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第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない

閑話:友人A

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 世界が変わってから、友人の様子がおかしい。

「ん? 鬼頭君なら平気だよ??」

 鬼頭のところに食事を届けにいった木実が帰ってきた。
 こんな夜中に男のところに一人で行くなんて、木実は危機意識がなさすぎる。 それに鬼頭なんて特にダメに決まってるでしょ……。
 ちょっと頬が赤いけどほんとに大丈夫だったのかしら。

「次はちゃっと行く前に声をかけて。 私もついていくから……」

 更衣室で助けてもらったけど、完全に信用したわけじゃない。
 鬼頭の噂は酷いものばかりだ。 女子供でも容赦せず食べてしまうとか。 木実と二人になんてしてたらペロリと美味しくいただかれちゃうわよ! 

「ただの噂だよ? 鬼頭君、優しいもん」

「……」

 もん、じゃないわよ。 
 洗脳でもされたの……?

「オーガ……木実に気がある」

「えっ!?」

 葵が耳打ちしてくる。
 全然そんな感じしなかったけどなぁ? 
あぁでも魚頭から助けていきなりお姫様抱っこで連れ去ったりしたもんね。 前は木実が挨拶してもろくに返さなかったくせに。

「微妙に……表情が違う」

「そう?」

「うん。 木実にはね」

 表情が分かりづらい者同士、何か分かり合えるのかしら?

「……失礼なこと考えたでしょ?」

「ぁっ、こらっ。 だ、みんないるからっ!」

 いつものノリで絡んでくる葵。
 ちょっ、ジャージ脱がそうとしないでぇえええ!


◇◆◇


 世界が変わってから、変態の方の友人も様子がおかしい。

「オーガ……ニヤニヤしてる」

「いや、邪悪すぎだろうぉ……」

 あ、思ってた言葉が出てしまった……。 聞かれてたらどうしよう。
 笑いながら野犬を撲殺していた鬼頭。 葵は近づいていく。
 そして何かを呟くと、鬼頭が驚いた顔を見せた。

(あいつでも驚くんだな……)

 小さな友人を恐れるように、一歩後ずさった。
 葵はニヤリと笑い鬼頭を追い詰めているようだ。
でも、そんなことして本当に大丈夫なの? 無理矢理襲われたら手も足もでないよ……?

「おーけー、もらった」

「ほんとに!?」

「うん」

 葵は、鬼頭に手伝ってもらう約束を取り付けたらしい。
 一体どんな方法で脅して……。
 しかも私も一緒に行くようだし。

「レベル……上げておいたほうがいい。 どうなるかわからないから……」

「……うん」 

 レベルなんて言うとゲームみたいだ。
でも強くなれるならなっておいて損は無いよね?
 鬼頭が二人に何かしようとしたら守れるくらいに。

(無理かな……)

 あの戦いを見た後では、無理だってどこかで思ってしまう。
 でも二人を逃がせるくらいには、なれるかもしれない。


 木実は甘党だ。

「……美味しい?」

「美味い」

「よかったぁ!」

 おにぎりの具に小豆はやめた方がいいと、私は言ったわ。
何かとグツグツ煮込み甘みを極限まで引き出した木実スペシャル。 あれは一般人には早過ぎる。
 しかし鬼頭は木実スペシャルを平気で平らげ、美味いと言った。
 ただの甘党か、もしくは……。

「ね?」

「あぁ……そうかも?」

 木実スペシャルを三つ平らげた鬼頭を見て、私は葵に同意したわ。


◇◆◇


 私たち四人は怪物の闊歩する道路を進んでいく。
 鬼頭の犬耳。
本物なのかピクピクと動き音を感じ取っているようね。
 似合っているのかと聞かれると、返答に困るわよ?

――ガルルルゥ!

「きゃっ!」

「……!」

「ひぇっ……」

 野犬っ!
凶悪な顔をした犬が現れた。
鬼頭が相手をしてくれるけど、攻撃を躱した野犬は私目がけて突撃してくる。
 
「キャイン!?」

「うわあああ!?」

 私は無様に尻もちをついて悲鳴を上げた。
 頭を押さえ縮こまって、ちょっとちびった……。
 結局、鬼頭が倒してくれたけど。 
 めちゃくちゃ怖い。

「……」

 鬼頭が押さえつけた野犬。 その前に立ちただ手に持ったレンガを振り下ろすだけなのに私は震えていた。
 野犬の歪な四角い赤い瞳は憎悪が、鬼頭の鋭い瞳は私を試すように見ていた。 
 やらなきゃ。 
 私は振り下ろす。

「……聞こえた」

 頭の中で不思議な音が聞こえた。


◇◆◇


 鬼頭は意外とモテる。

「ふふ、じゃあみんなで寝ましょうか?」

 どこからか連れてきた巨乳美人。
 しかも年上。 エルフだし。

「えっ……?」

「おーけー……」

「はい、そうしましょう」

 みんなって、鬼頭も??
 明日はどこか遠くに行くらしく、学校には戻らず近くの民家を借りた。
家の人はいなかった。 慌てて逃げたようで家のドアは開き洗濯物も干したまま。 どこかに避難しているのだろうか。 

 スーパーから取ってきた物資は、鬼頭がほとんど学校に届けに行った。 玉木さんのおかげでだいぶ重量を減らしてもらっていたけど、鞄一つでも相当な重さだったんだけどな……。

「布団を敷いて、シンク君は真ん中ね。 私は左腕枕を貰うわ!」

「じゃ、じゃあ私は右ですっ!」

 グイグイ攻める玉木さんに、木実も張り合っている。

「真ん中……」

「「えぇ!?」」

 それになんだか葵もちょっと……。
 色恋は苦手だけど、ちょっとだけ態度が変わってきている気がするわ。

「はぁ……私は端でいいよ……」
 
 鬼頭は頼りになる。 とは言っても男だし、無口で何を考えているのかわからないし。 まだ、怖いって思う部分もある。
 まぁでも明らかに巨乳好きだから、私を襲ったりはしないかな。

「……」

 葵といい勝負のペッタンコだもん。

 疲れていた私は、三人が無口の鬼頭を中心にワイワイと遊んでいる横でぐったりと布団にうつ伏せた。 
 不思議鞄の荷物持ちは、結構良いトレーニングになるよ。
 あぁ、全然走ってないなぁ。
 またタイムが落ちちゃうかな……。

 そんなことを考えながら、私は眠りに落ちていった。



(ん……?)

 私はお尻を持ち上げられる感覚に目を覚ました。

(なに? ……まっくら、いや、目隠し??)

「んん゛っ!?」

 口元もガムテープか何かで覆われて声が出せない。
手も縛られてどこかに固定され四つん這いの状態で、お尻を撫でられた。

「ぁっん゛」

 葵の悪戯? それにしては悪質すぎるわ。

「ほう、良い筋肉の太ももだ。 さすが陸上部だな」

(――鬼頭ッ!?)

「よぉく鍛えられている!」

――パァン!

「ッん!?」

 お尻を叩かれた。
 衝撃がお腹に突き抜け、お尻がジンジンする。
私はカクッカクッと体をビクつかせた。

(こいつ、どういうつもりっ!?)

「おまえも俺のハーレムパーティの一員。 しっかりと夜のご奉仕をせよ!」

「ヴんん゛ぅ~~!!」

 何言ってのんよ~~!!
やっぱりこいつタダの野獣! ケダモノだったんだわ!!
 あぁーー私のバカ! 助けてくれたからってちょっとでもこんな奴を信用しちゃって……。

「!」

 顔を横に向けると、布団の上に美味しく頂かれた三人が山積みになっていた。 
 性獣《ケダモノ》ぉおおおおおお!

「夜は長い。 たっぷりと可愛がってやるから、そんなに可愛く尻を振るなよ。 くくく、日焼け跡が最高だなっ!」

「んひぃぅ!」

 また、お尻を叩かれた。
 鬼頭のがっちりとした腕で腰を抱かれ、固定したお尻を何度も。

「ああ゛っ、ぁあ゛っ」

 軽快なリズムで。
 何度も尻肉を波立たされる。
息が苦しくてハァ、ハァと荒く呼吸をする。

「くくく、気持ちよくなってきたのか?」

 そんな訳ない。
口から息ができないから、気持ちいいわけなんて……。

「んっ!」

 ガシッっと腫れあがって敏感になった尻肉を掴まれた。
 鬼頭の手。
大きくてゴツゴツした男の手。

「んぅっ、んふぅっ!」

 好き放題揉まれている。

「いいぞぉ! 木実ちゃんにも匹敵する弾力だ!!」

(コイツ! 弾力マニア!?)

「太もも最高だ!!」

(やっ、そんな激しくッだめぇぇええ)

 私のお尻と太ももは、鬼頭が満足するまで揉みほぐされて頭はぼうっとしてきてしまった。 酸欠かな。 意識が朦朧として変な感じだわ。

「くくく、準備万端だな?」

「?」

 なにが?

「いくぞ」

「っ!」

 お尻の肉を上にあげるように押し広げられた。
 四つん這いの格好の私。
 何かがピタリと大事な部分に添えられた。

(だめ、だめだめっ――だめえええええええッ!!)
 
 私の初めては無残に奪われ……。


「おはよー」

「……おはよ」

 ……てはいなかった。
 布団からガバっと起きると、お味噌汁のいい匂いがした。
 肌のツヤツヤした玉木さんが朝食の用意をしている。
 木実と葵はまだ寝ていた。
 ……鬼頭はいないようね。

「シンク君は見回りにでてるわよ」

「そう、ですか」

「ふふ、なんだか凄いうなされてたわね?」

「っ!?」

 寝言、聞かれた!?
 玉木さんは意味深長に笑う。
私はなんであんな夢を見てしまったんだ……。

 なんでなのよぉ!?

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