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第二章:魚と犬と死神

百二話:決着!!

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「大歓迎だよ! 二人ともよろしくねっ!!」

 服部先輩に二人を任せておく。
 先輩は世話焼きだから適任だろう。
 なんだか話しやすいオーラが出ているようで、いつも色んな人に話しかけられている。
 それに自分からもガンガン話しかけている。
 なんなんだアレは。
 圧倒的コミュ強者なんだが。

(凄いな)

 コミカル且つオーバーリアクション。
 服部先輩から学ぶべく観察してみるが、基本的にニコニコして可愛い動きだ。
 うんうんと話しを聞いている。
 相づちを打つだけで相手がどんどん会話していく。
 服部式コミュニケーション術はんぱない。
 
「おかえりなさい、シンク君!」

 玉木さんのお出迎え。
 腕に密着する柔らかい感触。
 花のような甘い匂い。
 彼女の声が耳に心地よい。
 
「えへへ」

 腕にくっついた玉木さんを見ると上目遣いの彼女と目があった。
 美人の笑顔は破壊力がはんぱない。
 これで落ちない男子高校生がいるだろうか。
 長い耳の先が少し赤かった。

「おかえりなさい! 鬼頭君!」

 ワッツ!?
 逆の腕にも柔らかい感触がっ。
 しかもこの匂いは木実ちゃんである。
 見ずともわかる。
 しかし木実ちゃんはこんなに大胆ではなかったはず!?
 いったい何がおきているんだ。

「おかえり、シン」

 背後でお尻を触りながら葵も出迎えてくれた。
 なんでお尻触るの?
 エロ親父なの?

「……おかえり」

 昨夜のせいで恥ずかしそうなミサも出迎えてくれる。
 なんだかいつもより胸部装甲が厚い気がする。
 あげた下着はつけているようだ。

「ただいま」

 みんなが集まったことで周囲から視線がくるけど、全然嫌な感じはない。
 駐屯地で受けた視線とは違うのだ。
 あぁ、ここがやっぱり今の俺のホームなんだと認識させてくれる。
 彼女たちの温かさも、周囲の空気感も、居心地が良い。

 護らないとな。
 みんなもこの場所も。


◇◆◇


 さてガチャタイムである。

「よし」

 黒のガチャの期限も迫っている。
 今日こそヤツ《・・》と決着をつける。
 イケメンシャム猫さんの怪我も治り、剣も新調されている。
 その表情からもやる気に満ちているのがわかる。

「はぁあああああああああ」

 俺はガチャをタップする指先に気合を籠める。
 前回は気合がたりなかったのか死神を呼び出すことはなかった。
 代わりにR以上の当たりもなかったんだが。
 今回は全力でいかせてもらうぜ。
 一発100魂魄ガチャ。
 いっきまーーす!!

「せいっ!!」

 黒いロングコートを着たイケメンシャム猫さんが指を鳴らし華麗にガチャのレバー引く。
 そこにはもう死神に敗れた悲壮感はない。
 自信に満ち溢れている。

「いきなりだとっ!?」

 黒いガチャの筐体がガタガタと揺れ始め黒い光のエフェクトが舞いあがる。
 これは高レアリティ演出!
 テンションぶち上げ演出!!

――ガコン!

 黒いカプセルが排出されるや黒い羽根が舞い散る。
 しかも今回はそれだけではない!
 黒い稲妻が奔っている。
 カプセルがまるで自己主張するように激しく動いているぞ!?

 これはSR以上ッ!?

 SSRは未だにブラックホーンリアの一回だけ。
 その性能は規格外。
 戦闘の軸となる逸品だ。
 ワクワクが止まらない!

「っ!?」

 聞こえてしまった。
 今は聞きたくなかった。
 今回は頼むから来ないでくれ。
 そう願ったのに。
 無慈悲にも鐘の音は響く。
 死神の登場だ。

オォォ…… オォォ……

 不気味な音色の響きと共に死神は舞い降りた。
 黒いカプセルを守るように立ち、イケメンシャム猫さんに大鎌を向ける。
 
「あ」

 しかしイケメンシャム猫さんは分かっていたのか、すでに剣を上段に構え力を溜めている。
 なんという集中力!
 リベンジを誓う剣士の気迫。
 死神が大鎌を中腰に構え必殺の力を溜めていく。前面には禍々しい障壁が展開された。
 背後の黒いカプセルからどんどんと黒い光が送られていく。
 前回と一緒だ。

 どうする!? 
 イケメンシャム猫さぁああああん!!

『クリムゾンストライク』

 無慈悲にも死神の必殺我が放たれた。
 それは魂を刈り取る死神の一撃だ。
 横なぎに振るわれた大鎌。
 それをなぞるように漆黒の斬撃が生まれた。
 巨大な大鎌がイケメンシャム猫さんに襲い掛かる。

『紫雷一閃――』

 紫電となったイケメンシャム猫さんが宙に高速で移動した。 

『――雷斬り』

 雷の如く。
 死神の障壁にジグザグの雷閃が刻まれる。
 遅れてやってきた衝撃音と共に障壁がはじき飛ぶ。

オォォォォ…………

 死神もまた消えながら天へと還っていく。
 勝った。
 イケメンシャム猫さんの勝利だ!

「うおおおおおおお!!」

 俺の雄たけびと共にカプセルは開かれた。
 発生した大量の黒い光が俺を包み込む。
 やがて両腕の前に収束していく。

 コレは!?

「……盾?」

 目の前に現れたのは盾と呼ぶには攻撃的な、漆黒の大盾だった。
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