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第三章:Bunny&Black

百五十七話:ブラックフェザー

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 「なんなんだっ!?」

 デカイ図体の癖に、速い!
 急に曲がってもついてくる。 振り切れない。
 迫りくる巨体はプレッシャーをガンガン与えてくる。

「ゴブリンっ!」

 速射!
 ゴブリンを見たら反射で脳を打ち抜くようになってきた。
 ゴブ即斬! そういってゴブリンを切り刻んでいた『キツネ』を思い出す。
 
「やばい」

 数が多い。
 鬼面に気を取られていたけど、囲まれてる。
 騒いでしまったにしても囲まれる数が多すぎるし早すぎる。
 最初から、集まってきていた?

「……おまえの、仕業かっ!?」

「……」

 はめられたのか……?
 まさか!
 みんなが危ないっ……!?

「くっ!」

 気配察知には屋上方面にゴブリンは見当たらない。
 ……やるしかないか。
 うまくいけばゴブリンと鬼面をやりあわせられる。
 なにを企んでいるのかしらないが、みんなは、東雲銀座通りは俺が守るっ!

「はぁ、はぁ、はぁあ」

「……」

 屋上に着いた。
 全力で走ってきたのに息一つ乱していない。
 それに……いつだって俺を攻撃できたのに、してこなかった?
 何が目的なんだ……。

 これでもかと筋肉を見せつけるようなバトルスーツ。
 趣味の悪い鬼のフルフェイス。
 黒のブーツは玉が煌めいている。
 ギャギャギャとゴブリンたちも追いついてきた。
 逃げ場のない屋上は緑色の醜い怪物に満たされていく。

「「「ギャギャギャ」」」

 いったいどれだけゴブリンはいるんだ?
 いくら倒してもキリがない。
 まるでゲームのように襲ってくる。
 ふざけやがって!

「っと……」

 赤い殺意に飲まれそうになる。
 だが落ち着け。
 今は鬼面を撒く方が先決だ。
 ゴブリンにコイツを殺れるとは思えないけど、時間稼ぎにはなるだろ。

「竹串っ」

 コイツ、メインウエポン竹串なのか?
 鬼面の正面に浮いている・・・・・・
 重力に逆らうように上を向きシュルルと回転しながら。
 棘のようにオーラを纏っている。

「――!?」

 鬼面が手を横に振ると、浮いていた全ての竹串はゴブリンへと殺到する。
 一本一殺。
 確実に眉間を貫きゴブリンを殺しつくす。
 ただゴブリンのおかわりは階段からやってくる。

「はぁっ!」

 俺は飛んだ。

「あ」

 はは、鬼面は慌てたように手を伸ばすが遅い。
 俺は屋上から飛んだんだ。

「『ブラックフェザー』!」

 背中から黒い翼が生える。
 鳥の羽根のついた漆黒の翼。
 『KING』はカッケェ!と触ってきてうざかった。 全力でぶん殴った。
 結構、神経があるのかぞわぞわするんだ。 勝手に触るなエロガキ!
 操作が難しいしあまり長く飛べない。
 あと俺は……高所恐怖症だ。

(高い! 高いぃいいい!!)

 心臓をぎゅっとするような恐怖を抑え必死にコントロールする。
 ゆっくりと下降する。
 デパートに周囲のゴブリンは移動したのか、東雲銀座通りの近くにはほとんどいない。
 よかった。

「はぁ……あーなんだったんだアイツ? 疲れたー休みたい」

 バリケードは異常なし。
 まだ残っていたゴブリンもさっと殺した。
 すこし休もう。
 でもその前に。

「みんなただいま! アンさんまだ残っていたよ!」

 アンさんの大好きだった『CARAMEL』のお菓子をお土産に俺は居場所に帰ってきた。

「はは、途中で変な奴に会っちゃってさ! うん、大丈夫だよ。 ありがと」

 俺の唯一の居場所。
 絶対に守る。
 たとえ鬼面が攻めてきても必ず守ってみせる。

「……こんどは本気出すからさ、見ててよみんな」



◇◆◇


 飛び降りたぁ!?
 
「あ」

 ここ屋上だよ?
 7階だよっ!? 高いよっっ!

「おお!?」

 背中から翼が生えた。
 あれならアスファルトにキスしてぐちゃぐちゃにはならなそうだな。
 よかった……。

「おかわりゴブリン……」

 多すぎだろ。
 『ブラックホーンシャドウ』で飛んできてたの、やっぱりバレてたのかな。

「……」

 そういえば気づいたことが一つ。
 【千棘万化インフィニティヴィエティ】はチートだなぁ、ということ。
 さすがは魔王の固有スキルか。
 俺は無数の竹串を【千棘万化インフィニティヴィエティ】で支配下に置く。
 やたらと投擲の精度がいいなと思っていたけど、やっぱり違う。
 【千棘万化インフィニティヴィエティ】の影響を受けた竹串は俺の支配下になる。
 それはもはや投げるではない。
 命じているのだ。

「【千棘万化インフィニティヴィエティ】」

 俺の目の前に浮いていた竹串に命令をする。
 高速回転により貫通力強化、魔力を纏い穿て。
 ゴブリンの脳天を貫くイメージ。
 
「「「ギャ……」」」

「……」

 某ロボット大戦アニメのファンネルの如く、縦横無尽に移動する竹串。
 俺のイメージの影響を受けているのだろうか。 ダアゴンの使い方とは少し異なる。
 イメージが重要とはまるで魔法のようなスキルだ。

「さて」

 黒ずくめが行くとすれば東雲銀座通りだろう。
 この辺そこしか闘争地域ないしね。
 変に警戒されちゃったよなぁ、どうしよう、行くのやめちゃうか?
 まぁそういう訳にもいかないよな。

「よっ」

 屋上のフェンスを飛び越え飛んでいく。 
 『ブラックホーンリア』で宙を蹴りながら最短で。
 さほど時間はかからない。

 アーケードの入り口には『東雲銀座』と大きく書かれた看板があった。
 年季を感じさせる哀愁が漂っている。
 バリケードは設置され有刺鉄線がグルグルに巻きつけられている。
 なるほど、構造的に意外と防衛はしやすいのかもしれない。
 要所要所をバリケードで守ればあとは建物が要塞になる。

「やっぱり来たか! ここは、荒させない! 帰れ鬼面ッ!!」

「……」

 黒ずくめは待っていた。
 なかなか鋭い眼光だ。
 手にはマチェットのような黒い刃物を持っている。
 鬼気迫る感じだ。 というか赤黒いオーラのようなモノが見えるわ。
 悪神の加護のようなものだろうか?

「一歩でも入ったら、――――ぶっ殺すッッ!!」

 どうやったらお話しできますか……。
 やっぱり肉体言語しかないかなぁ?
 
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