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第二章:魚と犬と死神
七十七話:
しおりを挟む東雲東高校奪還作戦か。
メニューを開いた時、マップには『闘争地域』と表示されている。
魚頭に内部まで攻め込まれていた時はたしか『千棘のマーマンロード支配地域』となっていたはずだ。
服部が猫の店、『猫の手』で手に入れた情報では自分たちの領域にする方法があるらしい。
「うーん……ほんとに信用できるのかな?」
「……」
あの猫、胡散臭いからね。
ただ運営側、中立のようなことを言っていたから嘘ではないと思うけど。
なぞに鋭い嗅覚で性欲ばらしたりしてくるけど。
「でもやるしかない。 そうよね、シンク君?」
このままじゃジリ貧になるだけ。
なら打って出ようという服部……先輩。
可愛い顔してネジ飛んでるなぁ。
「うむ」
「みんなの為にも、がんばりましょう!」
久々にあったご老人たちに崇め奉られていた木実ちゃん。
貯水タンクに溜めた川の水を聖水にするという離れ業を見せ、特に体調の悪いお年寄りには無から生み出した聖水で治療するという、まさに奇跡をぶちかましてきた。
こんな時でなかったら、美少女巨乳超能力として世間を騒がせていたに違いない。
ご老人たちの熱がちょっと怖い。アマミク教団とかできないよな……?
「敵の本拠地を繋ぐ中継地点、そこに魔晶石を使った祭壇があるんだよね?」
俺が今までつぶしてきた祭壇は侵攻拠点だったもの。
簡易的な祭壇で魔晶石はなかったと思う。
残骸を詳しくはみてなかったけど、ひょっとしたら魔石とか魔力の籠った物があったのかな?
だったら勿体ないな……『猫の手』で買い取りしてくれるのに。
「……魔晶石を4つ、……それに1万クレジットのスクロールも」
1万クレジットってなかなか溜まらないと思う。
みんなで集めればって考えるけど、その分怪我もしてポーションの使用も増えるんじゃないかな。
装備を整えてしっかりと対策しないと。
なんだか『重要な情報』もらったことで、猫の手だけが潤っていくような、嫌な感じがするな。
猫の手の平の上で転がされているような、そんな感じ。
「さっ、野犬狩りを始めましょ……駆逐してやるんだから!」
すこし暗くなった雰囲気を吹き飛ばすように、玉木さんが復讐を誓う。
エルフお姉さんはもうすっかりムードメーカーだ。
みんなともすっかり打ち解けたようでよかった。
コミュ力高くて羨ましい。
「……くる」
東雲東高校を出て南へと向かう。
マップでは『獄炎のケルベロス支配地域』と表示された。
犬どものテリトリーだ。
ガードドッグイヤーで強化された聴覚が犬どもの接近を感知する。
明らかにこちらに気づいて向かってきている。
相手のほうが索敵能力が高いのか……。
ガルルゥ!
黒茶色をした野犬が5匹。
汚ねぇツラ顔だ。 歯茎剥き出しで唸り声を上げて威嚇している。
まずは数を減らそう。
玉木さんと葵が叫ぶ。
「『風の精霊、集れ踊れ、ウィンドショット!』」
「ロックバレット!」
緑の風が玉木さんに集まり踊るように集っていく。
放たれた風玉が野犬の一匹を倒す。
葵の持つカードが発光と共に消え、石礫の散弾が放たれた。
合わせて俺も突っ込む。
「ガルゥ!?」
「ッ!」
石礫の散弾を回避した元気のいいやつをヴォルフライザーで真っ二つに両断する。
これで残りは3匹。
「うう、犬ぅううう!!」
「やあぁ!」
盾とメイスを構え走るミサ。
ガチャから出た肩掛け鞄もしょったままだ。
木実ちゃんもメイスを持って走る。
俺は野犬を警戒しつつ彼女たちの戦闘を見守る。
「やりゃ!」
手負いの野犬にミサのメイスがヒット!
「んんっ!!」
木実ちゃんもテニスラケットの如く、メイスを振るい野犬へと命中させる。
最初に止めを刺したときは愛用のテニスラケットが折れてしまったけど、今回は野犬の首をへし折った。
何気に運動神経良い木実ちゃん。
でも無理はしないでね。
俺は全力で彼女たちフォローできるようにポジショニングする。
「シンク君、ちょっと……」
「……笑」
万一があれば割って入る。
全神経を集中させ俺はポジショニングするのだ。
集中!集中!集中!
某元世界テニスプレイヤーの如く集中だァツ!
「ガルルゥ……」
さらに野犬も逃がさないようにプレッシャーを与える。
これぞパーフェクトサポーター。
俺は全力でサポーターに徹するぞ!
「やりずらいわっ!」
ミサのツッコミメイスが最後の野犬を倒した。
なんだその表情は? 斬新なドヤ顔ですか?
「ありがとう、鬼頭君!」
木実ちゃん天使スマイルを見習いなさい!
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