世界がゲームみたいになっても俺は無口キャラのまま

第二章：魚と犬と死神

百五話：

　深夜の東雲市街地に笑い声が木霊する。

「くはは、くはははははは！！」

　楽しい。
　漆黒の大楯『エポノセロス』を前面に両手で持ち、突進を繰り返す。
　纏うオーラがまるでトリケラトプスのように変化し、アンデット系の魔物を蹴散らす。
　大型トラックに轢かれたようにゾンビと骸骨がボロ雑巾のように転がった。
　魔物を倒すごとにエネルギーは増え永久機関が完成する。
　ただただ戦場を蹂躙して突き進む。
　膨大なエネルギーの塊となった俺は、デュラハンの怪物ですら止めることはできない。

『ロォオオ……』

「ぬっはー！」

　楽しすぎて侵攻拠点をぶっ潰してしまった。
　祭壇で奇妙な踊りを踊るシャーマンを突撃蹂躙。
　なんか魔法みたいの撃ってきたけど『エポノセロス』が吸収した。
　遠距離魔法無効とか強すぎんか？
　なんならカウンターで衝撃波も放てる。

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　メニュー

　鬼頭　神駆

★魂魄
　魂魄ランク：ヒーロー
　保有魂魄：３９８０ポイント
★スキル
　スキル購入
　スキル：【自然治癒力強化Lv.2】【槍術Lv.1】【身体強化Lv.2】【忍術Lv.1】【脚力強化Lv.２】【剣術Lv.2】【盾術Lv.1】
　固有スキル：【ガチャLv.3】
★魔法
　魔法購入
　魔法：【】
　限定魔法：【ベルセルク】
★マップ
『万軍の不死王支配地域』
★称号　
【*****の発見者】【ママーミーの天敵】【ワイルドドッグの天敵】【ジャイアントキリング】【レコードホルダー】

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『万軍の不死王支配地域』。
不死王か、ノーライフキングってやつかな？
ゲームだったら中ボス感ありそうだよね。　

「３９８０！」

　もう少しで魂魄が４０００になる。
　つまり黒のガチャが４０回もひけるということだ。
　ガチャガチャしたい。
　魔物をガチャってガチャガチャを回そう。

「ふはははははは！」

　しかし魔物が密集してて狩りやすいぞ。
　なんか剣とか弓とか装備したスケルトンが増えたけど関係ないな。
　全員問答無用で『エポノセロス』でひき殺す。
　盾とはいったいなんだったのか。
　もはやこれは装甲車だ。

「ぐごぉ！？」

「はっはー！！」

　棍棒を叩きつけてきたゾンビをミンチに変える。
　この無双感は癖になるな！
　
　

◇◆◇


「……ベルゼさんですね。　いらっしゃるでしょうか？」

　ヘーラー隊からの異常報告。
　黒髪ロングこと『一ノ瀬　栞』の千里眼はベルゼこと『鬼頭　神駆』の存在をとらえた。
　ものすごい速度で敵を倒し続けている。
　遠く離れているため詳細は分からないが、いったいどうやっているのか気になる黒髪ロングであった。

「リリス隊の皆さん聞こえますか？　最重要人物がくるかもしれません。　皆さん戦闘服に着替え特別室に集合してください」

　【千里眼】と【念話】スキルの合わせ技を使いこなす黒髪ロング。
　範囲内であれば自由に念話を送り付けることができる。
　電子機器の使えなくなった現状では最高の指揮官能力である。
　また冷静で頭も切れ非情な判断もこなせる。　学生たちからの信頼が厚いのも頷ける。
　ただし目的の為ならば手段を選ばない冷酷さがあった。

「栞ちゃん私は？」

「美愛さんはポンコツなのでいりません」

「ひどいー！！」

　存外おこちゃまな親友は放置して、自身もまた着替える。
　目的の為ならば自身を差し出してもいい。
　もちろんそれ相応の対価がなければしないが。
　『鬼頭　神駆』を手に入れる為ならば、あらゆるものをベットすべきだと黒髪ロングは判断した。

（足りますでしょうか？）

　最重要人物『鬼頭　神駆』はかなりの女好きだ。
　連れていたのは女子４人。
　作戦を一緒に行ったが戦闘向きではなかった。明らかにハーレム要員。
　やはり『英雄色を好む』というくらいなのだろう。
　
（むむむ……）

　自身の体、特に胸に目をやり手をやり考える。

（足りますでしょうか……）

　残念ながら、『一ノ瀬　栞』の胸は発展途上だ。