10 / 116
夢
しおりを挟む
入学式が終わり、皆でポアロに向かった。
優しかったのはリカルドとルカだけだったみたいで俺を見ると皆遠くから眺めてヒソヒソ話をしていた。
何人かリカルド達に近付き「コイツ、悪い奴だから一緒にいない方がいいよ」と言っていたがリカルドとルカは無視して俺に話しかけてくれた。
二人が自分のせいで虐められたらどうしよう…と暗い気分のままポアロに着いた。
色鮮やかでいろんな形のお菓子がいっぱいあった。
生前でも医者に止められていてテレビでしか見た事がないお菓子が沢山並んでいる。
今はあまり甘いものを食べたい気分じゃないが、ガリュー先生は甘いのが好きだからなにか一つお土産に買っていこうかな。
「んぐっ!」
「ほらほら元気出せよアルト!最初は皆珍しがるかもしれないけど、すぐに慣れるよ!」
リカルドに棒状のなにかを口に入れられた。
甘い味が広がり口から出す。
ピンク色の棒だ、これってもしかして飴?
ペロッと舐めるとやはり甘い。
これが飴なのか、美味しい。
励ましてくれたリカルドにお礼を言い、リカルドとルカにオススメのお菓子を聞いたりして買い物をした。
ポアロの店主のお婆さんもとても優しそうな人で通おうかなと考えていた。
「おい、そこの一般人…退けよ」
買ったお菓子を見せ合いっこしていたら威張っている声が聞こえた。
俺達はポアロの近くの公園のベンチに座っていた。
邪魔にならない筈なのにその威張る人物は俺達のベンチを蹴飛ばした。
俺達は驚いて立ち上がる。
ソイツはいかにも目付きが悪い少年だった、後ろには取り巻きなのかひょろい少年と太った少年がいた。
リカルドは俺とルカの腕を引き小さな声で話した。
「関わらない方がいい、魔法学園の制服だ」
そう言われ、そういえば自分達とは違う制服だと今更気付いた。
魔法学園の生徒は一般学校の生徒を馬鹿にする子が多いと聞く。
陽向を歩く魔法学園の生徒と日陰をこっそり歩く一般学校の生徒って認識らしい。
関わって変なトラブルは避けた方がいいと俺も思い早く帰ろうと公園を出ようとする。
すると目の前を塞ぐように炎の壁で公園から出れなくなる。
一歩一歩後退る。
「おい待てよ、何処に行くんだ?俺達の公園をゴミに使わせてやってんだ…そのお菓子置いてけよ」
「この公園は皆のものだろ!!」
「魔法学園生徒皆の、な」
リカルドは悔しげに睨む。
2,3歳は年上だろう、彼らは俺達をかつあげしていた。
子供でもかつあげなんてあるんだな。
魔法に自信があるという事は下位クラスではなさそうだ。
……勝ち目はないだろう。
俺達はお菓子を手放すしかなかった。
公園を出ると公園から笑い声が聞こえた。
悔しくて悲しくて、涙が出てきた。
「……決めた」
リカルドが静かに呟き俺とルカはリカルドを見た。
俺を励まし、明るいリカルドの涙を初めて見た。
相当悔しかったのか拳を震わせて唇を噛んでいた。
ルカも見た事なかったのか驚いた顔をしていた。
リカルドは俺とルカの前を歩き振り返った。
その瞳に強い意思を感じた。
「俺、騎士団に入る!それで…英雄ラグナロクみたいに俺の名前を歴史に刻む!」
「で、でも騎士団は魔法学園卒業生を優先的に入団させていて…一般学校出身者は一人もいないって…」
「だから受けるんだよ!魔法学園とか一般学校とかそんな差別をなくすために、弱くても騎士団に入れるって一般学校の奴らに言いたいんだ!」
6歳なのにリカルドはとても大人びて見えた。
ルカの言葉は本当だ。
一般学校出身者だから受からないんじゃない、一般学校に通う生徒は基本自分に自信がなく弱い事を知っている。
だから騎士団入団試験を受ける者は一人もいない。
リカルドは初めて一般学校から試験を受ける気でいるんだ。
ルカは不安げに俺を見た。
俺は全て知っていた。
「リカルドくんなら大丈夫だよ!絶対騎士団に入れるよ!」
「……ありがとうアルト」
「アルトくん、そんな無責任な事言っちゃダメだよ」
ルカ、無責任な事を言ったつもりはないんだ。
だってリカルドの未来を知っているから、俺だけが知る秘密。
眼鏡を掛けていたから最初は気付かなかったが、思い出した。
リカルドは三作目に出てくる攻略キャラクターなんだ。
その時のリカルドは騎士団員になっていてトーマ達と戦う仲間だ。
だからゲームの通りならリカルドは騎士団に入れる、しかも史上初の一般学校からの騎士だ。
でもそうなると俺と敵対関係になるが、ゲームの二人は出会ってない設定だし…どうなるか分からない。
それでも、リカルドは大丈夫だと思う。
リカルドと俺は手を握り合い笑った。
トーマルートでしか登場しないアルトが攻略キャラのリカルドと友人になっている。
それだけできっとゲームの世界は捻れ始めているのかもしれない。
薄々感じながらも、悪役姉弟のバッドエンドを回避出来ればいいかなって思っていた。
そういえばゲームでルカはいなかったけどどうなったんだろう。
家の手伝いをしていたのかな。
リカルドと俺が距離を縮め始めてルカは複雑な顔をしていた。
「僕の、リカルドなのに…アルトくんばっかり」
その声は風になり消えた。
優しかったのはリカルドとルカだけだったみたいで俺を見ると皆遠くから眺めてヒソヒソ話をしていた。
何人かリカルド達に近付き「コイツ、悪い奴だから一緒にいない方がいいよ」と言っていたがリカルドとルカは無視して俺に話しかけてくれた。
二人が自分のせいで虐められたらどうしよう…と暗い気分のままポアロに着いた。
色鮮やかでいろんな形のお菓子がいっぱいあった。
生前でも医者に止められていてテレビでしか見た事がないお菓子が沢山並んでいる。
今はあまり甘いものを食べたい気分じゃないが、ガリュー先生は甘いのが好きだからなにか一つお土産に買っていこうかな。
「んぐっ!」
「ほらほら元気出せよアルト!最初は皆珍しがるかもしれないけど、すぐに慣れるよ!」
リカルドに棒状のなにかを口に入れられた。
甘い味が広がり口から出す。
ピンク色の棒だ、これってもしかして飴?
