上 下
24 / 179
第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない

二十四話

しおりを挟む
>>>無料ガチャを一回引けます。

 パチリと、俺は目を覚ました。
 辺りは真っ暗。
椅子に座り眠っていたようだ。 

「……」

 窓から覗いた月はさきほどよりも高い。
地球はちゃんと回っている。 
 視聴覚室を見渡す。 そこには木実ちゃんの姿は微塵もない。
 椅子から立ち上がり、下腹部を確認するがなんともなっていない。
カピカピの不快感が無いのだ。

 さっきのは夢だった? 月の魔力が見せた淫夢だったのか?

「装備解除」

 裸。
相変わらずの筋肉。
 フン、と一つポージングしてからまたタキシードを着た。
別にナルシストな訳ではなく、傷を確認しただけだ。

+++++++++++++++++++++++++++++++
 メニュー

 鬼頭 神駆

★魂魄
 魂魄ランク:ノーマル
 保有魂魄:21ポイント
★スキル
 スキル購入
 スキル:【自然治癒力強化Lv.1】【槍術Lv.1】【身体強化Lv.1】【忍術Lv.1】
 固有スキル:【ガチャLv.1】
★魔法
 魔法購入
 魔法:【】
★マップ
『千棘のマーマンロード支配地域』
★称号 
【*****の発見者】【ママーミーの天敵】

++++++++++++++++++++++++++++++

 ガチャを引く。
ガチャは人前ではダメだ。 危険だ。
一人でこっそりと引こう。

「……ハズレ」

 本日の無料分を回すと、白いカプセルがコロコロ転がる。
ハズレ演出に俺のテンションは下がる。

「お?」

 現れたのはカード。
 三枚のカードだ。
 精緻なカードには炎の球が描かれている。

「ファイヤーボール――っ!?」

 TCGでもやれと言うことなのか?
イラっとしながらイラストの上に書かれたカードの名を読み上げると、火球が飛び出した。

「やべっ」

 ゴオォ! と激しく燃える炎の球は校舎の壁に激突する。
飛び散る炎。 俺は慌てて足で踏み消火する。 
 
 危うく大惨事だ。 幸い燃え移ることは無く、すぐに消せたが。
 三枚あったカードのうち一枚は、光の粒子を二重螺旋状に煌かせながら消えていく。
 俺はその光景を見つめていた。


「ふぅ……」

 不注意だったな。
やっぱり一人でガチャしてよかった。 人がいたら火だるまだよ。
 残り二枚のカード。
取り扱い注意のリアルスペルカード。 
 白いカプセルから出てきた。 たぶんハズレだと思うんだけど、なにぶん説明不足だからなぁ。

 俺は炎の当たった壁を見つめる。 暗くてよく分からないが、壁は黒く煤けているようだ。 これも時間が経てば修復されるのかな? 

「……」

 現在着ている服、赤から出たタキシードはSRだった。
 正確にはSR【バトラータキシード】。 演出も派手だった。 詳細は不明だけど。

 魔法みたいなスペルカードがハズレの白から出たのは、魔法も覚えられるからかな? 
 俺が魔法購入で見た時はどれも必要な魂魄が高すぎた。 でも人によっては低コストで購入できるのかも。
 逆に購入しづらい俺からすればアタリだと思う。
まぁ一回で一枚消費だと、バンバン使うのは難しいが。 でも切り札として遠距離攻撃ができるのは戦略的に大きい。

(後二回引けるな)

 スキルを購入していったほうがいい気がする。

 俺は椅子に腰を掛け、メニューとにらめっこだ。
 まるで今月のガチャ代がヤバいのにさらなる課金をつぎ込もうとするダメ人間。 こうなったらもうダメだ。 ガチャをしないという選択肢は消えない。 その時は良くても、時間が経てばしたくてしたくてたまらない負のスパイラル。

「一回だけ……」

 ガチャをタップすると、帽子を被った猫がニヤリと笑いレバーを下げる。小憎らしい笑みだ。 ガチャンと鳴り、コロコロとカプセルは転がる。
 その色は緑。 初めて見る色。

「おぉ……」

 カプセルの周りは僅かなエメラルド色で光る。
派手なエフェクトではないね。 
 ガチャのウィンドウが閉じると同時に、アイテムがポンと出現する。

「……」

 オレンジ色のカメラのフィルムケースのような入れ物。 中には白い粒。
 薬だろうか?

 怪しすぎる……。
 
 なんの薬なんだよ。 せめて出たアイテムの詳細は表示すべきだろう。 どんだけ不親切なんだよ!
 と思ったけど、ケースにラベルが貼ってあった。

 『万能薬』

 ……。

 俺のコミュ障にも効くかな?

 万能薬ねぇ……。 どんな病気も治せる薬ってこと? だったら超レアアイテムじゃね?? 

「ふむ……」

 波が来ている気がする。
 俺は机にケースをコツコツ当てながら、再度ガチャウィンドウを開く。 月明りに照らされ、ガチャをタップしようとする俺はニヤけるのを止められない。 
 そして指も止められない。

 現れた帽子を被った猫も、ニヤついている。

 コロコロと転がるカプセル。

 その色は青。

「!」

 青色と眩い白のエフェクトが輝く。
 未知への期待。
俺は万能薬の入ったケースを握り締める。 ミキッと嫌な音がしたがそれどころではない。

「おお!?」

 ウィンドウが消え光が俺を包み込む。
赤玉からでたタキシードと同じだ。 あの時は羽根が舞っていたが、今回は無し。 白<緑<青<赤って感じか?

「……あれ?」

 光は収まった。
俺は体を隅々まで見渡すが、どこにも変化がない。
 少し考えて思いついたのは、装備解除したときのタキシードと同じくどこかにしまわれている可能性。 
 一旦装備解除で素っ裸になってから、装備と念じてみる。

>>>SR【バトラータキシード】を装着しますか?
>>>R【ガードドッグイヤー】を装着しますか?

 犬耳? 
 これは同時に装着はできないのか?
裸に犬耳とかヤバいだろう……。

「よし」

 試しにやってみると両方とも装着できた。
頭を触ると、ふさふさの耳がついている。 垂れ型ではなくピンとしたタイプ。 これで俺の恐怖度も軽減されるに違いない。 

 好感度アップアイテムかっ!
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...