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第三章:Bunny&Black

百五十四話:

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 これは……?

 お嬢様学校を囲うように、決して姿を見せない敵が存在している。
 
ギャギャ
ギャオギャハ 

 家の中やビル内部から声が聞こえてくる。
 姿は見せないが気配を隠す気はないらしい。
 プレッシャーを与えているのか?
 それにしても数が多い。
 広範囲に渡っている。

「ゴブリン」

 西から来ている。
 東雲市街地から来ているのだろう。
 前回の作戦失敗から時間はそれほど経っていないが、ずいぶんと勢力を拡大させてしまったらしい。

 一体一体は雑魚だが、とにかく数が多い。
 それにこいつら逃げるんだよな。
 体の小ささを活かして駅ビルの中だと逃げ回られた。
 民家に逃げられても厄介だ。
 少し開けた場所で集まるのを待つ。
 呑気に飯でも食べよう。

『紫色のゴブリンに注意してください。 毒の元凶です』

 黒髪ロングの忠告。
 毒はゴブリンが原因だったのか。
 てっきりアンデット系の敵かと思ったが。

『……ありがとうございます、シンクさん。 お礼は後ほど、必ず』

 別にいいんだけどな。 いつもよくしてもらってるし。
 思えばここの人たちは最初から結構受け入れてくれてたな。
 いや悪魔と間違えて攻撃されたっけ?
 葵のママさんを助けるのにも協力してもらったしな。 元気かな葵ママ?


ガラガラガラガラ。

「……」

 嫌なモノを見た。
 カートに乗った肥え太ったゴブリンだ。
 醜い顔を歪め嗤っている。
 苦い記憶が蘇る。

「グギャ!?」

「不可」

 近づかせねぇよ!
 『ヴォルフライザー』を投擲し串刺しにする。
 取り付けていた『ウロボロスカフ』を引き戻し手元へ。
 ゴブリン爆弾しかも毒の煙を出す相手だ。
 爆発する前に潰す。

「ゲギャギャギャ!」

 両腕が発達したゴブリン。
 緑色の体皮と鷲鼻は一緒だがその両手だけが異常に大きい。
 周囲のゴブリンに命令し襲い掛からせる。
 ただその突撃攻撃は稚拙だ。
 異界迷宮の魚頭のような連携はなく、ただただ突っ込んでくるだけ。
 大剣で薙ぎ払ってくれといっているようなものだ。

「シッ!」

 そろそろ周囲に十分ゴブリンが集まったので狩り始めるとしよう。
 待っている間に【気配察知Lv.1】を取った。
 もっと早くとればよかった。
 【ガードドッグイヤー】で強化された感覚と【気配察知Lv.1】は相性がいいのかもしれない。
 感覚の範囲内の敵の位置を正確に察知できる。
 一匹も逃がさない。

「ギャギャ!?」

「ギャーー!」

 見つけた。
 件の紫色のゴブリン。
 気持ち悪い半仮面をつけ、その体皮は濃い紫色をしている。
 斑に黒も混ざり病的なイメージが連想される。
 まるで毒キノコだ。

「む!」

 紫色の髑髏を両手で持ち構えた。
 なんだ!?
 
『ゲェアアアアアアアア!!』 

 紫焔。
 髑髏の口から紫色の炎が吐かれる。
 魔法か。
 よく見れば炎をかたどっているのは人魂だ。
 怨念の炎が迫っている。

(熱くない?)

 『エポノセロス』で防ぐが全く熱くない。
 ただ臭い。
 ……こぼした牛乳を拭いて一週間放置した雑巾のような不快な臭いだ。
 これは毒なのか?呪いなのでは?
 ゴブリンの呪術師?

『ゲェエヘ! ゲェエヘエエ!!』

 紫色のゴブリンは狂ったように髑髏を振り回し紫焔をバラまいている。
 周囲のゴブリンたちはニヤニヤと紫焔に包まれる俺を見て嗤っていた。
 手に持つ武器で音を鳴らし、獲物が弱るのを待っている。
 やがて紫焔は止み、大楯の中で蹲る俺を指さし嗤う。

「ギャギャギャ!」

「ギャッギャーー!!」

 ああもう、ほんとうにゴブリンは嫌いだ。

「『クリムゾンストライク』」

 ゴブリンたちの時さえ切り裂いて、死神の一撃は死をもたらす。
 紫色のゴブリンも、太腕のゴブリンも、すべてまとめて。
 一掃する。

「ゴブリン狩りだ」

 ちょっと放置してたら調子に乗って増えまくってる。
 これは狩りつくさねばなるまい。
 東雲市街地奪還作戦、リベンジだ!
 
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