ペロッと舐めるとやはり甘い。
これが飴なのか、美味しい。
励ましてくれたリカルドにお礼を言い、リカルドとルカにオススメのお菓子を聞いたりして買い物をした。
ポアロの店主のお婆さんもとても優しそうな人で通おうかなと考えていた。
「おい、そこの一般人…退けよ」
買ったお菓子を見せ合いっこしていたら威張っている声が聞こえた。
俺達はポアロの近くの公園のベンチに座っていた。
邪魔にならない筈なのにその威張る人物は俺達のベンチを蹴飛ばした。
俺達は驚いて立ち上がる。
ソイツはいかにも目付きが悪い少年だった、後ろには取り巻きなのかひょろい少年と太った少年がいた。
リカルドは俺とルカの腕を引き小さな声で話した。
「関わらない方がいい、魔法学園の制服だ」
そう言われ、そういえば自分達とは違う制服だと今更気付いた。
魔法学園の生徒は一般学校の生徒を馬鹿にする子が多いと聞く。
陽向を歩く魔法学園の生徒と日陰をこっそり歩く一般学校の生徒って認識らしい。
関わって変なトラブルは避けた方がいいと俺も思い早く帰ろうと公園を出ようとする。
すると目の前を塞ぐように炎の壁で公園から出れなくなる。
一歩一歩後退る。
「おい待てよ、何処に行くんだ?俺達の公園をゴミに使わせてやってんだ…そのお菓子置いてけよ」
「この公園は皆のものだろ!!」
「魔法学園生徒皆の、な」
リカルドは悔しげに睨む。
2,3歳は年上だろう、彼らは俺達をかつあげしていた。
子供でもかつあげなんてあるんだな。
魔法に自信があるという事は下位クラスではなさそうだ。
……勝ち目はないだろう。
俺達はお菓子を手放すしかなかった。
公園を出ると公園から笑い声が聞こえた。
悔しくて悲しくて、涙が出てきた。
「……決めた」
リカルドが静かに呟き俺とルカはリカルドを見た。
俺を励まし、明るいリカルドの涙を初めて見た。
相当悔しかったのか拳を震わせて唇を噛んでいた。
ルカも見た事なかったのか驚いた顔をしていた。
リカルドは俺とルカの前を歩き振り返った。
その瞳に強い意思を感じた。
「俺、騎士団に入る!それで…英雄ラグナロクみたいに俺の名前を歴史に刻む!」
「で、でも騎士団は魔法学園卒業生を優先的に入団させていて…一般学校出身者は一人もいないって…」
「だから受けるんだよ!魔法学園とか一般学校とかそんな差別をなくすために、弱くても騎士団に入れるって一般学校の奴らに言いたいんだ!」
6歳なのにリカルドはとても大人びて見えた。
ルカの言葉は本当だ。
一般学校出身者だから受からないんじゃない、一般学校に通う生徒は基本自分に自信がなく弱い事を知っている。
だから騎士団入団試験を受ける者は一人もいない。
リカルドは初めて一般学校から試験を受ける気でいるんだ。
ルカは不安げに俺を見た。
俺は全て知っていた。
「リカルドくんなら大丈夫だよ!絶対騎士団に入れるよ!」
「……ありがとうアルト」
「アルトくん、そんな無責任な事言っちゃダメだよ」
ルカ、無責任な事を言ったつもりはないんだ。
だってリカルドの未来を知っているから、俺だけが知る秘密。
眼鏡を掛けていたから最初は気付かなかったが、思い出した。
リカルドは三作目に出てくる攻略キャラクターなんだ。
その時のリカルドは騎士団員になっていてトーマ達と戦う仲間だ。
だからゲームの通りならリカルドは騎士団に入れる、しかも史上初の一般学校からの騎士だ。
でもそうなると俺と敵対関係になるが、ゲームの二人は出会ってない設定だし…どうなるか分からない。
それでも、リカルドは大丈夫だと思う。
リカルドと俺は手を握り合い笑った。
トーマルートでしか登場しないアルトが攻略キャラのリカルドと友人になっている。
それだけできっとゲームの世界は捻れ始めているのかもしれない。
薄々感じながらも、悪役姉弟のバッドエンドを回避出来ればいいかなって思っていた。
そういえばゲームでルカはいなかったけどどうなったんだろう。
家の手伝いをしていたのかな。
リカルドと俺が距離を縮め始めてルカは複雑な顔をしていた。
「僕の、リカルドなのに…アルトくんばっかり」
その声は風になり消えた。
59
お気に入りに追加
3,060
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで
深凪雪花
BL
候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。
即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。
しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……?
※★は性描写ありです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる