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第二章:魚と犬と死神
百三十五話:
しおりを挟む奇声を上げてシンクくんは寝てしまった。
覆いかぶさっていた彼の大きな体の隙間から抜け出る。
ちょっとお尻が上がってて変な格好で彼は寝てしまったみたい。
「えへへ、シンクくん……!」
名前で呼んでしまった。
ずっと呼びたかったけど恥ずかしくて呼べなかった。
でもついに呼んでしまった。
もう普通に『シンクくん』って呼んで大丈夫だよね。
「ちょっと……だいたんすぎたかな?」
シンクくんにもらった大人な下着のせいかな?
なんだか胸を触られるのが気持ちよくて。
それに。
後ろから抱きしめられるのすごく、気持ちよくて……。
頭がぼぅってしてきて彼に体を預けたんだ。
それで……。
「ファーストキス……したんだあぁぁぁ」
彼の顔が近づいてきて、唇を重ねた。
凄く優しいキスだったよ。
……シンクくん上手。
なんで?
もしかして初めてじゃないのかな?
玉木さんとか……。
「うぅ……」
上がったり下がったり、気分の起伏が激しい。
ちょっとクラクラするよ。
「わっ」
汗だく。
下着がびしょびしょだ。
「あえ?」
……急いで着替えないと。
シンクくん寝ているから隣でもいいかな?
葵ちゃんがきたら誤解されちゃう!
「木実……」
「葵ちゃん!?」
いつのまにかいた葵ちゃんはジーッとこちらをみてから、入り口のあたりを調べている。
「カギ、ない?」
「襖だよ?」
カギはないし、閂みたいのもないね。
「入れなかった」
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葵ちゃんは入ろうと思ったけど入れなかったらしい。
不思議だね? なんでだろう。
ジーっとこちらを見つめてくる葵ちゃんが口を開く。
「えっちした?」
「にぇ!? し、ししし、――してないよっ!?」
「ほんと……?」
「ほんとう! ――あゃっ!?」
葵ちゃんの細い指が何かを確かめるように私の下半身に触れた。
「びしょび――」
「――濡れていないよ!?」
これは汗だよ!
確かめさせるようにブラジャーに葵ちゃんの顔を埋めた。
「汗、汗だよ! ほら、ブラも濡れてるでしょう?」
グリグリ確かめてもらう。
「「……」」
なにしているんだろう、私。
「シャワーいくね……」
「わたしもいく、確認する」
「どうやって!?」
シャワーから戻ってきたらシンクくんは居なくなっていたよ。
◇◆◇
「≪ベルセルク≫ッ!」
発動しない!?
『クリムゾンストライク』
必殺の魔法は不発に終わり。
俺は幾度目かの死を迎えた。
・・・・・
・・・
・
『黒のガチャ試練 Take9』
ベルセルクの発動失敗。
おそらくヴォルフガングに青い炎が溜まっていないから。
死神の障壁を突破する最終手段だったのに。
オォゥ……オオゥ……
大破中のはずの『エポノセロス』も復活しており、死神の一撃を耐えられるかやってみたが、無理だった。
『エポノセロス』ごと真っ二つ。
どんな火力だよ。
「く……」
イケメンシャム猫さんの真似をして上空に飛んだけど普通に合わせてきた。
空中で真っ二つ。
どうすればいいのよ?
どうにかして死神の障壁を突き破るしかないのか。
「はぁあああああああああああ!!」
だが、この禍々しい障壁を破れない。
ツインテの動きを参考にした左右の連打から一撃に代わる連打を以てしてもビクともしない。
連撃じゃダメだ。
一撃で破壊するくらいの強力な一撃が必要だ。
『クリムゾンストライク』
死は迫る。
感覚は麻痺している。
死の狭間の時間が長い。
「っ――」
自分の体が真っ二つにされていく様をゆっくりと俯瞰してみていた。
・・・・・
・・・
・
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