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第二章:魚と犬と死神

百三十四話:黒のガチャ試練

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 気が付いたら寝ていて限定ガチャの時間を逃した!
 
「はぁあっ!?」

 そんな夢をみて飛び起きた。
 時刻がわからない。
 辺りは暗く夜のようである。
 場所は神社の中だ。
 赤い布団を掛けられて寝ていたみたい。

「まさかほんとうに?」

 木実ちゃんに覆いかぶさったとこまでは覚えている。
 いや、あれが夢だった可能性もある……?
 んん。
 ファーストキスの感触は忘れない。
 極上の甘美である。
 あれは現実だ。

「……よかった」

 木実ちゃんの行方もきになるが……。

 俺は黒のガチャを起動する。
 まだ時間内のようでSR以上排出率UPのPOPも健在だ。
 魂魄ポイントも十分にある。

「250連、いってみようか」

 UR排出率50倍。
 このチャンスを逃すわけにはいかない。
 神々よ、祝福せよ!
 いつ終わってしまうかわからないから、サクサクいくぜ。

「SRキタ!」

 サクサク行きたいけど、イケメンシャム猫さんの演出が飛ばせない。
 スキップ機能プリーズ。
 まぁいきなり熱いSRなので飛ばせても飛ばさないけど。

「鎖……手錠?」

 普通の手錠よりも大きく、輪っかの間がチェーンで繋がれている。
 ブラックメタルな手錠だ。
 対魔物戦には使いづらそうだが……。
 どういった効果があるのか、要検証かな。

「ノーマル」

 黒のガチャはさすが100魂魄の高級ガチャというべきか、ノーマルでも出るアイテムがバカにならない。 まぁ高級ランジェリーが多いのだけど。
 ガコンと黒いカプセルが排出される。
 イケメンシャム猫さんがさっと割ってくれる。

「おお?」

 人形だ。
 どこかイケメンシャム猫さんに似た猫剣士の人形。
 イケメンシャム猫さんがサムズアップしている。
 なんだこのシークレットレア感。


 絶望と希望を繰り返すこと幾星霜。
 
「ふぅぅ……――――セイッ!!」

 あらゆるレアリティのカプセルを引いてきた。
 おそらくその数は500回。
 そしてついに、その時は訪れた。

「ッ!?」

 ガチャの周囲が歪む。
 黒と白の世界は交互に現れる。
 かつてないほどの神秘的な演出。

「きたか!?」

 オォォ……
 
 聞こえる。
 深淵の狭間から奴の声が。

 オォォ……オォォ……

「なんだとっ――――」

 焦る俺をあざ笑うかのように。
 黒のガチャから漆黒の閃光が放たれた。


◇◆◇


 どこだ? 

オォゥ……オオゥ……

 周囲から呻き声が聞こえ、高い燭台の上で蝋燭の火が揺らいでいる。
 先ほどまでガチャをしていた場所じゃない。

「……」

 目の前には玉座。
 ボロボロの灰色のマントを着たナニカが座っている。
 フードを被っており顔は見えない。
 
(まさか……)

オォォ……オォォ……

 広間に呻き声が木霊する。

「ッ!?」

 ボロボロの灰色マントのナニカは立ち上がる。
 その手には禍々しい大鎌。
 漆黒の刃と柄の間。
 いったいどれほどの血をすすればそこまで赤くなるのだろうか?、と思うほど赤い宝石がついている。
 
「まてまて!?」

 中腰に必殺の構えを見せる死神。
 何度もガチャで見たその技を知っている。

 『クリムゾンストライク』 

 魂を狩りとる死神の一撃が迫っている。

「っぐあぁああ!?」

 漆黒の斬撃。
 体を真っ二つに切り裂かれた。
 上半身と下半身が真っ二つにされている。

 ――――死んだぁ!?

・・・・・
・・・



『黒のガチャ試練 Take2』
 
 どこだ?
 
オォゥ……オオゥ……

「……いやまて」

 真っ二つにされた体が戻っている。
 それに目の前の玉座にまたナニカが座っている。

オォォ……オォォ……

 立ち上がったナニカは大鎌を中腰に構えた。

「クソッ!」

 訳がわからないが、戦うしかない!

 ヴォルフライザーを装備し斬りかかる。
 しかし、死神を守る障壁に阻まれた。
 阻んだ障壁がおぞましく嗤っている。

「――ぐあっ!?」

 真っ二つ。
 俺は2度目の死を迎えた。

・・・・・
・・・


『黒のガチャ試練 Take3』

 ……嘘だろ。

オォゥ……オオゥ……

「おおぅ……」

 どうやら俺はガチャに、囚われてしまったようだ……。

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