブ殺を繰り返す死神のように。
「ひーーーやぁあああ!」
でもちょっと掛け声は恥ずかしい。
高いところ怖いし。
でも我慢する。
「ひゃあっはーー!!」
絶対ゴブリン、ぶっ殺すから!!
応援ありがとうございます!
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