上 下
58 / 179
第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない

五十八話

しおりを挟む
 眠れない。

「……」

 代わりに純潔の巨乳乙女二人は爆睡だ。
【純潔判定眼鏡】で確認したので間違いない。
 俺の腕枕で二人は安心した寝顔をみせている。
 こんな状況で安眠出来るとは、流石は俺の筋肉。

「んっ……」

「スゥ……スゥ……」

 さっきまで三人でワイワイしていた。
 玉木さんとも打ち解け合えたようで良かった。

 ちょっとトイレ。
二人を起こさないようにそっとどかし、またぐらで寝ている葵を放り投げゆっくりと立ち上がる。

「ううぅ……にゅぅ……」

 体育会系ガールのミサは端っ子で唸っている。
 筋肉痛か? 野菜も詰め込めばかなりの重量だからな。
ポーション、いや、少しマッサージでもしてやるか。

「ほう」

 これはなかなか、しなやかで良い筋肉だ。
 起こさないように優しく丁寧で丹念に。
 明日は結構な距離を歩くから、筋肉痛ではつらいだろう。

「ふにゃぁ……」

 うむ。 
 よくほぐれた。
 これで大丈夫だろう。

「トイレ」

 ついでに見回りもしてくるかな。



◇◆◇


 なんだアレ?

「……壁?」

 ブラックホーンリアを使い上空に上がる。
 今日の目的地、自衛隊の駐屯地のある方角に目を向けた。 
 高校の横を流れていた川は、大きな川へと流れ込む。 そこには橋が掛けられているのだけど、その真ん中では車を積み重ねて壁のような物が作られていた。

「ふむ」

 バリケード。
 怪物の侵入を防ぐため、そう考えるのが妥当か?
だとしたら壁の向こう側はまだ無事なのかも。 
 ちなみにこの辺りは『獄炎のケルベロス支配地域』とマップでは表示されている。

「……」

 俺はゆっくりと下降していく。
 朝の町は静か。
 時折、野犬の戦闘音らしき音が聞こえる。 人と戦っているのか、それとも怪物同士で争っているのか? 

「ふぅ……」

 空はいつもより澄んでいる気がした。
 煙や車の排気ガスが少なかったからだろうか。
 澄んだ朝の空は蜜柑色に染まり始める。
 朝陽はゆっくりと顔を出す。
 
「お」

 怪物を発見。
 即、サーチアンドデストロイ。
 皆を起こすのは悪いからな。 静かに上空から忍び寄り一気に弱点を攻撃。 双頭の間を【ヴォルフライザー】で斬りつける。

「「――ガァッ!?」」

 悠然と朝の町を闊歩していた双頭の野犬は、断末魔の悲鳴を上げ真っ二つになった。 
 後には赤黒い魔石を残す。
 猫の万屋で高く買い取りをしてもらえる、ありがたいドロップ品だ。

「次――んっ?」

 さらなる獲物を探すため上空へ。
 俺は辺り一面を見渡し、不思議な物を発見した。

「なんだアレ……?」

 大きな公道。 野犬たちがやってきている場所だ。
 そこに見慣れない建物があった。
 漆黒の大聖堂《カテドラル》。
 以前は無かった。
 だってあんな物、道路の真ん中にあったら邪魔すぎるだろう……。

(めっちゃラスボスいそう……)
 
 ちょっと行って覗いてくるか?
 ブラックホーンリアのSPもかなり回復している。
 むしろ今までにないくらい漲っている。
 何故か知らないけど。 

「シッ!」

 疾駆。
俺は空を駆ける。
一直線に突き進めばすぐだ。

「――っ!?」

 急停止。
 目の前を上空へと抜ける、黒い炎球。
 熱波が肌を撫でた。

「二発目っ!」

 これ以上の侵入を拒むように、複数の黒い火球が放たれる。
 放っているのは赤黒い野犬だ。
 双頭の野犬以外でも炎を吐くタイプがいるらしい。

「っ……」

 撤退。
 ちょっとした興味本位だったし、無理はしない。
しかし、遠距離型の吐息か。 厄介だな。

 炎対策が必要だ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...