上 下
121 / 179
第二章:魚と犬と死神

百十七話:カッパ?

しおりを挟む

 「……カッパ?」

 アンデット狩りを終えて寝ずの3日目に突入。
 今日はどんよりと曇っている。
 晴れていたら朝日で死んでいたかもしれない徹夜二日終わりの朝。
 魚頭狩りに来たのだが、河童が見える。

「……カッパね」

 どうやらミサにも見えているようだ。
 俺だけに見える妖怪だったらどうしようかと思ったが、大丈夫だ。
 なにが大丈夫なのかすらわからないが、まだまだ戦える。
 河童は川から半分出ているが襲ってはこない。
 レアの魔物だったら魂魄ポイントと魔晶石が狙えるのではと思うが、川に飛び込んで戦うのはどうなんだろう。
 相手の土俵で戦うなんて無謀すぎるよな。
 
「「「……」」」

 謎の沈黙。
 川の流れと小鳥のさえずりの音だけが響いている。
 そろりそろりと、河童は川に入って消えていった。

「なんだったの?」

 わからない。
 河童を見たら幸運になる伝説とかないかな?
 それなら今すぐガチャを引くんだが。
 なんだか不吉な予感でしかないからやめよう。

「んん゛っ」

 時間がもったいない。
 ミサを抱きかかえて魚頭狩りへと向かおう。
 昨日のマッサージの余韻が残っているのか、ミサから艶めかしい声がもれた。
 ブラックホーンリアのSP補充も満タン。
 今日も高速立体起動で狩りまくるぞ!

 今日は時間当たりの魂魄獲得量、600ポイントを目指す。
 600×24=14400ポイントだ。
 保有魂魄3万越えも夢ではないな!

「ふふふふふ!」

「……」

 ついついこの後のガチャのことを考えると笑ってしまう。
 ミサも慣れたようで何も言ってこない。
 
「お腹すいた!」

 それどころか首に両手で手を回し腹ペコアピール。
 首しまっているからね、防御力高くても頸動脈を絞められるのは危険なようだ。
 ママノエの踊り食いでいいかな?

「いいわけないでしょ!?」

 さいですか。
 そういえば魚頭の領域はあまり探索したことがなかったな。
 どこか無事そうなお店でも探してみようか?
 生ものはもう全滅だろう。 最近暖かかったし。 保存食のありそうなお店ないかな。

「あ、東雲中央公園に備蓄倉庫があったかも!」

 最近だといろんなところに備蓄倉庫があるよね。
 街中にも見かけるし公園にも。
 
「たしか結構大きかった気がする」

 駐屯地を見て思ったけど、やっぱりちゃんとした災害対策用品があるといいよね。
 プライベートテントとか東雲東高校にはなかったからな。
 今はまだ暖かいからいいけど、この先冬が来たら足りないものがたくさんあるぞ。
 領地化したけど何ができるかまだ分かってないし、備蓄倉庫いってみるか。

「うん、行こう!」

 雑魚狩りをしつつ進んでいけばいいだろう。
 多少効率は落ちるがいたしかたない。
 ミサもやる気になっているようだしな。

 人を背負いながらでも屋根上パルクールで屋根を壊すことがなくなった。 
 ブラックホーンリアを一瞬起動することで最小のSPで虚空を蹴る。
 ミサへの負担を減らす動きが繊細な操作の練習にもなる。 
 
「あれって……」

 目的の中央公園へと辿り着いたが……。
 
「中継拠点なの?」

 進行拠点への突撃を繰り返してきたが、あきらかに規模が違う。
 祭壇も豪華であり古代の遺物のような、海底神殿のような石造りの建物だ。
 いくつもの石像がならんでおり奥には魔結晶のような物も見える。
 中継拠点で間違いないだろう。

「そっかぁ……」

 ミサは諦めてしまったようだ。
 しかしどうだろうか?
 防災倉庫のような太陽パネルが設置されている建物は特に壊された様子もなく無事みたいだ。
 しかもうじゃうじゃと魚頭たちがいて大変おいしそうである。
 見た限りでは黒炎の怪物やアンデットの重戦士のような規格外はいなそうだ。
 
「え。 嘘でしょ……?」
 
 ミサにとって中継拠点は黒炎の怪物との死闘の記憶だ。
 二人で行こうなんて、ちょっと・・・・無謀だと思っちゃいますよね。

「むりむりむりーー!? なに考えてるのぉーーーーー!!」

 みんなの為に備蓄倉庫の解放を!
 なんて微塵も思っていないけれど、明日のガチャまでにいくつ魂魄ポイント貯められるかな。
 URを当てる為にも、5万ポイントは欲しいぞ。

「ふははっはははっ!」

「急に笑うなーー!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...