上 下
92 / 179
第二章:魚と犬と死神

九十話:閑話:東雲東高校の新七不思議~夜の視聴覚室から変な音が聞こえてくる~

しおりを挟む
久しぶりの嬉しいニュースに東雲東高校でのBBQは大成功だった。
 もはやママノエの地位は盤石。布教活動はおしまないぞ。
 ドッグキャンデーも美味しい。
 舐めると元気も出るし体の芯からカッカとしてくる。

「さて!」

 お楽しみのガチャタイムだ。
 いつのまにか魂魄が5000も溜まっている。
 あの黒炎の怪物はいったい何ポイントくれたんだろうか?

 視聴覚室で購入できるスキルや魔法を見るがパッとしない。
 ガチャ装備の優秀さが際立つ。
 それに死神を倒すという目標もある。

 黒のガチャも残り8日間と期限が迫っている。

「ガチャ一択」

 黒のガチャを起動。
 イケメンシャム猫さんが生き返っていた。

「あら?」

 黒いロングコートは汚れ、腹にはサラシが巻かれ血に濡れている。
 前回の敗北の後の状況のようだ。

「……」

 まぁいいか。
 とりあえず、ガチャを回そう。
 一発100魂魄。
 震えるぜ……!

 俺は静かにそっとガチャをタップする。
 今はまだ決戦の時ではない。
 死神に気づかれぬよう気配を消すのだ。

「お」

 排出された黒いガチャは黒いオーラを放っている。
 コモンではなさそう。
 イケメンシャム猫さんが剣を構え、集中力を高めていくのが分かる。
 それはリベンジを誓う剣士のようだった。

「む」

 稲妻斬り。
 黒いカプセルにギザギザの銀閃が刻まれバカリと割れた。
 俺の目の前にアイテムが出現する。
 これは、なんだ?

「ん~?」

 小さい収納ケースのついた手甲?
 手甲というほどの防御性能はなさそうだが。
 試しに収納ケースにポーションを入れてみるとケースの大きさ以上に入った。
 ポーションは10本入る。
 ポーションが10本入った状態でペットボトルの飲み物も10本入る。
 しかも重さを感じない。
 これは……!

「神アイテムキター!!」

 重量無視のマジックバッグじゃないですか!
 しかも具現化されているから譲渡も可能だ。
 一発目から神引きなんだが。
 ちょっと制約がありそうだからあとで詳しく実験しよう。

 この調子でいこうぜ!

 俺は気配を殺しガチャをタップする。
 黒のガチャの筐体がわずかにカタカタっと揺れる。
 これはキタか?

 排出されたカプセルは先ほどよりも強いオーラを発している。
 しかしSR演出よりは弱いか。
 羽の演出はなし。

「おっ」

 イケメンシャム猫さんが飛んだ。
 今度は空中から稲妻斬り。
 銀閃が黒いカプセルをギザギザに切り裂く。
 割れたカプセルから黒い粒子があふれ俺の体にまとわりつく。
 徐々に手の上に集まってくる。

「んん……?」

 コレはなんですかぁ!?
 俺の手の上には理解不能なモノが出現していた。
 それはまるでオモチャである。
 小さいころに遊んだことがある、物を挟む棒のオモチャ。
 持ち手と柄は黒く、先端は赤いアームがついている。
 持ち手部分のレバーを引くとカションカションとアームが開閉した。
 これで遊べと……?

 おそらくRランクのアイテムだと思うんだけどなぁ?
 ガードドッグイヤーとかと同ランク。
 なんなら価格は10倍。
 なんらかの能力を秘めているのではなかろうか?
 要検証だな。

 その後も回すがC~Rが排出されている。
 パッとしたアイテムが出ない。
 やっぱり気合が足りないのか?
 気配を殺していては良いアイテムなどでないのではないか?
 しかしまだ死神と対峙するのは早い。時期尚早だ。
 なぜならイケメンシャム猫さんの剣技がどんどん洗練されてきているからだ。
 そこにはたしかな成長の軌跡が見える。
 俺の魂魄ポイントと引き換えに。

「鬼頭、いる?」

 ノックもなく視聴覚室のドアが開かれる。
 入ってきたのはミサと葵だった。
 
 今はもう遅い時間だ。
 街の明かりのない空は綺麗で月明りだけでも過ごせる。
 視聴覚室もその明かりだけで十分だった。
 東雲東高校にいるときは大抵ここにいるので、あまり人は近寄らない。
 来るのは木実ちゃんたちくらいだ。

「ん」

「……なにしてるの?」

 カションカションと謎アームの実験をしていたら、ミサに呆れたような視線を向けられた。
 逆に葵は興味深々のようだが。 残念ながらこれは譲渡できないのである。

「ま、まぁいいわ? そ、その今日は、木実は、来ないから。 おじいちゃんたちに捕まって疲れてそうだったから、……代わりに私が約束を果たすわ!」

「?」

 顔を真っ赤にしたミサが吠えた。
 後ろで葵がニヤニヤしている。

「お、おおおっおっぱい契やきゅッ、よっ!」

 めっちゃ嚙んでる。
 絶対、葵に揶揄われてるだろ……。
 貧乳二人でおっぱい契約を果たしにくるとかなんの冗談なの?
 なめてんのかっ!?

 これはお仕置きが必要だな!

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:390

4人の乙女ゲーサイコパス従者と逃げたい悪役令息の俺

BL / 連載中 24h.ポイント:951pt お気に入り:819

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

BL / 連載中 24h.ポイント:3,418pt お気に入り:1,458

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:5,829pt お気に入り:2,458

隠しキャラに転生したけど監禁なんて聞いてない!

BL / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:2,125

底辺αは箱庭で溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:9,767pt お気に入り:1,237

18禁乙女ゲーム…ハードだ(色んな意味で)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:2,816

処理中です...