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第三章:Bunny&Black

百五十六話:鬼ごっこ

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 「お前、殺人鬼みたいな目してるな!」

 中一の時、そう言ってきた馬鹿を半殺しにした。
 目つきの悪いのは生まれつきだ。
 親父はやっぱり目つきが悪くて女たらしのクソ野郎だった。
 はやくに蒸発してどっかにいっちまったよ。
 目つきも悪く育ちも悪い、学校じゃいつも浮いていた。
 俺は中一の終わりにドロップアウトした。

「仕方のない子だね」

 そう言って母親は泣いていた。
 だけどすぐに新しい男と一緒になった。
 母親は男にだらしない馬鹿な女だった。

「まったく……リョウ、うちで働くか?」

 母親の友人のアンさんが見かねてそう言ってくれた。
 正直助かった。
 母親は一週間で食費だよと千円しかくれなかったから。
 それに目つきの悪い中学生のガキを雇ってくれる場所なんてないだろうし。

「おうリョウ、今日もひでぇツラしてやがんなぁ!」

「うるさい」

 アンさんに惚れてる『KING』が絡んできてウザイ。
 
「もっと食べたほうがいいよぉ」

 お前はダイエットしろ『ジョン』。

「はーー! 今週も神回っすわ!!」

 お店のテレビで勝手にアニメ流すな『キツネ』。

 かつては賑わっていた商店街も、今では寂れほとんどのお店が閉店してしまったシャッター街と化している、東雲銀座通り。

 元映画館の中で俺たちはいつも集まっていた。
 社会に馴染めない半端者が四人。
 『KING』は【クローバー】とチーム名を決めた。
 東雲銀座通りには今でも住んでいる人たちがいる。
 お年寄りも多いが、……あまり公にできない風俗店や非合法の店もある。
 訳アリの住人たちが多い。
 彼らには敵が多かった。
 決して表にはでない争いは絶えない。

 【クローバー】はそんな彼らを守るチームだった。
 アンさんに危ないからやめなさいと言われたけど、そもそも『KING』がアンさんを守りたいから作ったチームでもある。 
 表向きは自警団だ。
 ゲームセンターや普通のカフェなんかもあるからね。
 そういった場所の治安を守りつつ相談役として活動する。
 【クローバー】はそんなチームだ。
 一般人には理解されない半端者のチーム。
 社会に馴染めない俺にとっての唯一の居場所だった。



◇◆◇


「なんだぁ! おまえっ!?」

 小さいな。
 声も若い。
 たぶん俺より年下だなぁ。

「「……」」

 フードの奥の眼光は鋭くこちらを睨んでいる。
 先ほどのダッシュは凄かった。
 『ウロボロスカフ』の反則技がなければ逃げられていたかも。

 さてどうやって話しかけようか。
 知っていると思うが俺は話すのは苦手だ。
 肉体言語なら得意なのだが。
 とりあえず『ウロボロスカフ』でもはめたら大人しくなるかな?

「ふっ!」

「!」

 後方宙返り。
 一気に距離を開けながら弾丸を放ってくる。
 忍者かよ!?

「なぁ!?」

 竹串を投擲し弾丸を打ち落とす。
 カンと地面に球が転がる。
 パチンコ玉?
 左手の手甲部分にスリングショットを仕込んでいるようだ。
 
「竹串!? ……舐めんなァ!」

「……」

 めっちゃ睨んでくるぅー!
 キレてる人は苦手ですよ?
 ボコって大人しくさせようか。

ギャギャッギャギャッ!
グギャア!!

 と、気配察知に反応あり。
 ゴブリンたちが外から集まってきている。

「くっそ! 『ブラックフェザー』ッ!」

 黒ずくめも気づいたのか逃走を図る。
 一瞬黒く発光したかと思うと、先ほどよりも速く走り出した。
 凄く軽い足取りで障害物を飛び越えていく。

「はっ、ゴブリン共はよろしくな!」

 面白いね。
 なかなかのパルクール力だ。
 ちょっと本気出してみようか。
 『ブラックホーンリア』の本気をよう?

「はっはは、――――はぁ!?」

 相手のルートをなぞり追いかける。
 必死の形相で逃げる黒ずくめ。
 まるで消えたような急旋回まで見せてくる。
 やるじゃないか!
 楽しいぞぉ!!

「うあああああああああああああああああああッ!!」

 鬼ごっこってこんな感じかな?
 ほら俺今鬼のフルフェイス被ってるし鬼役っぽい。
 あ。
 コレのせいで怖がられてるのかも。
 臭い対策で被ってたんだけど裏目に出たなぁ。
 
 黒ずくめが絶叫をあげるからゴブリンたちがたくさん集まってきている。
 どうしようかなぁコレ……。

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